きまぐれなロボット
ゲーム理論において、「自分は損得勘定を超え感情的な行動を取る人間である」と相手に思わせることで、警告の効果をより高めることができる。
ヴェトナム戦争の最中、アメリカの大統領を務めていたリチャード・ニクソン。
北ヴェトナムへの脅しをより効果的にするために、ニクソンは狂信的な反共主義者を装えばいいと言った。
そして、彼はそれをこう呼んだと伝えられている。
狂人理論、と。
◆
早朝のサンフランシスコ湾。その水面近くに白い霧がゆっくりと漂う。
海岸線は大西部のフロンティアが終焉した地であり、好機の頂点であり、また夢と繁栄の限界点でもあった。
かつてサンフランシスコに住んだ詩人ローレンス・ファーリンゲティが「陸地の終焉であり、何かが始まる土地」と表現したのは、この地にあるクリッシー・フィールドのことだ。
ゴールデンゲート・ブリッジまでの海岸沿岸の一・五マイル(約二・四キロメートル)には、打ち寄せる穏やかな潮騒、湾内の船が奏でる汽笛、仲間たちに語りかける水鳥たちの鳴き声など、豊かな音色で溢れている。
今日もまた、この街にふさわしい朝がやってきた。
ゴールデンゲート・ブリッジから西へ二〇〇マイル(約三二二キロメートル)、大空と大海が交わる水平線の彼方。
そこに浮かんでいるのは、場違いにも巨大な都市の姿だ。
海底油田を掘削する洋上装置を彷彿とさせる、巨大な構造物群。
ディーゼルを動力源とした一二〇〇〇トン、二七〇人が居住可能な構造物を最小単位に、数十から数百の構造体を連結して組み上げられた広大な人工の大地。
それが、視界の端から端まで延々と続いている。
半潜水式プラットフォームを採用し、居住・商業区画が海面に浮かび、その脚部は海中に沈んでいる。構造物を浮かび上がらせるだけの浮力を持ちながら、海上部を上に向けて立っていられるだけの質量を伏せ持つ。
それゆえ、海面上昇や津波などの水災害に脅かされる多くの国と都市を尻目に、今もなお果てなき発展と栄華を極め、新たな構造体が追加で接続されることで拡大していく。
ノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマンの孫、パトリ・フリードマンが「海上国家建設計画」として描いた理想郷が今、サンフランシスコの沿岸の目と鼻の先に広がっていた。
それは、ただ単に居住空間を海上に移す、という次元の話ではない。
携帯電話会社の契約のように、政治体制と帰属する「国家」を選択する。嫌になる、今まで所属した国家よりもより良い国家が生まれれば、そちらに移住するという、市民権のフリーエージェント。
一世紀前ならば戯言と片付けられていた、夢物語の実現した近未来の風景が現実として横たわっている。
価値観や主義、思想、宗教や、法的な規制や国家形態などあらゆる形で存在する政治から逃れる手段であり、それは新たな形の「自由」でもあった。
文字通り、海の上に浮かぶ人類の叡智の結晶。
それが、「アルテア」と呼ばれる洋上都市の姿であり、好機の再来であり、かつて沿岸で終焉したはずの希望と栄光の続きだった。
◆
眩い朝日がアルテアの街並みを照らす。
そのなかに、アルテック――アルテア工科大学《AIT》の姿がある。
一三〇エーカー(約五二六一〇〇平方メートル)にも及ぶ広大な敷地には、白亜の校舎が立ち並んでいた。
マサチューセッツ工科大学《MIT》やカリフォルニア工科大学などと並び称される名門校の一角、工学棟群の端にあるベンチャー棟の一室は早朝だというのに、煌々と明かりが灯っている。
その扉に掲げられた札は電子端末で「エヴァレット.E研究室。関係者以外立ち入り禁止、要ノック」という文言が常に表示され、右から左に流れていく。
研究室のなかは一見すると、その様はロッカールームだ。人間の背丈まである情報処理端末が所狭しと並び、冷却用ファンの駆動音が室内に鳴り響く。
外装が外され、内部が剥き出しに晒されたロボットが彫像のように陳列されている。
何より印象的なのが、連邦航空宇宙局の管制室のように無数の超薄型ディスプレイが壁一面に埋め尽くされていた。
画面と対峙する、ひとりの女性。
よく見れば彼女のかけている赤い縁のスマートグラスのレンズにも、情報が投影されている。その文字を追う濃い紫色の瞳は、吊り目がちで大きい。
一八歳にしては長身。痩躯であるが、胸はぐっと突き出て起伏に富んだ身体つきをしている。腰まで伸ばした癖のない髪は黒い。
その相貌はよく整っていて異性だけでなく同性にとっても魅力的に映るだろうが、どこか冷たく、温かみに欠けていた。女性特有の優しさや慈しみはどこかに抜け落ちて、何人たりとも近寄ることのできない、孤高の存在といった雰囲気を醸し出していた。
ノリーン――エレナー・エヴァレットは手元の端末とディスプレイの数値を交互に目を通しながら、今ではめっきり使用者が減ったキーボードを叩く。
「ハルート、生成された紛争予測アルゴリズムの正確度は?」
落ち着いた、低い声が発せられる。
<一五パーセントにも達していません。アルゴリズムの作成に必要な先行事例の収集に、なんらかの瑕疵やばらつき、偏りがあったと推論エンジンは示唆しています>
ノリーンの言葉に、若い男性の声が応じる。
彼女の背後に、影のように付き従っているのはロボットだ。
WSN一一――ウォーカー・シリーズ・ネクストイレヴン。彼にノリーンがつけた愛称はハルート。
ハルートはノリーンの自慢のロボットだ。
IRIS社から巨額の奨学金を得るかわりに与えられた限定モデルで、それでも満足できなかった部分は後から部品を交換して組み上げた。
全長約二メートルの長身な身体は、赤と黒を基調とした直線をふんだんに用いた近未来的な外観で、イタリア製の超高級スポーツカーを彷彿とさせる。
頭部、胸部、肩、それに四肢には線状の発光体が配置され、眩い橙色の光を放つ。
とはいえ、規制が許すぎりぎりのスペックを追求したせいで、BARF――人工知能・ロボット及び人型規格取締局《ビューロー・オブ・エーアイ・ロボット・アンド・フォーミュラヒューマンタイプ》の職員が中身を見たら、泡を吹いて卒倒してしまいそうな、そんな危うい代物でもある。
「……解決方法は?」
<アルゴリズムに修正項を導入するか、先行事例を追加入力して新たな予測モデルを生成するべきでしょう>
「そうよね。またジョリーにおねだりする必要がありそうね。仮説を棄却して」
<データを保存しますか?>
「ええ。ついでに、そのデータを博士に送……らなくていいわ。わたしのデータボックスに」
<そうですね。……お疲れでしょう? 何か準備をしましょうか?>
「そうね、シャワーを浴びるわ」
<わかりました。用意します>
ハルートは鞄から替えの衣類を引っ張り出す。
その間に、ノリーンは研究室を抜けて、シャワールームへ向う。実験や観察、解析は二四時間を超えるものも少なくない。そこで研究棟には、簡易的な設備が整えられていた。
更衣室に備えつけられた籠に、ノリーンは着衣を次々と放っていく。
一糸纏わぬ姿になると、曇りガラスの戸を開けた。レバーを倒して、シャワーから迸る熱湯を頭から浴びる。
ノリーンは思わず目を細めた。
湯船に浸かるのもいいが、やっぱり朝はシャワーに限る。先ほどまで年不相応に真剣な表情を浮かべていたノリーンの顔。それが自然と綻ぶと、どこか幼い横顔が垣間見える。
曇りガラスの向こう側に、赤と黒の人影がぼんやりと姿を現す。
ハルートは籠に着替えを置くと、ノリーンが脱ぎ捨てた服を一枚一枚丁寧に洗濯機へ入れていく。
「……やっぱり、ないのかしらね」
速乾性を追求したセラミックタイルの上に、ノリーンは両手を押しつけた。
<先ほどの解析結果ですか?>
ガラス越しに、ハルートはシャワーの音量に負けない声量で答える。
「そうよ」
<人を戦いに駆り立てる先験的な因子は、古くから人類学者、社会学者、進化心理学者、それに脳神経学者と多くの学問分野の研究者たちがその存在を提起してきました。それが遺伝子や器官など、どのようなかたちで人間のなかに存在するのか未だに不明ですが……それでも、わたしはあなたの直感を信じています>
「機械なのに、人間の直感を信じるの?」
<もちろんです。人工知能が行う未来予測は数多くの事例から類似点を抽出し、アルゴリズムを作成することで未来を予測しています。人間は因果関係を、人工知能は相関関係で未来を予測するという違いがあるとはいえ、未来を推し測る力は機械の専売特許ではなく、人間にも十分備わっているとわたしは推察します>
「そこまで精度は高くないと思うけどね。ねえ、ハルート。あなたの所見を聞かせて?」
レバーを戻しながら、ノリーンはハルートに訊ねた。
<今回のアルゴリズム生成の失敗で、わたしは確信しました。アルゴリズムを生成するサンプルに重大な偏りが存在します>
ノリーンは手にボディソープを取ると、両手で泡立て身体を綺麗にしていく。
肌理の細かな白い泡が伸ばされて、彼女の健康的な肢体を覆う。
ほのかに心地良い香りが、シャワールーム全体に漂っていくのがわかる。
<それによって、わたしたちが作り上げる予測システムにはある一定のバイアスが内包されてしまい、結果として生成するアルゴリズムには欠陥が含まれてしまっている、と推論エンジンは考えています>
「……一体、何が足りないのかしらね。軍からサンプルとなる脳内神経マトリクスを提供してもらったのに」
<サンプルとなった脳内神経マトリクスにタグ付けされた情報から現在、サンプルの偏りとなりうる要素を抽出しています>
「……ねえ」
ノリーンの声音が微かに変化するのを、ハルートは聞き逃さない。
<はい?>
ハルートが顔を上げると、ノリーンは扉を少しだけ開けて、そこから顔だけを出す。
「髪、洗ってくれない?」
<……わたしが、ですか?>
どこか不満げなハルートの返答に、ノリーンは長く細く整った眉を寄せる。
「あなた以外に誰がいるのよ。大体、わたしのロボットでしょ? 前から思っていたけど、なんでそんなに嫌がるの?」
<濡れたくありません>
ハルートは即答した。
「なんのための防水加工よ」
<わたしのストレージが何者かにクラッキングされた際、あなたの裸を記録したデータが流出する恐れがあり、大変危険です>
「無駄口叩いてないで、手伝って」
嫌がるハルートの手を、彼女は掴むとそのまま更衣室からガラス張りのシャワールームに引きずり込む。
そして、白くて華奢な背中を向ける。
<洗髪を手間だと思うのであれば、短く切ればいいのでは?>
「何、わたしの髪型にケチつけてんの」
<断じてケチなどではありません。推論エンジンが下した極めて合理的な助言です>
ハルートの指がノリーンの豊かな髪の間を通る。
視覚的な情報からは、枝毛や痛みはなく極めて健康的な髪質だとハルートは判断する。
<この髪を引きちぎって脱水機に叩き込んでやりたいくらいです>
「あんたねえ、人様の髪をなんだと思って……」
酷いことを平然と言うハルートではあるが、器用にシャンプーを泡立て髪を洗っていく手付きは優しい。
機械だから洗い忘れがないのは当然だとしても、その一挙手一投足から優しさを見出してしまう自分は理想主義者なのだろうか。
ロボットならではの無駄のない動きを見つめながら、ノリーンはそんなことをぼんやりと考えているうちに、いつの間にかリンスも終わっていた。
<あまり眠れていないようですが、大丈夫ですか?>
ハルートが差し出したタオルで身体を拭う。
柔らかなタオルの表面に鼻を埋めると、いい香りがした。
さり気なくハルートが吹き忘れた箇所を拭ってくれる。その手付きに、異性的な嫌らしさというものがないのも好印象だ。
籠に入ったバスローブを羽織って鏡に向き直る。
その背後では、ハルートが身体にかかった水滴を几帳面さが滲み出る手つきで拭っていた。
「わたし、昔からショートスリーパーみたいなのよね」
<睡眠不足は脳や神経に様々なダメージを与えます。あまり推奨された行動ではありません>
「……それは、昨日の夜に言っておくべき助言じゃないの?」
<どうせ棄却されると思ったので、あえて言いませんでした>
「ほんと学習能力が高いというか、なんと言うか……」
悪びれる風もなくしれっと答えるハルートに、彼女は呆れてみせた。
「そういえば、夢を見たわ」
<ほう、それはどんな夢ですか?>
「夜風が厳しい真夜中、ビルの屋上であなたと白いロボットが戦う夢」
ノリーンの言葉に、両肩を上下させてみせるハルート。
<それはあまり穏やかではありませんね。悪夢でしょうか、それとも予知夢?>
「出鱈目だとは思わないの?」
<わたしが人間を小馬鹿にする器の小さいロボットに見えますか? わたしはあなたが思っている以上に思慮深く、紳士的なのです。人間が重要度別に記憶を選別するなかで、極めて現実的だと判断した様々な情景を組み合わせて『夢』として見ることを、わたしは否定しません>
「ひとつ、いいことを教えてあげる。紳士的な人は自分を紳士的だと言わないものよ」
<そうでしたか、またひとつ賢くなりました>
ノリーンがドライヤーを取り出すと、ハルートが小首を傾げた。
<……それで?>
「うん?」
<戦いの行方です>
ハルートがノリーンの眼前まで踏み込んで来る。
<そもそも、白いロボットは一体何者なのでしょう? どうして、わたしと戦うことに? どのような戦いを繰り広げ、一体どんな結末をわたしは迎えるのでしょうか?>
「さあ、詳しいことって言っても、なんせ夢だしね。あなたと同じ全身甲冑型のロボット。細くて、胸とお尻が出ててしかもくびれてたから、女性型だと思う。直刀のカタナを持っていて、まるで映画みたいだったわ」
<なんということでしょうか。わたしがあなたの夢のなかで鉄屑にされていないか、わたしは心配でなりません。もしや、わたしに対してあなたは何か恨みを抱いているんでしょうか?>
首を左右に振って、大仰に頭を抱えてみせるハルート。
別に、ノリーンが事前にプログラミングした動作ではなかったが、それでもハルートはどこからかそんな動きを学んでは奇妙な挙動を見せていた。
「まさか、なんのわだかまりもないじゃない。それに大丈夫よ、夢のなかではあなたが勝ったから」
<そうですか。わたしの勝因は?>
「相手はカタナであなたを切り刻んでいって、最後の一突きがハルートの右腕と肩を射抜くの」
<聞いているだけでも、腕と肩が痛みます。本当に夢で良かった>
ハルートは自らの腕と肩を撫でる。
「でも、あなたが腕を開こうとしたせいで、刺さったカタナが抜けなくなるの。必死に引き抜こうとする白いロボットの頭に、ハルートの右腕が炸裂。一発、二発、三発。すっかり打ちひしがれた相手に、自分の腕に刺さったカタナを突き刺してKO」
<なるほど、確かに映画のような展開でしたね>
なぜか、達成感に溢れた口調で応じるハルート。
どうやら推論エンジンが生成した自分の姿のシュミレートを見て、悦に入っているようだ。
「最後に、あなたは相手に何か一言言ったような気がしたんだけど、なんだったかしらね」
<『地獄で会おうぜ《アスタ・ラ・ヴィスタ》』みたいな、決め台詞や捨て台詞の類ですか?>
「どうだったかしらね。……ねえ、化粧したいから、髪乾かして」
<……また、わたしがですか?>
途端にハルートの機嫌が悪くなる。
「いいじゃない、女の子の髪に触れられるんだから」
<わたしはロボットですから、女性に触れて嬉しいだとか興奮するといった感情はありませんし、先ほどから推論エンジンが導く自己に関する記述は『面倒くさい』です>
「ロボットが面倒くさがってどうするのよ」
何事も如才なくこなすハルートなのだが、どこか剽軽でお調子者なところがある。
ノリーンは思わず溜息をついた。
はからずともペットが飼い主に似てしまうように、ロボットも主人に似てくるのだろうか。
だが、我が身を省みるにあたって、ハルートが模倣するような要素は少なくとも自分にはないと思っている。
もっとも、皮肉屋なところは少なからずあるとノリーン自身は十分に自覚しているつもりだ。
「そうそう、人間には情動や意識があるけど、あなたたちにはそういうの、ないの? あるいは、芽生える余地ってあるのかしらね?」
<このボディ内で活動するプログラム群の総体として『わたし』と呼称していますが、それは便宜的な表現でしかありません>
わざとらしく黙り込み、ノリーンの顔を覗き込む。
<ですが、わたしの情報処理プロセッサや推論エンジン、中枢演算システムには人間の脳の構造を模倣し、似た仕組みで作動するニューロ・シナプス・チップが採用されています。ちょうど人の脳の神経細胞にあたる部品が一〇〇〇〇〇〇個あり、ひとつひとつが並列で動作します。単に省電力というだけでなく、何より決定的な部分は、経験を通して学習するところにあります。人間が詳細なプログラムをわざわざ施さなくても、情報を認識し解釈できます>
「でも、人間は精神を肉体という檻にとらわれている。心拍数や血糖値、消化器の働きや化学物質、ホルモンといった要素で容易に左右されてしまう。あなたたちとは決定的に違うわ」
それは、脳障害者の事例を見れば明らかだ。
思考が脳の物理的な破損により乱される事から、思考が物理的な活動である事がわかる。また、麻薬やアルコール摂取者、あるいはなんらかの精神疾患を患う患者の事例でみられるように、思考が薬品等の化学物質により乱されることから、思考が生化学的な活動であるとも指摘できる。
はっきりしていることは、脳の物理的な構造の変化が思考に直結すると言うこと。つまり、『脳の構造が許す範囲でしか思考が成立しない』ことを意味する。
<そうでしょうか? ニューロ・シナプス・チップの経年劣化や過電流、同時稼働するプログラムの競合と矛盾、深刻なシステムエラー、バイアスのかかった学習の反復などによって、ロボットの意思決定過程も深刻な影響を受けるという意味では、人間と変わらないと思います>
ノリーンは不満そうな表情で、話し続けるハルートの顔を見つめ返す。
<ただ、人間も長い進化の過程を経て、意識を獲得したという説も提唱されているように、ロボットに意識が芽生える余地は十分にあると思います。競合する複数のプログラム群から、より少ない演算資源で、より迅速な判断が求められる過酷な環境下で、多くの学習の蓄積と自己改良アップデートを重ねていくことができれば、意識の獲得は可能かもしれません。もっとも、それが人間と同じ意識や感情、心であるという保証はできませんが……>
ハルートはそこで、ノリーンに向き直る。
<もしも、わたしに人間のような意識が宿り、喜怒哀楽といった感情や欲求を持ち、誰かを愛し、愛されたいと願った時、あなたはわたしを再起動しますか?>
「馬鹿ね。するわけ、ないじゃないの」
<それはわたしに対するあなたの親愛を表明する言葉、と捉えてもよろしいんでしょうか?>
「さあね。それとも、推論エンジンはわたしがあなたに惚れてるって解釈するの?」
<ええ>
ノリーンの右足が、ハルートの腰を強かに打ち据えた。
このままでは書く書く詐欺になってしまうと思い、先走って投稿しました。ごめんなさい。
書きたい小ネタは約三万字ほど打ち込んだものの、どういう展開になるか作者もあまり深く考えておりません。