砂漠越え
「なぁ~、あとどのくらい歩けばいいんだ?」
「お前なぁ。まだ街からそんなに離れてないぞ?」
「ホントだ。まだ遠くに街が見えらぁ」
「砂漠は環境が厳しいぞ?昼間は暑いし、夜は凍えるほど寒むい」
「マジかよ。それで?砂漠越えにどのくらいかかるんだ?」
「少なくて3日、多くても5日かな」
「死ぬぞ」
「死なねぇから大丈夫だ。他の動物も住んでるからな」
「そいつらは、何でこんなところに住んでるんだ。正気を疑うよ」
「さあな。まぁ、そういう生き物ってことだ」
「ふぅん。そうだ、それで――」
アタシがロウに声をかけた瞬間。ロウの上半身が吹き飛ばされた。
「なんだ!うわぁっ!気持ち悪っ!」
攻撃を受けた方向を見ると、巨大なサソリが居た。
ちらりとロウの確認をすると、血や体液を吹き出しながら走る下半身が、上半身目掛けて走っていくところだった。
「もぅやだぁ、アイツ」
素直に気持ち悪かった。
そんなアタシの事は気にもせずに。サソリは、追撃を加えてきた。
ドスンドスンと、音をさせながら砂を叩くハサミと尻尾を避けながら、アタシは毒針を投げた。
しかし、サソリの甲殻は針を全て弾いてしまった。
「畜生!油断した!」
いつの間にか回復を終えたロウが、武器を手にやって来た。
「倒せるか?」
「大丈夫だ。俺が動きを止めるから、お前は毒針を関節に刺せ」
「わかった」
「行くぞ!」
掛け声と同時にロウは、サソリの足を何本か切り落とした。
「おりゃ!」
サソリの怯んだタイミングに合わせて、アタシは針を刺していく。
「留めだ!」
動きの止まったサソリに。ロウは、脳天目掛けて武器を降り下ろした。
「あんなの居るんだな、砂漠って」
「最近は、環境の変化で巨大化してる生物が増えてるらしいな」
「そうなんだ」
「さてと。俺はこのサソリちゃんを夕飯にしようと思うのだが」
「え?これ食えるの?」
「うん。それで、解体に時間がかかるから、ここらで泊まれるようにテントを張ってほしいんだ」
「別にいいぜ?」
「じゃあ、頼むな」
「ん」
アタシは、道具を一式持ってなるべく平らな場所で、作業を始めた。
初めてやったにしては、良くできた方だと思うが。
(この後、テントが倒れてやり直しになったのは、内緒❤ )
それから、夕飯を食べてから。その日は、寝ることになった。砂漠都市まであと2日。
「ロウ、あれなんだ?」
アタシは遠くに見えた水色の物体を指さした。
「ああ、あれは水袋って生き物だな。中身は全部水で。石を投げつけて気絶させたあと、ストローを刺して飲むんだ」
「あれ生き物なのか。昨日のサソリの方が信じられるな」
「まぁ、試してみるか?水袋狩り」
「やりたい!やりたい!とりあえず、見本を見してくれよ」
「わかった。行くぞ?おらぁ!」
ロウの投げた石は、見事に命中した。
「おお!白くなって動かなくなった!」
「あれが気絶した証拠だ。あと何匹かいるけど、多分今ので逃げ始めるから、確実に当てろよ?」
「わかってるって。そりゃっ。」
見事に水袋に石は命中し。水色の体を白く変えて、動かなくなった。
「やった!」
「上手いじゃねぇか!さぁ、取りにいこう」
手に取ると、ての隙間から落ちていこうとする。
「すっげぇ。とぅるんとぅるんするぞ!」
「おい!こっちに投げてみろよ!」
「やるか?おりゃ!」
「おっしゃっ!返すぞ!それっ!」
とまぁ、こんなふうに遊んでいたら事件は起こりました。
アタシ達は、見事に水袋が取れて舞い上がり。自分たちの服装と、水袋の強度を考えず浮かれていたのです。今となっては、馬鹿な事をしたと反省しています。
投げて遊んでいた水袋は、アタシ達のそれぞれの服の金具に当たり、弾けて足下の砂に吸い込まれて消えて行きました。
「・・・・」
「・・・・」
「なんか・・ゴメンな・・」
「うん・・平気・・・」
「歩くか?・・」
「歩こう・・」
その後は、ひたすらに夜になるまで歩き続けました。そして、そのまま昨日のサソリの肉を食べて寝ました。