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技術系研究員 由比川のどかの冒険  作者: 錬金術師まさ
銀の鍵英雄伝説 特別編
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章間.にゃるちゃんとハスターさん

 『銀の鍵英雄伝説』が終了し、夢から覚めばかりになって、少し問題が発生しました。

 にゃるちゃんは私たちを『無謀の神』さんの『銀の鍵』で覚醒させるつもりでした。

 しかし、ゲームはドローで終わったため『銀の鍵』は入手できていません。


 仕方がないので、私の中にいる『銀の鍵』さんに働いてもらうことになりました。

 『銀の鍵』さんは、傷を中から塞いでいるので『はーい』と出てこられては困ります。

 そこで、取り出しても構わないだけ、にゃるちゃんが私の中から集める事になりました。


「のどかさんの中で、私の指が『くちゅくちゅ』ってします。『もっとぉ』とかせがんでも良いんですよ?」

「...それ以上言うと、セクハラ認定しますよ」


 なぜ、一言一言がセクハラ発言なんでしょう。


「こら、ニャルラトホテプ。のどか殿が迷惑されているではないか」


 ハスターさんにそう言われたにゃるちゃんが私を見つめます。


「迷惑...私、迷惑なんですか?」


 瞳に涙が浮かんで、背後にキラキラエフェクトが掛かります。

 引く発言が多いのですが、こういう目で見られると邪険にできません。

 弱い私が恨めしい。


「いえ、決してそんなことは」

「ですよね。私とのどかさんとは相思相愛のバカップルですものね」


 わー、自分でバカップルっていう人、始めてみた。


「バカを言っていないで準備はできたのか?」

「バカっていう人がばかなんですぅ。準備なんて必要ありませんよ」


 そのまま私の胸に手をついたにゃるちゃんは、一気に肩まで突き入れます。


「ちょっと、にゃるちゃんっ」


 いきなりの行動にびっくりしますが、痛みもありません。

 にゃるちゃんの指が中を漁っていて、ちょっとくすぐったいだけです。


「おっと、動かないでくださいね。もう済みますから」


 にゃるちゃんが腕を引き抜くと、小さくなった『銀の鍵』さんが握られていました。


「ケガが治っていない所は、そのまま残しましたが痛いところはありませんか」


 にゃるちゃんが心配そうに訪ねます。


「うーん。特にないと思います」

「そうですか。念のためこの子は、のどかさんにお預けしますので、使用上の注意をよく読み用法、用量を守り正しくお使い下さい」


 そう言うとにゃるちゃんは『銀の鍵』さんを突っつきます。


「さっさと起きないと、冒涜的なフードプロセッサーに突っ込んでハンバーグのタネにしてしまいますよ」


『銀の鍵』さんは『ぷるぷるっ』と伸び上がると、にゃるちゃんの足元に降ります。

『銀の鍵』さんは、私の方に這い寄ってきます。


「ぷるぷる(食べます?)」

「食べませんて」

「ぷるぷる(では、帰ります?)」

「是非、そうしたいのですが」


 いつもの会話の後、『銀の鍵』さんが伸び上がるように体を細めます。


「ちょっと、まったぁぁ」


 それをにゃるちゃんが押しとどめます。


「貴女なんでそっちに居るんですか?」

「何故って、帰るためだが?」


 ハスターさんは、心底不思議そうな顔をしている。


「勘弁してくれ。主じゃないと決済できない書類が山積みで、仕事まわんねー」

「そっ、そうなのか。では、イタクァに決裁権を...」

「貴女も往生際の悪い女ですね。さっさとこっちに来なさいよ」


 にゃるちゃんは、そう言ってハスターさんを引っ張って連れて行こうとする。

 ハスターさんは、まるで子犬の様に引きずられまいと抵抗している。


「のどかどのぉ」


 そう言って、私の方を見るハスターさんの目には涙が浮かんでいる。

 だから、そういう目に弱いんですよ、私は。

 イタクァくんを見ると『ダメダメ』と✖を出しています。

 ここは、心を鬼にして説得することにします。


「ハスターさん。ここは一度戻ってお仕事を片付けた方がいいですよ」

「うぅっ、のどか殿のいけずぅ...」


 ハスターさんは、にゃるちゃんに引きずられていきました。


『銀の鍵』さんが、伸び上がってツイストを再開します。

 そして、硬質の輝きをもった銀色の鍵になったと思うと『カチリ』という音が響きました。

 周りの景色が薄れて、私達は覚醒しました。




 のどかさんが覚醒した後には、私たち邪神組が残りました。


「ニャルラトホテプ、お前にしてはずいぶんとあっさりしていたな」


 図々しくも、のどかさんと戻るつもりでいたハスターは、恨みがましく私を見ています。


 のどかさんの中には、私の分身である『銀の鍵』が残っています。

 と言う事は、24時間のどかさんと一緒、一心同体と言う事です。

 別に私が幻夢境にいたところで、この事実は変わりません。


 しかし、この素晴らしいアドバンテージを知られるわけにはいきません。


 建前として(残念ですが、私が彼方に行きますと周囲に悪影響が出ますからね。仕方ない事です)などと支障な事を言っておきます。


 本音はもちろん「『銀の鍵』でお風呂場からトイレまで、のどかさんの様子は見たい放題です。そうだ、録画もしましょう、そうしましょう」です。


「...お前、本音と建前が逆になってるぞ」


 にゃんですとっ。


「こっ、これは成り行き上しかたなくです。私としても、のどかさんを24時間ストーキングするなんて、ハアハアな事は、本意ではありません」

「ほう。ならば中継終了にしてやる」


 ハスターがそういうと、『銀の鍵』からの通信が途絶えた。


「にゃんですか! 何をしたんですかっ」

「なに、ニャルラトホテプ殿がご苦労されている様なので力をお貸ししただけだ」


 まさか、のどかさんとの契約を使って『銀の鍵』からの通信を妨害しているのか?


「いや、同じ邪神同士ではないか。感謝などいらぬよ。さて、私はイタクァが待っているので失礼するよ」


 そう言うと、一陣の風が吹いてハスターの姿が掻き消える。


「さあ、こっちも後かたずけの仕事が待ってんだから戻るぞ」


 パー子さんが何か言っているが、そんなことはどうでも良い。


「パー子さん!」

「なんだよ」

「『無謀の神』を探しなさい。今すぐ」


 こうなった以上、あんにゃろめを捕まえて『銀の鍵』を巻き上げるしかありません。

 そうして、現実界に行って寿退社です。

 それこそジャスティス。


「何がジャスティスだ。いい加減仕事しろ」

「有休が10万年ほど残ってますから、寿退社前に消化します。あんにゃろめを探しなさい。上司命令!」

「有給とるって言っておいて、上司命令とか言うなよな」


 ブツブツ言っているパー子さんですが、本心はのどかさんを追いたいはずです。

 のどか同盟の私には良く判りますよ。


「さぁ、同志パー子。のどかさんを追いますよ」

「何時、そんな怪しい同盟を作ったんだよ」

「いいから掛け声、のどかさん、L・O・V・E」

「お~」


 その日、幻夢境では名状しがたい掛け声が一日中響いていました。

以上で、『冒険篇』終了です。


『日常編』の一章を2012.09.15にアップしていますので1年弱このシリーズを書いています。書き始めた当初は、訳も分からず書いていたので、意味不だったり誤字・脱字が残ったりしています。連載中も気付いたところでちょくちょく直していたのですが、この際徹底して見直すことにしました。


 こちらのシリーズは少し更新をお休みして、ここまでのお話を見直す作業を行います。作業は、大体1ヶ月を見込んでいます。


 次のお話でお会いできることを楽しみにしながら。

                      錬金術師まさ。 

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