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技術系研究員 由比川のどかの冒険  作者: 錬金術師まさ
銀の鍵英雄伝説 特別編
31/36

第6話.ヴェルナーさん、やりすぎです

「敵艦隊、主砲、射程距離まで約40秒。メインスクリーンに投影します」


 あの何処かに夫、ダゴンの宿敵である『由比川のどか』が居るはず。

 あの者に関わってから、夫の様子が変わってしまった。

 夫はライバルだと言うが、あのような貧弱(主に胸)な娘が好敵手とは思えない。


「何を考えているかは知らないが、私をあのヒトと同じと考えないことね」


 夫、ダゴンの汚名をそそぐためにも負けるわけにはいかない。

 ハイドラは決意を胸にスクリーンをにらみつけた。



 一方、のどかから分艦隊の指揮権を委譲されたヴェルナーは、ハスターの協力を得るべく、作戦説明を行っていた。


「...とまあ、これが私のプランだがいけそうか?」


 この作戦の肝は、ハスターの空間把握能力だ。

 黙って、ヴェルナーの話を聞いていたハスターが、微妙な顔をして答える。


「作戦自体は問題ない。途中で失敗したとしても時間稼ぎにはなるし、その場合の脱出方法もよく考えられている。だが...」


 どういったら良いか、迷っている顔だ。

 まぁ、その気持ちはわからないわけでもない。


「だが、のどか殿が必要以上に恐れられるのではないか?」

「君が言葉を選んで話している事はよく分かっているが、ここは本音で語り合おう」


 ハスターの眼をしっかり見つめながら言葉を続ける。


「私は、これ以上、のどかに他の女を近づけたくないんだ。ニャルラトホテプにまで『にゃるちゃん』などと愛称をつけてしまって。余計なフラグはこっちでへし折らないとライバルが増えるばかりだ」


 ハスターの目の色が変わってくる。

 全身から炎の様なやる気を感じる。


「わかった。のどか殿を慰める役は我らだけで十分だ。風の主神の名に懸けて、必ずやこの作戦を成功に導いてくれようぞ」


 がっちり握手を交わすその瞳には、決意の炎が揺らめいていた。



「敵艦隊を目標宙域に確認、機雷群をはさんで我が艦隊と対峙します」


 ハイドラの脳裏に、フォーマルハウトでダゴンを苦しめたという機雷作戦がよぎる。


「小細工が好きな娘の様だな。我が艦隊は、鶴羽陣形にて敵艦隊に接近、遠距離ミサイルで敵艦隊をいぶり出す。近づきすぎて妙な策にのる必要はない」


 駆逐艦によるミサイル攻撃で、機雷群を少しづつ削っていく。

 このまま敵艦隊へ攻撃対象を移そうとしたとき、その報告は入った。


「ハイドラ様! レーダーに異常が発生しています」

「なにっ」


 ハイドラの目の前でレーダーが霞がかり、ついにはホワイトアウトしてしまった。


「慌てるな。有視界に切り替えよ」


 レーダーから有視界に切り替わると、周囲にキラキラした破片が飛び交うのが見える


「何だ? あのキラキラしたものは...」


 それは、金属の破片だった。

 正面の機雷群から広がった金属片がハイドラの艦隊を包み込もうとしていた。


「分析完了、どうやら薄いアルミ片を使ったチャフの様です。レーダーが反射・攪乱されています」


 そんなもの何時...まさか...


「有視界班から分析来ました。先ほど攻撃した機雷群はチャフを擬態したものの様です」


(くっ、我々にワザと撃たせてチャフをばら撒いたのか...)


 チャフによる妨害の網はハイドラ艦隊を覆い、宇宙空間に迷路を形成し始めた。


「指令! 敵艦隊、どこにもいません」


 こちらの混乱に乗じて、チャフの雲の中に隠れたらしい。


「慌てるな。レーダーが使えないのは相手も同じだ。密集陣形をとって後退。全方位を警戒せよ。やつらは必ずどこかに潜んでいるはずだ」


 まるで密閉された迷宮に押し込められた様に、息苦しさを感じた。



「敵が密集体系をとり始めた。一度後退して体制を立て直すつもりだろう」


 ハスターが示してくれる情報で、こちらからは敵艦隊の様子が筒抜けになっている。


「密集してくれたのは好都合だ。長距離雷撃による殲滅戦に移る」


 ハスターの空間把握能力でディスプレー上に敵艦隊の詳細な位置が映し出される。


「アオ。艦隊全体に敵艦隊情報を共有してくれ」

「了解です」


 ディスプレーに表示された敵艦隊情報に併せて、攻撃パターンを入力していく。

 それを艦隊全体に共有していたアオが奇妙な顔でこちらを振り向く。


「ヴェルナー様、なぜ攻撃の間に10秒のお休みがあるんですか?」


 やっぱり気がついたか。ニヤッと笑って解説を始める。


「あぁ、それは心理学の問題だ」



「今の攻撃で巡洋艦5隻航行不能、戦艦3隻中破しました」

「あ、慌てるな。全体としては大した被害ではない。損壊損傷部分の応急修理と負傷者の...」

「敵攻撃予測時間まで、5,4,3,2,1,0」


『ゴゴン』


「戦艦4隻大破。周囲の巡洋艦も巻き込まれました」


(くっ、由比川のどか、何という陰湿な手を使ってくるのだ)


 チャフの迷宮に閉じこめられて一方的に攻撃を受けている。

 レーダーの利かない中で、この正確な攻撃はおそらく風の主神たるハスターの力だろう。

 更に、一定のリズムの雷撃でこちらを嬲りに掛かっている。


(まさか主神が、我が艦隊の相手に出てくるとは...)


 状況は更に悪化していき、ブリッジのクルーも浮足立っている。


「無理だ...このままでは皆なぶり殺しにされてしまう。降参しましょう」

「だが、かの女はダゴン様をみて『おいしそう』と言ったらしい。生きたまま喰われるぞ」


 完全に平常心を失い始めたクルーを叱咤する。


「しっ、静まれ。これはあくまでゲームだ。命の保証はされておる」

「ですが、相手はあの『魔人』です。そのようなルールを守るとは思えません」


 一瞬、由比川のどか(想像図)に生きたまま喰われる自分の姿が脳裏に浮かぶ。

 通常なら一笑に伏すその状況が、妙なリアリティをもって私の心臓を鷲掴みにする。


「とっ、突破だ! このチャフの迷宮を突破すれば事態は好転する。紡錘陣形により前方のチャフの最も薄い部分を突き破れ」


 混乱していた我が艦隊は、前方のチャフのもっとも薄い部分に突入していく。


 しかし、その向こうには浮遊機雷の海が待っていた。


「ぜっ、全艦停止。それ以上進むな」


 だが、停止し損ねた何艦かが浮遊気機雷の餌食になる。

 完全に恐慌状態に陥ったハイドラ艦隊が散り散りになり、各個撃破のいい的になる。

 気が付くと旗艦の他、数隻を残すだけに撃ち減らされていた。


「まさか、こんな事が...」


 『魔人』由比川のどかの名を決定づける瞬間であった。

「レーダー攪乱チャフの展開を確認。別働隊が作戦行動に入った模様です。チャフの雲が晴れるまで、暫くあちらとは連絡が取れません」


 ヴェルナーが指揮する別働隊が作戦行動に入ったようです。


 出発する前に作戦を聞いたのでずか、成功すれば此方にほとんど被害がなく敵将も捕獲出来るでしょう。


 ヴェルナーにも出来ればで敵艦長を捕虜にして欲しいとお願いしました。


 まぁ、都合のいいお願いで、成功しなくてもいいとは言っておきましたが、何だか自信満々に出て行くとき『成功したら10ギュッと』などと言う約束をさせられてしまいました。


 妙な単位を新設しないで欲しいものです。


銀〇伝 特別変× 第7話 のどかさん、よくできました

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