転生前
唐突だが、まずは僕の自慢話を聞いてほしいと思う。
まずは最初に自慢話を聞いてもらう前に僕の自己紹介をしよう。
僕の名前は科部 研志。
これでも僕は周りから神童と呼ばれたエリート。
この国で初めての飛び級に受かり10歳でこの国の最高峰の大学に受かった天才だ。
この大学で首席をとり世界の天才と肩を並べエリート研究者として歴史に名前を刻む、そういう青写真を描いていた。
ところが、世の中は自分の思うようには進まない。
一応言っとくけど学業のことじゃない。
その証拠に大学の授業は思ったよりもつまらなく、僕にとってはわかりきったことを再確認する場でしかなかった。
異変は大学に入学してから一ヶ月経った5月の頃突然起きた。
始めは少しの息苦しさから始まった。
そして、疲労感がたまりはじめた。
当初は環境が劇的に変わったせいだと思っていた。
何せ、自分が言うのも何だが本来は小学校に行っている年齢だ。
それに僕の周りは8歳以上の年の離れた人たち。
大学入学と同時にある大企業の研究室にも出入りしていた。
マスコミは僕のことを1000年に1人の天才ともてはやしていた。
そのプレッシャーあまりにも半端なかった。
だから、疲れが出るのは当然のことだと思っていた。
大学に入って初めての健康診断。
僕は10歳という年齢もあってか、ほかの人たちよりも入念に検査を受けていた。
心電図の検査の時、周りが急にざわついた。
そして、検査担当の医師が頭を抱え込んでどこかへ行ってしまった。
次の日、僕は緊急入院ということになった。
医師の話によると詳しく検査をしなければ分からないが、最悪移植手術が必要だと言うことだった。
マスコミは僕の病状を大きく報道し、世間が騒ぎ出した。
僕はそんなことなど気にせず久しぶりの休暇を楽しんでいた。
何せ自覚症状が全くなかったからだ。
正直、深刻な事態だとは微塵も思っていなかった。
もちろん移植手術のことも知ってはいたが、それは最悪の事態になったときに限ってのことだろうと軽く思っていたのだ。
まあ、それにつまらない授業を聞くこともなく自分の研究に没頭できること楽しみにしていた。
時間というものは残酷だ。
半年が過ぎた頃には、寝たきりの状態になっていた。
息苦しいので常に酸素マスクは離せない。
当然自分の研究をする気力もない。
結局、病院で自分の好きなことが出来たのは三ヶ月ほどだった。
最近では栄養補給も点滴で済ましている。
僕のドナーもなかなか見つからないようだ。
そして、緊急入院してから一年が過ぎた頃、僕は死んだ。
とうとう僕の適合するドナーが見つからなかったのだ。
僕は、気がつくと病室のベッドに横たわる自分を真上から眺めていた。
「あ〜、これが死んだということなんだ。この一年間よく頑張ったな。思えば11年間、濃い人生だったな。でも急ぎすぎた人生だったな。来世ではもっと楽な人生を歩みたいな〜。」
と思いながらしばらく自分の姿を真上から眺めていた。
そこから先はしばらく記憶にないが、気がつくと真っ暗な空間の中にいた。
そこに一人の美女が僕の目の前に現れた。
そしてその美女は
「私はこの世界を司る神の一人です。あなたは前の世界では画期的な発見をし歴史に名を刻む人だったのですが、イレギュラーなことが起き短い人生を終えてしまいました。しかし、あなたの残した足跡で必ずや前の世界に大きな貢献を果たすでしょう。特に病室にいたときの研究にはあなたは気がついていないでしょうが大発見の理論がいくつもあります。」
と言った。
僕はその話を聞いて少し気恥ずかしくなった。
そしてその美女は続けてこう言った。
「あなたは別の世界でも様々なことに貢献するべき人物です。前の世界ではイレギュラーなことが起きてしまいましたが、あなたは転生すべき人なのです。そこで、今度転生するときにあなたの希望を聞きたいと思います。今度はもっと全うした人生を歩むために。」
美女の申し出にはびっくりしたが、今度はもっと長く生きて人生を楽しみたいと思った。
そこで僕は冗談ぽくこう言った。
「ではお願いしたいことを言います。来世ではもっと楽な人生を楽しみたいと思います。寿命も前世よりも長く。前世とは全く違う世界に行くとすれば特殊能力も欲しいな。とにかくチートで楽な人生を楽しみたいです。」
そう言うとその美女は少し考え込んで
「分かりました。あなたの言うとおりの転生を約束します。但し、楽な人生かどうかは保証できません。私からのお願いは来世でも何らかの爪痕は残してきてくださいね。もちろん良い意味でのね。それでは来世もよろしくお願いします。」
と言って、すっと消えていった。
そして、僕は異世界へと転生した。