毒薬と劇薬・毒物と劇物
ちょっとそこのあなた? そう、あなたですよ。今回のタイトルが気になったあなた。
もしかして、自分の小説で『劇薬』なんて書いたことがあるんじゃないですか?
言葉の意味、ちゃんと分かってますか?
分かってる人にこのコラムは必要ありません。分からない人向けに簡潔に書いています。
でも、「一応見ておいてやるか。ダメだししてやる」なんて真っ直ぐな人には是非とも見ておいてほしいです。あなたの知識でこのコラムをより良いものにすることを手伝っていただけたらと思います。
簡単に書いてしまうと、説明が一行で済んでしまうので、ちょっと煽り文をつけてみました。
で、肝腎の説明を早くしろですよね。分かってますって。
『劇薬とは、毒薬よりもLD50が大きいものを言います』
唐突に『LD50』なんていわれても分からないですよね。LDは英語で書くと"Lethal Dose"になります。そのまま訳すなら「死をもたらす投薬」でしょうか。50は50%を指しますので、日本語では「半数致死量」、同量の薬物を摂取させた実験動物の半数を死に至らしめる投与量のことを言います。(単位はmg/kg:体重(kg)あたりの投与量(mg))
で、単位をみてもらえば分かるかと思いますが、LD50が小さいということは、より少量で致死量になるということです。投与経路によって値は違いますが、例えば経口投与(口に入れて飲み込む)の場合は50(mg)以下なら毒薬、300(mg)以下なら劇薬になります。
それと、いくら毒性が強いといっても、安全域と中毒域というものがあって、服用量は安全域に収まっているはずなので、一気に死ぬような量を服用することは、たぶん無いと思います。「あ、お薬飲み忘れてた」とかいって何回分か一気に飲まない限りは……。
飲み忘れて心配な場合は、勝手に複数回一気飲みせずに、薬局の薬剤師さんに問い合わせてください。
似たような言葉で「毒物」と「劇物」という言葉がありますね。こちらも、毒物のほうが危険性が高いです。
パッケージの表示方法や管理などに違いがありますが、一番大きな違いとしては、こちらは医薬品では無いという点でしょうか。農薬や洗剤なんかで危ないものがこちらに含まれます。
あ、あと法律も違いますね。毒薬や劇薬は「薬事法」(※面倒なので薬事法としておきます)、毒物や劇物は「毒物及び劇物取締法」です。
以上、『たまに気になる医療用語:毒薬と劇薬・毒物と劇物』でした。
次回もまた、ごひいきに。
※薬事法は2014年秋ごろに「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)になりましたが、馴染みが無いと思いましたので「薬事法」と書くことにしました。