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狂人理論  作者: 金椎響
第二章 不都合な事実
17/30

かけがえのない仲間

 ハーキュリーズの大きな背中に向けて、ノリーンは言葉をぶつける。


「ハーク、聞いて。もしも、クラリッサが四・五年前に亡くなったとしても、彼女の脅威はこれっぽっちも弱まっちゃいないわ。彼女が、殺害の際に解析された脳内神経マトリクスをもとにして蘇ったならば、話は厄介よ」


 だが、彼は振り返らない。

 まるで、ノリーンの言葉が聞こえていないかのように、ハーキュリーズは悠然と歩いていく。その動きに迷いや躊躇いというものは一切見出せない。ノリーンは歯痒い気持ちで彼の大きな背中を見つめていた。


「言いたいことはなんとなくわかる」


 不意に、ハーキュリーズが喋り出す。


「つまり、“プリクライム”を欺くために、クラリッサ・カロッサの脳内神経マトリクスと、他のロボットのニューロ・シナプス・チップを適宜切り替えるような、なんらかの対抗策を講じているってわけだろ?」


 一歩、二歩、三歩進んだところでハーキュリーズは唐突に振り返り、そしてノリーンの表情を確認してにやっと笑う。


「だが、そんな小細工は諜報軍(インテリジェンス)やアルテア市警察《APD》には通用しない。たとえ、小手先のごまかしが通用したとしても、それは悪足掻きに過ぎん」


 そう言うと、今度こそハーキュリーズはノリーンを置いて応接室を出て行ってしまった。


 ハーキュリーズは、チェルシーと自動人形(オートマトン)の姿を探した。

 耳を澄まして、チェルシーの声のする方へ歩いていく。ふたりは、書斎にいた。高い天井と、そこへ向って伸びる本棚や戸棚、外へ接する一面はガラス張りになっていて、庭先の風景と太陽の明かりが差し込んでくる。

 そのなかで、ふたりは古風な写真立てを眺めていた。


「なんだ、こんなところにいたのか」

「すみません。ここにノリーンの昔の写真があるって聞いたから」


 チェルシーは目を細めながら、写真立てに収められた写真を眩しそうに見つめる。

 そこにあるのは、随分と幼いノリーンの屈託のない笑顔と若々しいハーキュリーズの凛々しい姿だ。


「顔の作りは確かにノリーンだけど、浮かべてる表情が全然違いすぎて……なんだか変な感じ」

「そうか? 幼い時から頑固者で、これと決めたら言うことを聞かなかったぞ? きっと、親父に似たんだな。エドワードも人の話を聞かん、困った男だったから」

「へぇ、やっぱり親子なんですね」

「……そうだな」


 ハーキュリーズはその口元に笑みを浮かべながら、写真立てのうちのひとつを手にする。

 その写真のなかで笑うエヴァレット親子と自身の姿を見て、ハーキュリーズは感慨に耽る。


「それで、ノリーンとの話はまとまりました?」


 チェルシーは問うてから、物思いに耽っているハーキュリーズの姿を見て苦笑した。


「あ? ああ、まあな」


 チェルシーの笑みに、ハーキュリーズの意識が引き戻される。


「きみもノリーンに巻き込まれて大変だっただろう?」

「えっ? いえ、そんな風には思ってませんけどね」

「そうなのか? あの子といると……色々大変だっただろう?」

「でも、楽しいですよ。全然、退屈しませんし。ノリーンと一緒にいなかったら、ハークにも自動人形(オートマトン)さんにも会えませんでしたしね」


 目を輝かせてながら言うチェルシーに、ハーキュリーズは一瞬だけどう反応していいのか、迷う。


「そんなに好きなのか? ロボットのことが」

「好きですし、なんせそれが仕事ですからね」


 そこで、チェルシーはハーキュリーズに近付く。


「そうそう、あの自動人形(オートマトン)さん、一体何者なんですか? 市販されているモデルじゃないですよね?」

「ああ、中身はIRIS社の汎用型だが、外側は色々と弄ってある」

「医療用人工表皮に、人工培養された生体器官まで使ってますよね? 一体、いくらお金を費やしたのか、想像するだに恐ろしいです……」

「だが、おかげで寂しさを感じずに済む」


 そう言うと、ハーキュリーズは自動人形(オートマトン)の長い金髪の髪に手を触れる。さらさらと揺れる髪の動きとその質感は、人間のそれと見分けがつかない。その仕草を、チェルシーは頷きながら、黙って見守っていた。


「わたしも、ロボが好きです」


 ハーキュリーズが額に手をやる。


「待て、確か、きみは『チェルシー』と名乗ったな? ひょっとして『ニホンバシカメラ』の?」

「ええ! ご存じでしたか?」

「ご存じも何も、あの子の肩と腕の人工関節はその店のだ。もっとも、ネットショッピングだったが」

「嬉しいです。あの関節は、ハルートにも使われてるんですよ」


 自分の店で取り扱っている商品が思わぬ形であの自動人形(オートマトン)と繋がっていたことに、チェルシーは感情を昂らせて、全身で嬉しさを表している。太陽の日差しのように照りつけるような感情の発露に、少しだけハーキュリーズは戸惑った笑みを浮かべて押し黙る。

 彷徨った視線の先で、どうしても捉えてしまうのは、在りし日の笑顔を浮かべるエヴァレット親子の姿。


「あ。……やっぱり、気になります? ノリーンのこと……」

「まぁ、ここの写真を見た後で、『気にならない』なんて言ったところで嘘にしか聞こえないだろうな」

「ええ。この大きなぬいぐるみを抱えてご満悦のノリーン、凄く可愛いから、あとでデータくださいよ」

「あとで、と言わずにこの場でいいぞ」


 そう言って、側面のポートをチェルシーに向かって差し出す。チェルシーは自らの携帯端末(モブ)の送受信機でデータを読み取る。


「ありがとうございます」

「彼女に振り回されているきみに、ささやかなご褒美だ」


 冗談めかすハーキュリーズに、不意にチェルシーは笑みを消すと真剣な面持ちになる。


「……ほっとけないんですよ。それでいて、とっても大事な人。ハークにだって、そういう人がいるでしょう?」


 チェルシーの何気ない問いに、ハーキュリーズの瞳が僅かに揺れる。



 アルテア北部の中華街(チャイナ・タウン)ノース・チャイナ・ペンタゴンとアルテア市中心街(セントラル)の間に位置する、穏やかな牧草地帯が広がる北部地方(ノース・エリア)

 アルテア建設時は、構造体と構造体を繋ぎ止めるレールしかない場所も、古の遊牧地帯を再現したような光景がずっと広がっている。

 周囲に家屋はなく、一般道というよりも農道と表現した方が適切な道が地平線の先へ延々と続く。

 その大地の下に、ジョリオンの隠れ家(セーフハウス)がある。

 一見すると自動車の整備工場の一角のように、専用の工具や工作機器、それに3Dプリンターなどの大きく重たい機器が備えられている。さらに、その奥にはぼろぼろになった濃紺と眩しい真っ黄色のスポーツカーが鎮座していた。

 ハルートとツクシは、工科大学(アルテック)の工学部学生寮で迎えに来たジョリオンの車に乗って、ここへやって来た。


「いやー。しかし、ありがたいね。おれとハルートだけじゃどうにも花がないからな」

<ジョリー、勘違いはなさらないでください。ツクシはわたしの力になりたいと言ってくれたのです。決して……>

「わかってるわかってる。こっちだって、こき使ってやろうだなんて思っちゃいないよ」


 なんの用途に用いるのか一瞥して判断できない工具類が無造作に載った作業台へ近付き、パイプ椅子を引っ張り出してくる。


「で、ハルート。準備って言っても、具体的には何をするんだ?」

<はい。まずはクラリッサが作ったウォーカー・シリーズのロストナンバー対策です。トゥエルヴについては情報があまりにも少ないですが、サーティンに関しては交戦データが存在します。この情報資源(インフォリソース)を用いて、対抗策を講じます>

「ほう、相変わらず優秀だねえ」

<サーティンは、その武装や構造から対近接格闘プラグイン対策として開発された戦闘用ドロイドであると推察されます。具体的には、ネクストセヴンやノリーン、あるいはわたしを念頭に置いているのでしょう>


 言いながら、ハルートは3Dプリンターに設計データを送信する。


<現に、ノリーンはなかなかサーティンへ近付くことができませんでした。ですが、ジョリオンの不意打ちや、ノリーンが姿を現した際に表した隙に乗じたスマート・ガンの攻撃が有効打になりました>

「ああ、それについては軽量な新型スマート・ガンとスマート・ショットガンを受領した」

<それは心強いですね。ただ、サーティンの頭部ユニットには三門の集束高周波加熱砲(CHFWHG)を搭載しています。頭部を回転させることで、三発の連続攻撃が可能です。サーティンへ近付く際に、いかにしてその攻撃を掻い潜るかが焦点になりますね>

「で、何か案はあるのか?」

<高周波加熱の弱点は、対象物が氷になるとマイクロ波をほとんど吸収しなくなるため、使用できません。そのことを利用して、何か対抗兵器を講じられればいいのですが……>


 ハルートは言いながら、廃車同然の濃紺の車のドアを開ける。


「おい、どうした?」


 運転席側のドアに備え付けられたホルダーからスマート・ガンを抜き取る。


<このスマート・ガン、お借りしてもよろしいですか?>

「ああ、おれの分は間に合ってるからな」

<では、黄色い車の方も、ありがたく使わせてもらいますよ>

「別に、構わないが……。一体、何をする気だ?」

敵味方識別装置(IFF)を外して、安全装置(セーフティ)に制限を加えます。また、わたしのできる範囲内で可能な改造も加えていければいいと考えております>


 机の上に四丁のスマート・ガンを並べると、早速作業に取り掛かる。


「随分と多才なんだな」

<有能でなければ、ノリーンの隣に立つ資格はありませんからね>

「ハルート! これ……」


 ツクシから上がった声に、ハルートとジョリオンが揃って振り返る。

 隠れ家(セーフハウス)のなかを整理して回っていたツクシが手にしているのは、女性用の筋力増強(マッスルアシスト)用のタクティカル・スキンだ。身体を適度に圧迫し、電気的な刺激を筋組織に与えることで、握力など身体的な能力を増強する。


「これ、あのビルでノリーンが着ていたものですよね!?」

「ああ、そうだが……。それがどうした?」


 訊いてから、ツクシが脳裏に描いているだろうことに思い至り、ジョリオンは狼狽(うろた)える。


「まさか、それを着て戦うとか言うんじゃないだろうな?」

「はい! お願いです、わたしにこれを貸してください!」


 ジョリオンは芝居がかった溜息をついてみせる。


「いくらなんでも、それは無理だ」

「でもっ!?」


 乗り気でないジョリオンに、しがみつくようにしてツクシが詰め寄る。


「おいおい……。おい、ハルート。おまえからも言ってやってくれよ」

<大丈夫ですよ、ジョリー。彼女ならば、わたしたちにとってかけがえのない、そして頼りになる仲間になれるはずです。わたしが保証します>


 ハルートの言葉に、ツクシが感極まって泣きそうな笑顔を浮かべ、逆にジョリオンが絶句する。


「おい、一体、なんの根拠でそんなこと言う?」

<実は、ずっと考えていたんです。ツクシの体内で過剰繁殖したナノマシンと、わたしが有する体内ナノマシン制御プログラム。このふたつを通じて、ツクシの能力を底上げできるのではないかと考えています>

「なんだそりゃ。攻撃を受けて怪我しても、すぐに治るとかか?」

<それではツクシの身体がいくらあっても足りません。百聞は一見にしかず。というわけで、どうですかジョリー? ここはひとつ、ツクシと手合せでも>


 自信たっぷりのハルートに、ついジョリオンも乗せられてしまう。

 それに、ハルートがなんと言おうと、民間人のツクシを連れて行くつもりは毛頭なかった。それゆえ、こういう形で実力差をはっきりさせる必要があるだろう。


「おし、そうと決まれば……。ツクシ、そのスーツを着て」

「はい!」


 ジョリオンは衝立の裏に姿を消すと、自分のタクティカル・スキンを手際よく着込んでいく。服を脱ぐ際の衣擦れの音が、微かに衝立の裏から伝わってくる。ハルートはツクシに促す。


<では、ツクシ。服を脱いでください>

「……えっ!?」


 ハルートの落ち着いた電子音声の言葉に、ツクモは一瞬頭が真っ白になり、次の瞬間には目に見えて動揺してしまう。ツクシが素っ頓狂な声を上げて、両腕で自分の胸元を抱く。その瞳は困惑に揺れている。


<大丈夫です、ツクシ>


 ハルートはツクシの警戒心を解こうと、穏やかな電子音声で語りかける。


<ひとりで着るのは大変ですから、わたしがお手伝いしましょう>


 そう言って、ツクシの背後に寄り添うようにして佇まれると、ツクシには到底拒むことはできなかった。ハルートの言葉に、ツクシの抵抗感は根元から瓦解していき、ついには飲み込まれてしまう。


「あっ、はい……」


 ツクシは観念して、弱々しい言葉を発する。


「えっと、どこまで脱ぎますか?」

<全てです>

「……えっ?」

<裸になってください。大丈夫ですよ、ちゃんとタクティカル・スキンにはパットとサポーターがついていますから>


 そういう問題ではなかったが、ツクシは自らの羞恥心にケリをつける。

 ジョリオンの目がないことを確認して、ツクシは躊躇いがちに身に纏っているものを全て脱ぎ捨てる。自らの心臓の音が大きくなり、耳が熱くなる。ハルートは彼女の衣類を籠にまとめると、タクティカル・スキンを用意してくれた。

 ツクシはそっと足を入れて、下半身の部分を穿き、サポーターの位置を微調整する。背後ではハルートが手から肩へスキンを着せてくれる。スキン内のパットを確認してから、前の留め具を丁寧に止めていく。


<では、スキン内の空気を抜きます>


 スキンが縮み、ツクシの素肌に張り付く。身体を包み込んでいた特殊繊維が全身をきゅっと収縮する。今まで感じたことのない、独特な圧迫感にツクシは思わず喘いでしまう。

 自分の上げた声なのに恥ずかしくなって、ツクシの頬が赤く染まる。

 ノリーンに勝るとも劣らない曲線美に富んだ身体付きが、特殊繊維越しに露わになる。慎み深いツクシにとって、このような自分の身体の線がはっきり出るような服は馴染みがなく、どうしても落ち着いていられない。


「……あの、どうですか?」


 ツクシは恥ずかしそうに、右腕で胸元を、左手で自分の下腹部を隠す。

 どう、と訊ねられて、ハルートは返答に窮する。

 質問が具体的ではなく、ハルートにどういった答えをツクシが求めているのか、判断できなかった。が、ハルートはストレージに貯め込んだ経験から、推論エンジンと対人コミュニケーションアプリをフル稼働させる。


<サイズはぴったりです。スキンの筋力増強(マッスルアシスト)は正常に作動しています>


 その答えに、微かにツクシの綺麗に整った眉が寄る。ハルートは視覚情報から、言葉を継ぎ足す。


<……それに、よく似合っていますよ、ツクシ>


 そう言うと、ツクシの顔がぱっと花やいだ。依然として、ツクシの柔らかそうな頬は薄らと薄紅色をしているが、恥ずかしそうだった態度は幾分か和らいだように見える。


「さあ、準備はできたか?」

「はい」


 比較的散らかっていない、開けたスペースへ移動する。

 ジョリオンは楽しそうに首を回しているが、反対にツクシは心配そうに身を縮めていた。ツクシにすれば、気持ちだけが先行していて、その実戦うことを知り、また十分に理解しているとは言い難い。


「で、具体的に手合せって何をするんだ?」

<先に相手をダウンさせた方が勝ち、というのはどうでしょうか?>


 ハルートの言葉に、ジョリオンが堪らず笑い出す。


「おいおい、いいのか? 押し倒しちまって」

<ええ>


 ツクシの顔が僅かに曇る。


<大丈夫ですよ、ツクシ。あなたが勝ちます……それも瞬殺です>

「でも、相手は諜報軍(インテリジェンス)の現役軍人ですよ」

「いくら、タクティカル・スキンを着込んでも、中身は女子大生だしな。まぁ、安心しな。それなりに手加減をしてあげるからさ」


 ジョリオンは構えを取る。


「ハルート、合図を頼む」

<わかりました>


 ハルートはふたりの様子をそれぞれ窺う。

 すでに臨戦態勢に移ったジョリオンに対し、ツクシはただ立って佇んでいるだけだ。

 もちろん、彼女なりにボクサーのような構えや柔道のような姿勢を取って工夫をしているのだが、どこか美しく洗練されたジョリオンの体勢を前にするといささか心もとない。


<では、開始します>


 ハルートの発した電子音声に、ジョリオンは即座に対応する。刹那の間に、ツクシとの間にあった間合いを一気に詰めて、握った右の拳をツクシに振るう。

 もちろん、軍人のジョリオンがタクティカル・スキンを着て殴れば、徒手空拳でもツクシを殺めてしまうかもしれない。だが、そのことを十分加味して、電光石火の早業ながら慎重にジョリオンは拳を放っていた。

 その一発が、ツクシの肩をとらえ、彼女を床に転がす決定的な一打になるはずだった。

 だが、ツクシの双眸が黄緑色に輝くと、ジョリオンの右腕が空を裂く。

 しゃがみ込んだツクシの右の拳が、ジョリオンの胸に炸裂する。肺を適度に圧迫されて、ジョリオンの口から息が零れた。

 その間にも、ツクシの攻撃が続く。

 ツクシの小さな右膝がジョリオンの腹の側面を強かに打つ。

 最後に、一回転したツクシの右足がジョリオンの腹筋に食い込んだ。華奢な身体から繰り出される鋭い一撃に、軍で極限まで鍛えられたはずのジョリオンの身体を床に沈めるには十二分な威力を持っていた。


「……がはっ!? なん、なんだよ……これ?」


 ジョリオンは訳も分からず、目を瞬かせた。


「えっ? あれっ!? これって一体……」


 ツクシの瞳の色が、黄緑色から鳶色の瞳に戻る。

 そして、自分の足元に転がっているジョリオンを、恐る恐る見下ろした。その姿は、先ほどの鬼神のような超人的な動きをしたようには到底見えない。

 狐に化かされたような、どこか納得いかない視線でジョリオンはツクシとハルートを見比べていた。

 ジョリオンは、ツクシの瞳に宿った光に記憶があったことに思い至る。


「……まさか、ナノマシンか?」

<はい、以前からノリーンがチェルシーのドロイドと行っていた格闘術、それを独自にわたしが解析し、近接格闘プラグインに似た体系を作成しました。それを、ナノマシンを通じてツクシに伝達しました>


 ハルートの言葉に、ジョリオンが嫌々とばかりに首を振る。


「これってさあ……罰ゲームってなんだっけ?」

<これで、ツクシはわたしたちの仲間です。もちろん、異論はないですよね?>


 床に寝転がったままのジョリオンに向けて、ハルートは言った。

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