死せる獅子より生ける犬《ベター・ア・リヴ・ドッグ・ザン・ア・デッド・ライオン》
戦いを楽しませるつもりは毛頭なかった。
だから、ジョリオンは左手にスマート・ガンを保持しながらも背負ったスマート・ショットガンの銃把を握る。
長い銃身のショットガンを掲げ、上下に並んだ四角い銃口をサーティンへと向けた。脳内指示プロトコルで散弾拡散モードを選択すると、すぐさま引き金を引き絞った。
四角い銃口から青白い光の筋が放射状に拡散し、サーティンが今まさに飛び込もうとする空間にまるで流星群のように殺到した。大気圏内での減衰が少ないフッ化重水素レーザーの散弾が、サーティンの複合装甲をとらえて八つ裂きにするはずだった。
だが、不可解な音を発しながらサーティンの巨体は宙を駆ける。
その大柄の身体は重力に反した動きでジョリオンの頭上を越えていく。想定外の挙動にジョリオンは度胆を抜かれながらも、相手の動きに合わせて銃を動かし引き金を引き続けた。波長三・八マイクロメートルの中赤外線域化学レーザーの猛攻を、しかしサーティンは容易くかわしていく。
上下に稼働する口がジョリオンを嘲笑っているように見えた。
<どうした、ジョリオン? よもやその武器さえあればこのおれを倒せるとでも、本気で思ったわけではあるまい?>
「……くっ」
スマート・ショットガンの攻撃範囲はスマート・ガンの比ではない。ショットガンならではの瞬時に広範囲へレーザーをばら撒き、さらに狙いも他の銃器と比べればシビアではない。しかも、遅滞のない連続攻撃で、回避はほとんどできないはずだ。
それなのに、サーティンは二度も三度もこちらの攻撃を避けてみせる。いくら、予備動作なしの脚力だけで縦横無尽に駆けるサーティンとはいえ限度があるはずなのに、ジョリオンは唇を噛んだ。
<そんなものを持ち出したくらいで、このおれを壊せるのならば……なんの苦労もなかろう!?>
何かか爆ぜるような、控えめな炸裂音とともにサーティンの六つの腕のうちのひとつが打ち出された。それは黒い高分子ワイヤーで身体に繋がれ、腕の発射口からは赤い光が発せられている。その腕がジョリオンが構えていたスマート・ショットガンをもぎ取ると、後方へ放り投げてしまう。
ジョリオンはすぐに気持ちを切り替え、左手のスマート・ガンと、腰のホルスターからさらにスマート・ガンを取り出す。
そして、二挺拳銃の要領で構えると、サーティン目がけて乱射する。黒と黄金の身体目がけて、無数の青白い光が飛来した。だが、サーティンは不可思議な動作でジョリオンの猛攻を的確に回避していく。
<ふん。どうやら、当てが外れたようだな>
「くそっ、なぜだ!? なぜこちらの攻撃が当たらないっ!?」
宙を浮くサーティンの真下へ滑り込み、頭上目がけてスマート・ガンの銃口を向けたジョリオンは微かに目を見開く。
サーティンの背部や脚部の複合装甲の一部がスライドし、そこから現れた噴射口から光が生じていた。
「ロケット推力によるスラスター……」
<そうとも、切り札は最後までとっておくものだ>
サーティンの六つの腕が射出され、ジョリオンへ向けて凄まじい速さで迫る。
一発、二発と回避するも、残りはかわし切れずに彼の身体を捉えると、その拳が炸裂する。
ジョリオンは歯を食いしばった。だが、それでも苦悶の声は零れてしまう。
伸び切った高分子ワイヤーが瞬時に巻き取られ、サーティンの身体に腕部が舞い戻る。
そして、その巨体が地に降り立つ。
ジョリオンは膝を降りそうになるも、すぐに体勢を整える。二挺拳銃の構えをとると、青白い光の弾丸が目にも止まらぬ速さで射出され、光の弾幕が形成された。
だが、サーティンは脚力だけで後ろへ飛び退る。
その際に打ち出された拳がジョリオンのスマート・ガンを腕力に物を言わせて叩き落とし、あるいは乱暴に奪い取ってしまう。ジョリオンは手に走る激痛をどうにか堪える。
<だが、決定的な要因はスラスターだけではないぞ。おれは通常の戦闘用ドロイドの三倍のニューロ・シナプス・チップと疑似神経を搭載した、ロストナンバーのなかでは最新鋭の機体だ。そんなおれが、人間ごときに後れを取るとでも思ったか?>
ジョリオンは背中に収めた直刀の高周波ブレード――IRIS本社ビルでサーティンが落としたカタナを抜き取ると、構えた。
だが、サーティンは指を差して笑う。
<カタナを構えてなんになる? それはおれが使ってはじめて機能する武器だ。なんの心得もないおまえに扱える代物ではない>
サーティンの指摘にジョリオンは顔を歪めた。確かに、ナイフの扱いには自信があるが、カタナなんて使ったことはない。それに、IRIS本社ビルでの戦闘も、エレベーターでの不意打ちとノリーンが作った隙を突いた攻撃以外では決定打を与えていない。
サーティンはクラリッサ譲りの独特な流儀に従っているが、その実純粋な戦闘能力ではジョリオンを圧倒していた。一瞬だけ、倉庫を取り囲むネクストシックスで構成された戦闘用ドロイドを突入させようか、思案する。
だが、教授を人質に取られた今、彼女を安全に保護することが最優先だ。我が身可愛さで本質を疎かにするジョリオンではない。教授は自分の命に代えても救ってみせる。ジョリオンは腹をくくった。
「そうだとしても、手に武器ある限り……おれは戦う」
<……何?>
ジョリオンの言葉に、サーティンは押し黙る。
<だが、ジョリオン。おれにはきさまの未来が見えている。走査された情報を解析するアルゴリズムが導く未来予測に、きさまの勝利はない。これはおれの傲慢でも慢心でもない。プログラムが算出した、そう遠くない未来に現実のものとなるご神託だ>
ジョリオンは唇を噛んだ。
“プリクライム”が採用する犯罪予測システムほど未来予測の精度はないにしても、クラリッサが設計した独自の戦術支援プログラムならば、ジョリオンの攻撃手段を予想し、二歩三歩先を行く動きで翻弄していたとしても、不思議ではない。
地べたに寝転がる教授をサーティンは指差す。
<このままではおまえは死ぬ。この女はおれのものだ。そんなことは高度な未来予測でなくとも、幾多の戦場を生き抜いてきた戦士のきさまならば……自明のことだろう>
サーティンは固く拳を握りしめると、力強い動作でジョリオンに向かって指を差した。
<なぜだっ!? なぜ……きさまは待ち受ける運命が敗北と死であると知りながらも、このおれに立ち向かってくるのだっ!? おまえでは勝てない。おまえは死ぬ。おまえは……現実を変えられないと知っていて、なおっ!!>
ジョリオンはサーティンの問いには答えない。
かわりに直立不動のサーティンに素早く駆け寄ると、カタナを振りかぶった。
サーティンは舞踏を舞うような動きで巧みに回避すると、その顔に鉄拳をおみまいする。ジョリオンの頬に拳がめり込み、その鍛え上げられた身体が易々と宙を舞う。想像を超える激しい一撃に、ジョリオンの身体は普段ならば無意識でもできる受け身も取れず、床を転がる。
「……何、当たり前のことを言ってやがる」
<なんだと?>
「ここは戦場だ。ここでは時に負けるし、命を落とす。現実だってそう簡単には変えられない」
ジョリオンは口のなかに広がる血を吐き出すと、口元を拭う。
そして、改めて高周波ブレードを構えた。
「だがな、勘違いするなよ、ポンコツ。おれが戦うのは、勝つためでも、生きるためでもない。自分の信念と意志にかけて、守ると決めた存在のために戦ってる。たとえ、ここで負け、死んだとしてもな」
<愚かな男め、死んで花実が咲くものか。死んだ犬は吠えない《デッドドッグス・バーク・ノット》――死人に口なし。死せる獅子より生ける犬《ベター・ア・リヴ・ドッグ・ザン・ア・デッド・ライオン》だ>
「だが、死なない人間なんていない。大事なのは、単純な勝ち負けや生き死になんかじゃない。たとえこの身が砕けようとも、守りたいもののために傷付き傷つけながらも……戦うことだ。それは単なる暴力の発露なんかじゃない」
<ジョリオン! 戦いを、そしてこのおれを侮辱するなっ!!>
サーティンの拳の乱打がジョリオンを襲う。
固く握られた拳が何度も何度も執拗にジョリオンの顔を打ちつける。しかし、ジョリオンは呻き声ひとつ上げずに、その身に降りかかる暴力の応酬を必死にやり過ごそうとしていた。激しい殴打の連続を受けながらも、それでも諦めないジョリオンの姿を見せつけられて、サーティンは激昂する。
<きさまもっ、きさまもおれと同類だろうがっ!? 他の生き方があるにも関わらず、それでも戦うことを選択した人間が何を言う。そんなものはまやかしだ。幻影だ。この戦いが、この痛みの感覚こそが現実であり、真実なのだっ!!>
ジョリオンの腹にサーティンの手がめり込む。
タクティカル・スキンが締め上がり、微弱な電気信号で筋肉を刺激する。即席の「肉の鎧」を作ることでどうにか脾臓破裂という最悪の結果だけは辛うじて防ぐ。それでも、ジョリオンの肉体に蓄積した激痛は和らげることができない。
「……おまえの戦いは、尊くない」
ジョリオンは小さい声ながらも、はっきりとした口調で言う。
<どこまでこのおれを侮辱したら気が済む。おまえも女も、今生きているのは神の恩寵でも人間が偉いわけでもない、このおれの気紛れだというのにっ!? それを忘れて何をっ、何を言うっ!!>
ジョリオンの頭を乱暴に踏みつけると、サーティンは拳を高らかに頭上へ掲げてみせた。
<そんなに言うのであれば、おれがきさまに知らしめてやる! おまえから腕と脚を削ぎ落として、二度と戦うことのできない身体にしてやる。……殺すものか。きさまに名誉の戦死など与えてなるものか。戦いを取り上げられた戦士ほど無意味のものはないということを、その身で味わうがいい!>
サーティンが教授の傍らに降り立ち、地面に突き刺した高周波ブレードを抜き取ったその時、周辺のセンサー群が異常を検知した。それだけではない、サーティンの身体に照射される、ミリ波レーダー。
サーティンが反射的に跳躍すると、先ほどまでいた場所に叩き込まれたのは、無数のミサイルだ。それはミリ波レーダーによるアクティブレーダー誘導で、サーティンの動きに合わせて執拗に追従しようとする。
<……四〇ミリ精密誘導ミサイル!? だが、一体誰が?>
まったく噴煙の上がらないミサイルを、サーティンはロケット推力の飛翔でかわし、避け切れない弾頭を高周波ブレードで片っ端から斬りつけ、溶断していく。
動きの遅い標的の破壊を目的とした、擲弾発射器からも発射可能な精密誘導ミサイル自体は、サーティンの脅威ではない。
だが、倉庫の外で待機しているジョリオン率いるネクストシックスや無人輸送ヘリ、あるいはツクシに動きはない。新手だ。だが、サーティンには見当がつかない。しかし、走査された情報があるひとつの像を作り上げていく。思わずサーティンは低く唸る。
<……この反応、まさか>
「おれではおまえを倒す未来は存在しないらしいが、あいつだったらどうだ?」
ジョリオンが頭上を見上げる。
そこには穿たれた天井から舞い降りてくる、背中から翼を生やした一機の黒いドロイドの姿があった。
<遅れたことを謝ります、ジョリオン。ツクシから制止されていましたが、相棒の危機に黙って見過ごすことはできませんでした>
「……いやいや、だったらもっと前に来てくれよ」
そう言いながらジョリオンの傍らに降り立ったのは、ハルートだ。
推力偏向ノズルを備えた二基の大型ロケットスラスター、閉所では折り畳める四枚の高機動ウィング。背中に背負う各種兵装を格納した拡張ユニット。そして、全身甲冑の身体をさらに覆う、拡張装甲。
そのせいもあって、今のハルートはサーティンと同じ背丈になっている。また、赤と黒を基調としたカラーリングも、赤い箇所を覆う炭素繊維が織り込まれた特殊プロテクターで黒一色となっている。
<ウォーカー・シリーズ・ネクストイレヴン……なのか?>
<その通り>
<これはおれとジョリオンの、ふたりの戦いだ。邪魔をするな!>
<それはできない相談です>
<なんだと!?>
<なぜならば、このBスペックはあなたを倒すために作ったのですから>
ハルートは言うが早いか、背中の兵装のなかからガトリング式キャノン砲を引っ張り出してくると、その銃口をサーティンへと向けた。
<もしも、あなたに未来が見通せると言うのであれば、今すぐ投降してください>
<……きさま、本気で言っているのかっ!?>
<当然です。わたしは、自分の弟にあたる存在をこの手で破壊したいとは思っていません>
ハルートはジョリオンが手にしていたカタナを拾い上げる。
<ですが、これ以上の攻撃を看過することはできません>
その時、サーティンはカタナの切っ先を教授に向けようとする。
だが、それを見逃すハルートではない。
背部にマウントされていたガトリング式キャノン砲を放つ。全長約一・八メートル、六本の並べられた砲身が反時計周りに回転して、夥しい量の砲弾が放出されていく。
あまりに発射速度が速すぎて火を吹いているようにしか見えない。連続発射で銃身が熱せられ、赤く発光していた。
航空機や艦艇にも採用されている機関砲を向けられながらも、サーティンに退く気配は見られない。
<どうやら、戦うしかないようですね>
<無論だ。戦場で敵を倒し、本物の自由を得てみせる! それが、おれの信奉する崇高な戦いだ!>
ジョリオンは“Bスペック”と呼ぶ追加拡張プラットフォームをまじまじと見つめる。
脚部から現れたホルスターから二挺のスマート・ガンを引き抜く。その四角い銃口から青白い閃光が迸り、薄闇を切り裂いてサーティンへ飛ぶ。その間も、ガトリング式キャノン砲の猛攻は止まらない。そのあまりの威力に、倉庫の壁面にはいくつもの弾痕が穿たれ、瓦解していく。
<ジョリオン、今のうちに仲間の救出を>
「言われなくても!? だが……」
ジョリオンは立ち上がろうとして苦痛に呻き、その場に膝をついてしまう。タクティカル・スキンが辛うじて致命傷になるのを防いでくれたが、それでも痛めつけられたジョリオンの身体に、余力というものは存在していない。口の端から血を流しながらも、這う。
だが、これでは教授の救出は夢のまた夢だ。
その間にも、サーティンが背を向けた倉庫の壁面は崩れ落ちていく。ハルートは壁の異常を感じ取った時からキャノン砲の攻撃を止めていたが、崩落は止まらない。これでは、壊れた構造物で教授が傷付きかねない。
<ふんっ、愚かな連中だ! そういう甘っちょろい思考回路が、勝ち戦を負け戦にするのを忘れたか!?>
二〇ミリ口径の砲弾の嵐がないのをいいことに、サーティンはせせら笑う。
そして、推進力には劣るものの小回りが利くのを頼りに、ハルートとの間合いを詰め、高周波ブレードを振るう。直前までスマート・ガンを乱射するもサーティンの身体を捉えられないことを目の当たりにすると、ホルスターに銃を戻す。
かわりに、その手に握り締めたのはカタナ。
刃と刃が交わり、閃光が迸った。
<きさまにこのおれが倒せるものか! おれはきさまよりもずっと優れているのだからな!>
サーティンの肩から生えた残りの四本の腕が、ハルートの追加拡張プラットフォームを破壊しようと発射態勢に入る。
<いいえ。戦いはカタログ・スペックのみでは決まりません>
だが、ハルートが背負った追加拡張プラットフォームがせり上がると、そこから現れたのは四つの腕。しかも、その先にはペンチのような装置が取り付けられている。サーティンは直前になって、攻撃コマンドに割り込みをかけて中断し、距離を取ろうとする。
<ばっ、馬鹿なっ!? 隠し腕、だと……>
<六本腕はあなたの専売特許ではありません>
ハルートの追加拡張プラットフォームから姿を現した四つのエクストラ・アーム、それがロケット推力で打ち出される。当然、狙いはサーティン自慢の腕。アームの先のペンチ部がサーティンの腕を捕えて離さない。
サーティンが言葉にならない叫び声を上げるも、構わずペンチ部分が腕部を押し潰し、あるいは力尽くでねじ切っていく。
<……嘘だっ!? みっ、認めぬ。認めぬぞ……。こんなことが、こんなことがぁ……あってたまるかっ!!>
サーティンは首を左右に振ってたじろぎながらも、肩にマウントされた四つの拡張腕の連結部分を切り離し、デッドウェイトとなった箇所を捨て機体を軽量化してみせる。
<まだだ。まだ終わってない。まだ終わっちゃいないぞ、ハルート。おれにはCHFWHG――集束高周波加熱砲《コンバージェンス・ハイフリクェンシーウェイブヒーティング・ガン》がある。それも、三連発だ>
<……サーティン、あなたにはまだわからないのですか?>
ハルートの落ち着いた声音に、サーティンの神経は逆に昂る。
<今、こうしている間にも、あなたの未来は閉ざされていることを。わたしが、CHFWHGの対策を怠ってこの場にやって来たとでも思っているのですか? あなたのその頑なな態度が、自らの生存を脅かしていることに、いい加減思い至るべきです>
その声音に、サーティンは激昂する。
顎が外れるぎりぎりまで口を開き、猛獣の慟哭にも似た奇怪な音を発してみせた。
<わたしの目的は、ノリーンのお役に立つことです。あなたを不必要に傷つけることでも、その身体を壊すためでもありません。それがわからぬあなたではないはずです>
<ふざけるなよ! おれに屈辱を与えておきながら……ただで済むと思うな!>
サーティンは言いながら、チャージを行う。集束高周波加熱砲の武器管制システムがにわかに動き出し、高周波の奔流を解き放つ準備に取り掛かる。ハルートはキャノン砲を展開しようとして、やめた。チャージという好機に攻撃を加えるかわりに、言葉を発する。
<あなたを戦いに駆り立てるその衝動が、自分の未来を奪っているんです、サーティン>
<なんとでもほざくがいい! 勝つのはきさまではない……このおれだ!!>
<正気ですか? ここで全てを諦めるつもりですか?>
<馬鹿め。おれがこんなところで命を捨てるわけがない。おれは勝つ。そして、生きる。対抗手段がなんであれ、三連射には耐えられまい! そうとも、どんな手品であろうともこの猛攻を連続して防ぐことなど……できはしない!!>
ハルートが何かを言ったような気がしたが、その音声をかき消すように、サーティンの口から膨大な高周波の奔流が迸った。
外部熱源による加熱と異なり、熱伝導や対流の影響がほとんど無視でき、特定の物質のみを選択的かつ急速・均一に加熱できる。水分を多く含む物質には特に有効で、高出力で対象に照射すれば、ものの三秒で肉体の水分が急激に加熱され発生した水蒸気が外皮を突き破る。
ゴムなど熱伝導性の悪い絶縁体であっても、加熱が可能だ。金属だろうと、高周波を照射されればたちまち出火してしまう。まさに、対象物を選ばない万能兵器だ。
サーティンは高笑いをしながら、その発射口をハルートへと向ける。
<……ジョリオンともども、融解してしまえ!!>




