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技術系研究員 由比川のどかの冒険  作者: 錬金術師まさ
ドリームマシーン 海賊版
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第3話.ユメのなかへ

 フォーマルハウトが沈んだお陰で、私たちは何とか生き残りました。

 しかし、邪神の侵入を許したアカが、そのまま意識不明になってしまいました。


「外的な損傷なし、ハードウェア、OS、アプリケーションどれも損傷はない。正常そのものだ。強いて言うならば夢を見ている状態だな」


 最悪の状態は回避できていることが分かって一安心です。

 しかし...


「夢...ですか?」

「あくまで最も近い状態を表現して言ったに過ぎん。そもそも夢というのは、起きている間に溜め込んだ情報を整理するときに脳が見せる幻の様なものだ。今回、君のアカは、一瞬ではあるが邪神とつながった。その時に流れ込んだ莫大な情報量を整理するために眠っているかもしれない」

「なら直ぐに起きるんですよね?心配ないですよね?」

「とは、限らんだろう。夢の世界は我々にとっても未知の領域だ。夢の世界を活動拠点にしている邪神も居ると聞く。安心はできないだろう」

「な、なんとか成らないんですか?」


 ことの重大さが身にしみ始める。私が不用意に力場なんて使わせたばっかりに...


「落ち着け。我々には『銀の鍵』があるだろう」


 『銀の鍵』こと、虹色の不定形体を見てニコラテスラが言う。

 テーブルの上でぷにぷに震えている虹色の不定形物体は、『わたしをたべます?』みたいな感じで擦り寄ってきます。

 いや、確かに一度は頂きましたけど、夢の中の話ですし、それにこんだけ懐かれると...

 しかし、この子のどこが鍵なんだろう?


 そう思いながら、ふるふると震える虹色の不定形体を見ていると、不意に伸びたと思ったらすごい勢いで体をねじり始め、一個の鍵になって転がりました。

 つんつんと指先でつついてみます。冷たい金属の感触がします。


「これ、大丈夫ですか?」

「うむ。大事無いと思うが、旅立つ前に皆に状況を説明しなければならないだぞ」


 騒ぎを聞きつけて集まってきたにみんなに事情を話す。

 どうやら騒ぎの最中はどうやってもドアがあかなかったらしく、ヴェルナーなど半泣き状態で抱きついてきた。

 正直、駄肉が『ぷにっ』とあたって不愉快なのですが、今はそんなことを言ってられません。

 簡単に起こった事とアカの夢に侵入する計画について話すと、案の定、みんなついて来たいと言い張ります。


「その『銀の鍵』自体、罠かもしれないだろ」


 目を赤く晴らしたヴェルナーが言う。まあ、そうゆう考え方もありますよね。


「ヴェルナーが懸念を持つのももっともです。でも、これはパー子がくれたものなので、そこは疑っていません。おそらく私が行くべき何かがあるのだと思いまよ」

「じゃあ、私を連れて行って」


 それより、私が夢に旅立っている間、こっちの世界でのごたごた、主に部長への言い訳ですが、をしてくれる人が要ります。


「...というわけなの。出来ればこっちに残って、その辺りを助けて欲しいんだけど...」


 説明を静かに聞いていたヴェルナーは、瞳を輝かせて頷く。


「のどかを助けられるのは私だけなんだね。私がこっちののどかの全てを引き受けるから、安心して行ってきて」


 いや、全ては任せていないけど...ヘルプ光線をニコラテスラに出すと『任せておけ』って感じで頷いた。




 アカの夢への侵入は、私は『銀の鍵』を使って、アオちゃんとかなたちゃんは、ネットワーク経由で直接アカと接続することにしました。

 方法が違うので、着く場所が違うかもしれないけど、仕方ないでしょう。


「じゃあ、みんなおやすみなさい」


 ベットに潜り、銀の鍵を握り締めると何処かで、『カチリ』という音が聞こえ、途端私の目の前に見知らぬ荒地が広がる。

 目の前には、見知ったパープルの髪の少女が待っていた。


「パー子!やっぱり迎えに来てくれたんですね。ほかの二人はどうしたか知りませんか?」


 走り寄ってきたパー子は、飛び上がると『ぺちっ』っと触れるような強さで私の頬を叩いた。


「どんだけ...どんだけ心配させれば気が済むんだよ!」

「パー子...」


 ぽろぽろと流れない筈の涙がパー子の頬を這っている。


「のどかちゃんは、邪神を甘く見すぎなんだよ!一つ間違えば命だけでなく魂までも持って行ってしまう奴らなんだよ!」


嗚咽で声を詰まらせながら、抗議するパー子。


「そうなったら、もう二度と...二度と....うえぇぇぇん」


 近くに寄って、パー子を抱きしめながらつぶやく。


「ごめんね。心配かけて。別に甘く見て何かいませんよ。何故だかそう言う目に最近よく合うから慣れてきたけど...」

「ひっく、ひっく...だからその慣れが危険なんだよ。相手は『生ける炎』クトゥグアだよ。全く生きているだけで奇跡なんだよ」

「でも助かったでしょ。私がずる賢さで邪神に遅れを取るとでも思っているのですか?」


 元気づけるため、ちょっとおどけて答える。


「思わないよ。全く無茶ばっかりして....」


 泣きはらした目を隠すように、ぷいっと向こうを向いたパー子。


「...でも、ありがとう。妹を助けてくれて。うれしかった」


 後ろから抱きしめてパープルの髪に顔をうずめる。


「いつからそんなこのツンデレになったんですか?バカですね。貴方もあの子達も私の大事な友達です。何があっても助けますよ」


 黙ってうなずくパー子。


「それでアカはどうなんですか?全く目覚めてくれないんですけど」


 泣いた後をゴシゴシこすりながら、こちらを向いて答える。


「のどかちゃんのお陰で、身体のほうは無事だったんだ。精神もこの幻夢境のどこかで、きっと元気でいるはずだよ。場所は判らないけど調べる方法はあるから任せておいて」

「じゃあ、後は探し出すだけですね」


 もう一つ、心に引っかかっている問題を口にしてみる。


「パー子、アカが言っていた胸の辺りにできた熱いモノについて心当たり無いですか?」

「多分、それはコアだよ」


 パー子は自分の胸のあたりをさして言う。


「のどかちゃん。私のエネルギー源がここにあるコアだってことは言った事あるよね。このコアのエネルギー源で何だか判る?」

「確か一個で人類の使っているエネルギーを全て生み出しちゃえるんですよね。普通に考えたらありえないけど対消滅とか?」


 SFの中でしか聞いたことがないエネルギー源を言ってみます。


「確かに対消滅でもエネルギーは発生できるけど、こんなに小さくはならないな。対消滅で発生するγ線もバカにならないし...実は、コアのエネルギー源は邪神なんだよ」


 結構、ぶっ飛んだ推測を立ててみたのですが、答えは更に斜め向こうにあった様です。

 邪神ってエネルギー源なんですか?


「このコアは邪神の力を掠め取ってエネルギー源にしているんだ。だから枯渇もしなければ放射能も出さない。そして私達のコアには邪神の影響を受けないようにプロテクトがかけられている。でも、極たまに自然にコアが生成してしまう場合があるんだ。そうゆうコアはプロテクトがかかっていないから、邪神の影響をまともに受ける」


 つまり、それって...アカに...

 私の推測を肯定するように頷くパー子。


「アカに天然のコアが出来かけいる。そして、そのコアはクトゥグァに繋がりかかっているってことなんだよ」

「まいったな。どうやら上位サーバー群の中でも主神クラスの個人サーバーに入っているらしくて、細かいところは弾かれちゃうよ」

『You don't have permission to access』が出ている端末画面を悔しそうに見ています。

「何とかアクセスする方法は無いんですか?」

 ちょっと、考えていたパー子は笑いながら言った。

「のどかちゃん向けの方法があるけど、やる?」


次回「ドリームマシーン海賊版 第4話 ソトなる図書館」

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