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03

目覚めた後確認した自らの力。一口に言ってしまえば超能力と分類されるそれ。

あの目覚めの泉だかいう泉の不思議な水を飲んだ後、あまりの激痛を押さえ込み、その後漸く眠りに付き、目覚めて人心地をつけ、その後早速自分の力に対する調査を始めた。

というのもこの超能力という力、理屈としては『如何やって運用するのか』は解明されているのだが、『どうしてそうなるのか』と言うところは完全に解明されたわけではない。

その昔超能力の事を『神通力』と呼ぶ土地が存在していたが、まさしく超能力とは、規模によっては神に通じる力といっても過言ではないほどの可能性を秘めているのだそうだ。

幾らなんでもそりゃ過言だろうとは俺も思うのだが、確かにテレポーテーションとか念力とか、人の世の理を無視した力を扱える俺が言ったところで信憑性は皆無だろう。

で、そんな俺の超能力だが、使い方によっては戦略兵器級の破壊力を持つ力だって存在する。狙ってやらない限りそこまで被害が大きくなるような力ではないのだが、だからといって何か異常があるにもかかわらず、普段の感覚で超能力を使っていざという時――というのが絶対にないとはいえない。故に俺は定期的に超能力の自己診断を定期的にしているのだが、今回の件――あの泉による刺激――を鑑みて、急遽自らの力の自己診断を行う事にしたのだ。

超能力のチェック自体は実に簡単なもので、最も暴走の危険性が少ない念動力を行使することで、幾つかの項目を計測していく、と言うものだ。勿論いきなりの異世界召喚で、『船』からも逸れた現在、まともな機材が有るわけでも無く、あくまでも俺の個人的な感覚によるものだが。

そうして解った事なのだが、基本的に俺の力が全体的に底上げされていることがわかった。制御能力、干渉強度、干渉範囲、その他諸々。

幸い制御能力まで向上していたために暴走という事は先ず無いだろう。そうであるならば、あの泉から得た力と言うのは俺にとっても万々歳の結果を齎してくれたともいえる。

「……問題は、だ」

昨日の会食に、俺が参加できなかったという点だ。

というのも、先日俺が気分を崩し出席する事ができなかった会食。これは勇者候補達が其々に顔合わせをし、パーティーメンバーを選ぶ為の顔合わせの場であったのだ。

この世界に召喚されたのはあのブレザーの学生一団のように同じ世界から、という人間だけではない。

あの魔法使いのような黒ローブがいると思えば、物語の騎士のような光り輝く鎧を纏った人間も居て、科と思えば筋骨隆々の蛮族の戦死のような男までいた。

そんな人間達が『勇者』というカテゴリに纏められ、互いに協力し合って『魔王』を討伐するという目的に沿って行動することを求められているのだ。

仮に仲間にするとしても、最悪自分ないし信頼できる者の目で確認した人間を選びたいというのは当然の話で、その点から言うと昨日の会食と言うのは結構重要なイベントだったのだ。

まぁ、ブッチャケると……ハブられてる。

そりゃそうだよな! 会食って言ってるのに一人先にその場を後にするなんて、如何考えても後ろめたいことが有るとか空気を読まない奴扱いだよな、俺でもそう思うよっ!!

已むに已まず出席しなかった会食。然しその結果が周囲から孤立してしまうという結果に結びつくのだがら、世の中やっぱり優しくない。


さて、そんな事を考えながら訪れたこの世界の二日目。真っ白な巫女さんらに促される本日の行程は、砦の中に存在する修練場での訓練。

召喚された勇者達の中でも、学生組みのような戦闘技能を後付けする必要のある面子の為の訓練だそうで、あの泉で行なわれた覚醒の儀だかで目覚めた『能力』とやらの行使訓練に加え、どうもあの泉の水を得てから学生組みは身体能力も向上したらしく、その強化された肉体の効率的な使い方というのを、巫女の中でも戦闘技能に優れた巫女さん主導で教わっているのだとか。

他の元々戦闘技能を持っている連中まで訓練場に出てきているところを見ると、身体能力の強化と言うのは全員が経験していることなのだろう。俺の場合肉体よりも精神にかけられた揺さ振りの方に意識を取られていた所為で、あまり自覚はなかった。第一元から林檎くらい握りつぶせる身体だし。

そういうわけで、俺は取り敢えずの能力チェックは済ませているので、こういう公衆の面前で能力を晒す心算はない。いつもの装備を着込んだまま、適当なベンチに座って、彼らの訓練風景を覗いていた。

「おーおー、炎に雷に……ド派手な力を得ちゃってまぁ」

訓練場で轟音を立てる学生組。というのも、あの覚醒の泉で力に目覚めた面々、とりわけ件の学生組はその目覚めた能力と言うのが他の元々戦闘能力を持っている面々に比べて桁違いに強力な力を持っていたのだ。

例えば小さな太陽のような火球を操る奴がいれば、稲妻を身体に纏って凄まじい速度で行動する奴、氷を纏って氷柱をガトリングのように乱射する奴も居れば、回復技能を駆使してアポトーシスを誘発させるなんてエグい殺し技を使う奴もいた。あれって絶対元ネタは何かのマンガの技だよな? というような連中が多数、その漫画っぽい技を実際に運用できるレベルで行使しているのだ。

面白半分に見ている、と言うよりは、敵対した場合の対処法を考える為の見学だったりするのだが、その辺りを察されないように半分居眠り交じりにベンチに座っているのだ。……別に日差しが気持ち良いから本気で眠いとかそんなわけではない。断じて。

「然し、一体どんな理屈であんな力を得てるんだか……」

「この世界の魔法」

――瞬間、慌ててその場から飛び起きる。

超能力に目覚めてから鋭くなった俺の超感覚。それに察知されずに近付かれた……? 俺の超感覚の網を抜けられる人間と言うと、大抵敵味方問わずにとんでもない人間だった場合が多い。

油断していた自分を内心で戒めつつ、其処に立つ小柄な黒ローブに視線を向ける。

と、そんな俺の視線の先、小柄な黒ローブは俺が座っていたベンチの空きスペースにちょこんと腰を落ち着けて。……なんだか警戒している俺がバカみたいだ。敵意は無いと判断して、小さく息を吐いて緊張をほぐし、再びベンチに腰掛ける。

「この世界の魔法?」

「この世界の魔法の理屈は、簡単に言ってしまえば精霊魔法。世界の運行を司る精霊に嘆願し、その力を借り受けることで世界に存在する現象を過程を短縮して現象として発露させるというもの」

「……つまりは、火の精霊だとか氷の精霊だとかが居て、それに力を借りてるってことか?」

「そう」

頷く黒ローブ。ローブでくぐもっていて少し聞き取り辛いが、多分女性かな?

そんな事を考えながら再び視線を訓練場に向ける。……確かに、あの訓練場で猛威を振るっている学生組の力は、自然現象で説明できるものしか無いが……。

「いや、それじゃあの治癒能力はなんだ?」

「あれは命の精霊」

……そんなのも存在するのね。でもそれって自然現象なんだろうか? いやまぁ、生物が存在するのも世界の摂理って言うなら、そんな精霊が存在するのも道理なのかもしれないが。

「あの目覚めの泉の持つ高濃度のマナ、コレが其々の持つ素質を強制的に覚醒させる揺さ振りを与えた。この世界の魔法も、一般的な物を言うならば火の玉を飛ばしたり、風の刃を飛ばす程度の物。だというのに、彼らの術は明らかに同系統の力を行使しているにも拘らず、その規模が桁違い。そして何よりも興味深いのはその運用法。まるで体系立って鍛えられた術の様でもある。あれも泉の効果であるとするのならば、とても興味深い」

「ぃやー、ありゃそういうのじゃ無いと思うんだけどな」

まぁ、確かに練りこまれた運用方法ではあるのだろう。漫画の中とかで。

恐るべきは、漫画の技を実戦で運用しようとする学生連中か、その漫画の技を実際に使えるようにしてしまったこの世界か。

そんな事を考えていると、ふと気配を感じて隣を向く。

「私、レニエス・ネツァク」

「お、おぅ。俺はザインだ」

「私とパーティーを組んでほしい」

「おぅっ?!」

唐突に名乗を上げた黒ローブ――ネツァクに咄嗟に名乗り返したのだが、続けて更に唐突に申し込まれたパーティーへのお誘いに思わず奇妙な声を漏らしてしまった。

「えっと、ネツァク?」

「レニエスでいい。ネツァクは称号」

「それじゃ、レニエス。パーティーって、あのパーティーだよな、魔族退治の?」

頷く黒ローブのレニエス。だが、何で急に? 確かに俺は未だパーティーを組んでも居ない、というか孤立してしまっているので、お誘いとしては有り難いのだが。

「何で俺なんだ? 他にもパーティーを組んでくれそうな奴なんて幾らでも居るだろうに」

「一つは、私が小さいから」

「小柄だから力も無いだろうって? でもレニエスはその、見た目からするといかにもな魔法使いっぽいよな?」

「私は魔導師」

はい魔導師頂きましたー、ではなくて。

このレニエス、確かに小柄で身長は150センチも有るか無いか、といったところだろう。だがしかし、レニエスはついさっき、俺の傍に忍び寄るなんて事を見事にやってのけたのだ。少なくとも多少の戦闘経験は有ると見て間違いないだろう。

「二つは、あなた。会食に出てなかった所為で孤立してる。最低3人は必須だから」

「あぁ、まぁ確かに」

そうだ。確かに、勇者をするにしてもしないにしても、この砦から出るには先ず最低三人のパーティーを組む必要がある。つまり孤立している俺と言う存在は彼女にとって誘いやすい存在だったのだろう。

「最後に――私は勇者をやる気が無い」

――アナタもだろう。そう続けたレニエスに、チラリと視線を向ける。

「巫女達を懐疑的な目で見ていた『勇者』は思いのほか少ない。警戒心があって、尚且つフリーだったのはアナタだけ」

「……あの騎士みたいなのとか戦士みたいなのも警戒はしてたみたいだけど?」

「巫女の話を鵜呑みにしてる時点で駄目」

あー、まぁ確かに質問の返答に『そんなモノか』みたいな顔で頷いてたしなぁ。

「……ザインはまともに勇者をする心算はある?」

「無いな。寧ろ何で俺を拉致した連中の希望通りに動かなきゃ成らんのやら」

流石にこんな話を他に聞かれるのは不味いという事をレニエスも理解しているのだろう。小声でそう続けたレニエスにそう返すと、向うも小さく頭を縦にコクコクと振っていた。

「でも、ならレニエスはどうするんだ? 勇者をしてご機嫌取りでもしてなきゃ、帰る手段がどうなるかわからないだろう?」

「最悪自分で研究する。でも、私は精霊が居る土地なら何処にでも住める。ザインは?」

「あぁ、移住も視野に入れてるのか――俺の場合はいざとなったら単独で世界を渡って逃げられるからな」

そういうと、レニエスの動きがピタリと凍りついた。

「……渡る? 世界を?」

「ああ。元々俺はそうやって世界を渡って旅してたんだよ」

そう、俺の超能力のテレポート、そのちょっとした応用で世界を旅する。そういう視点でみれば、俺の今回の召喚も旅の一環としては面白い味付けではある。何せ召喚だ。召喚獣やら勇者含め、召喚された奴を見たことはあるが、まさか自分が召喚されるハメになるとは夢にも思っていなかった。

「なんで直ぐに逃げない?」

「あー、実はだな、俺は基本的に旅をするときは『船』に乗って旅してるんだが、今回は転移に召喚の割り込みが掛けられた所為で船がどこかに行っちゃっててな」

問題は其処だ。正直に言ってしまえば、俺は今すぐにでもこの世界から離脱することが出来る。あの泉の所為で力を増した今なら尚簡単にそれができるだろう。

だが俺が転移したときに、『船』の自動追跡機能が正常に稼動してくれるという保障は無い。転移時の事故で、高い確率でシステムが停止状態にあるのは予想に容易い。そうなると、次に訪れた世界からの俺は、裸一貫で旅をする必要に迫られてしまうわけだ。

流石にそう簡単に捨てられるような代物でも無いし、捨てたら捨てたであんなオーバーテクノロジーがこの世界に良い影響を及ぼすとはとてもではないが思えない。異世界に逃げるというのは、本当の意味で最終手段なのだ。

……然し、何で俺こんなに色々話してるんだろうか。悪意を感じないから話しやすかったかな?

「興味がある。是非パーティーを組んで欲しい」

「まぁ此方にしても渡りに船だから良いんだけど……俺は勇者としての活動は目晦まし程度にして、本命は『船』を捜すわけなんだけど、それでも良いのか?」

「いい。寧ろその『船』を見てみたい」

興味津々でそういうレニエス。とはいえ、アレは『科学』の極地、SFの産物だ。如何見てもファンタジー出身な彼女に理解できるとは思えないんだけどな。

「それじゃ、後一つ。仲間になるっていうなら、顔ぐらい見せてくれ」

顔も知らないのに仲間も何も無いだろう。そういうと、レニエスは少し戸惑った様子で、然し少ししてそのローブのフード部分に手をやり、パサリと音を立ててそのフードを捲った。

「これでいい?」

「お、おう。それじゃレニエス、よろしく頼む」

「うん、此方こそ、ザイン」

そう言って手を差し出すレニエス。その黒いローブの下から現れたのは、金髪に緑色の瞳をした、驚くほどの美少女だった。



以上が新作の試作案の初稿。

此処から

1.ファンタジーのチート成分減算。

2.1.現代超能力モノ

2.2.現代超能力モノのチート成分減算

な感じに派生して、現在1と2.1.を考えてマス。


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