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 入学してから何年経ったのだろう。

あれからいろんな知識を手に入れた。

いろんな所にも行った。

しかし、そんな僕でも出来ないことがただ一つだけある。

それは空を飛ぶことである。

僕は前世からの高所恐怖症だ。

高いところへ行くと足がすくむのだ。


 別に前世で何があったわけではない。

ていうか、前世ではほとんど外で遊んだ記憶が無い。

勉強に明け暮れていたからだ。

だから今世での経験は本で読んでいた世界以上に楽しい経験をしていると思う。

ただ、高所恐怖症なだけなのだ。


 そりゃぁ、入学当初死ぬ気で飛ぶ訓練をした。

おかげで人並み?に空を飛ぶことが出来る。

しかし、僕は最低限必要なときしか飛ばない。

同級生のリャカヤからは僕のそんな姿を見て常々「精霊らしくない」と言っている。

そんなリャカヤは必要以上に僕に空を飛んで見せたりする。

まるで挑発するかのように。

ディクシア先生もそんな僕を心配そうに見ていた。


 そんなある日、ディクシア先生がいつものように唐突に野外実習をすると言い始めた。

僕が先生に

「いったいどこへ行くのですか?」

と尋ねるといつものように先生が

「それは秘密よ。」

と答える。

いつものやりとりなのだがいつになく先生の顔がいつになく真剣に見えた。


 そして、いつものようにゲートを抜けると僕は思わず叫んでしまった。

「落ちるっ!!落ちるっ!!」

先生は

「思いっきし羽をはばたかせなさい!!羽を動かすの!!」

とかなり大きな声で僕に向かって叫んだ。

僕は必死になって羽を動かした。

そしてやっと宙に止まることが出来た。


 先生は

「やっと正気を取り戻したようね。それと普段から空を飛ぶ練習ぐらいしなさい。こういういざというときに役に立つのだから。」

自分でれてきておいて何という言いざまだろうか。

そして先生は続けて

「ここはあなたたちのいた学校から上空40キロよ。」

僕のいたところでは、上空40キロというと自分のいたところを見下ろせるレベル。

しかし、今はそういう風には見えない。

この世界はかなり空気が濃いようだ。

そして先生は真下を指さしながら

「これから雲の中に入ります。先生の後をいて行くように。決してはぐれないように」

と言いながら降下していきました。

僕らもはぐれないように必死で先生にいて行きます。

リャカヤは慣れたもんでうまく飛んでいます。

僕は先生にいて行くのに必死です。

リャカヤは

「なにチンタラ飛んでいるの!!全くしょうが無いんだから。」

とツンデレながら僕をいつものようにサポートしてくれます。

まぁ、彼女のツンデレ具合には最初は戸惑ったけど今はもう慣れました。


 そして雲の中に到着。

その世界に僕は驚いた。

そこは白の世界。

ものすごい分かりやすく言うとそこは濃い霧の中。

ほんの数センチ先も見えない世界。

まるでホワイトアウトしているような感じだ。

と言っても僕ら精霊は目が特殊だからぼんやりとながら周りは見えるんだけど。

そして真下には地上がまるでうっすらとした水墨画のように見える。

空を飛ぶと言うことはこういう景色も見れるのだと僕は感心をしていた。


 しばらくすると先生は

「空を飛ぶと言うことに本当に慣れておきなさい。この学校を卒業後、どうしても必要なスキルだから。それ人間であった前世の感覚も忘れないこと。この二つは生きていく上でとても重要だから。肝に銘じておくこと。後はこの雲の中でめいいっぱい遊びなさい。能力の訓練でもいいわ。でも羽ばたく余力は残しなさいよ。帰る時間が来たら教えるから。」


 僕ら2人はめいいっぱい能力の訓練をした。

それはもう体がが動かなくなるぐらいまで。

やっと飛べるような状態で僕らは学校に帰ってきた。


 そして家に帰ったらバタンキュウでベッドに突っ伏した。

そしてしばらく動けない状態でベッドに横になっていた。

どれぐらい動けなかったかというとそれはもう両親が心配するほどだ。

こんなにはしゃいだのはいつぶりぐらいだろうか。

野外実習になるといつもこんな感じだ。

前世では勉強に一生懸命ではしゃいだ記憶が無い。

その分、今世を満喫しようと必死なのだ。

今、ここにいることが非常に楽しいと僕は思った。





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