食夢症候群についての考察より抜粋 1
『食夢症候群についての考察』より抜粋
<考察著者>
脳精神学者 ソロモン=F=クレール
【はじめに】
私がこの難解極まりない病を知ったのは、私の弟の愛娘が切欠である。
姪はあの悪夢の日以降、眠りから覚める事はない。
弟夫婦とその娘が交通事故に遇ったのは、雨の酷い日曜日の昼過ぎだった。
対向車線を走っていたトレーラーが、車線をはみ出し弟が運転していた自家用車に正面衝突したのだ。
運転席に座っていた彼と、助手席に座っていた妻は即死。
後部座席でまるまって眠っていたまだ3歳の姪だけが助かった。
病院に担ぎ込まれた姪は、事故以降、一度も目覚めてはいない。
仕事の合間を縫う様に、私は姪の見舞いへ向かっていた。
ある日の事。
姪の病室にひとつの影を見つけた。
まるで指揮者か旧時代の執事の様な出で立ちのその影は、私に向かって頭を下げ。
そして当時の私には到底理解出来ない事実を告げたのだった。
『食夢症候群』
『道化師』
『夢』
それらについて、私はあの時から自分なりに考察した。
そして今に至るのである。
これより先に記する事は、あくまでも私なりの考えであり其処から導き出した結論であると、ご理解頂きたい。
願わくば、この記述が全て終わるそれまでに、姪が目覚めてくれる事を。
ソロモン=F=クレール
「食夢症候群についての考察」より抜粋
【食夢症候群とは】
正式名:食夢症候群
病原菌は『道化師』と呼ばれる、感染経路や形状等、一切が謎の包まれた未知のウィルスである。
食夢症候群のエキスパートによると、ウィルスの潜伏している部位は『夢』との事だが、当のエキスパート以外に識別は不能。
通常ウィルスは元である『夢』に潜み、条件の元発病する。
条件は人によって様々である為、特定が出来ないと専門家談。
謎多い病原菌と症状故に、今現在世界にどれだけの患者が存在するのか分からない。
発症すると患者は一様に深い睡眠に落ちる。
どの様な手段をもってしても、覚醒させる事は不可能。
端から見ると意識不明の患者とほぼ同様である為、判断がつきにくい。
治療法は、不明。
【著者、手記より抜粋】