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技術系研究員 由比川のどかの冒険  作者: 錬金術師まさ
銀の鍵英雄伝説 特別編
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第2話.始まりの会戦

「このゲームの艦隊戦は、相手が戦闘不能、降伏、または、逃走する事で勝利になります」


 復活したニャルラトホテプさんが、チュートリアルを開始しました。

 私の艦隊は、帝国軍の圧制に反抗する革命軍という設定です。

 実際に船を動かしているのは風の眷属の皆さんです。

 風の眷属さんたちは、邪神さんの中では戦闘力低めだそうです。


「のどか殿すまない。我々は元々争いを好まないのだ」


 ハスターさんが、すまなさそうにしています。


「大丈夫ですよ。それでも何とか勝つ方法を考えるのが司令官のお仕事ですから」


 それを聞いていたニャルラトホテプさんが説明を追加しました。


「このゲームでは、大砲の直撃を受けても消し飛ぶのはSAN値だけです」

「それは、あまり安心材料になりませんね」


 ひと通りのチュートリアルを受けた後、艦隊と旗艦の準備を開始します。


「かなたちゃん操船を、アオちゃんはレーダーと通信、アカは火器管制を掌握して下さい」

「了解です」「お任せください」「まかされた」


 3つの方向から、それぞれの返事が返ってきたことを確認して、椅子に座り直します。

 それを、見計らったかのようにウェルナーとハスターさんが近寄ってきました。


「のどか、ちょっと良いか?」

「なんです?」

「ハスターと話していたんだが、この世界について腑に落ちない所がある」

「『銀の鍵』さんが私の中にあるのに、なぜ幻夢境への扉が開いたか...ですか?」


 私も感じていた違和感を口にします。


「やはり気づいていたか。ハスターが言うには、『銀の鍵』の持ち主であるニャルラトホテプというのは、複数存在する邪神なんだ。そしてソレゾレが、幻夢境に干渉できるアイテムを持っている。ということは...」

「ニャルラトホテプさん以外のニャルラトホテプさんが絡んでいる可能性が高いと...」

「そうだ。こちらのニャルラトホテプは基本的にのどか殿に甘かった。しかし、今回はそうはいかないだろう」


 ヴェルナーの言葉を受けてハスターさんが答える。


「というと『ニャルラトホテプさん』って呼び方もだめですね」

「気になる所は、そこかっ」


 ヴェルナーの声に気が付いたのか、ニャルラトホテプさんが近づいてくる。


「なんですか? 私の噂をしている気配がしましたよ。のどかさんならば、スリーサイズでも何でも教えちゃいますよ」

「ニャルラトホテプさんがお二人いる様なので、色々お聞きしたいと話していたんですよ」


 ニャルラトホテプさんの額に汗が流れるのを見逃しません。


「なぜ、それを...」

「『銀の鍵』さんが私の中に有るのに私たちは幻夢境に来ている。つまり、私の中にある『銀の鍵』以外の『銀の鍵』がある事を示していますよね。『銀の鍵』はニャルラトホテプさんの専用アイテムなのでしょ? だから... 」


 先ほどまで、満面の笑みを浮かべていたニャルラトホテプさんの顔から笑みが消え、邪神さんとしての凄みが増したかに思えます。


「だから、もう一人のニャルラトホテプですか...流石はのどかさんです。で、このニャルラトホテプに何を聞きたいと?」

「にゃるちゃん」

「は?」

「『にゃるちゃん』とお呼びしても良いかお聞きしようかと...だめですか?」

「だっ、駄目なはず無いじゃないですかっ。是非、『にゃるちゃん』とお呼びください」


 ニャルラトホテプさん、改め、にゃるちゃんは、『にゃるちゃん。にゃるちゃんかぁ..くふふっ』などと呟きながら、くねくねしています。

 どうやら、気に入ってもらえたみたいです。

 先ほど感じた凄みは完全に消えて、何を聞いても大丈夫そうです。


「では、にゃるちゃん。今回の件、少しお話ししてもいいですか?」

「はいぃぃぃ。なぁんでも、お聞きください」


 にゃるちゃんから、根ほり葉ほり今回の件を聞いている私の耳に、ヴェルナーとハスターさんのひそひそ話が聞こえてきた。


(なぁ、ハスター)

(なんです?)

(私、たまにのどかがとんでもない悪女に思える時が有るんだが...)

(奇遇ですね、私もです。それでも私は、のどか殿を信じる)

(それは、私も同じだ)


 ひどいな。

 悪女って何ですか。

 私は、少しでも人間関係をスムーズにしようとしているだけですよ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 戦闘準備が終わった私たちの艦隊は、戦域であるフォーマルハウトにやってきました。

 相手は、フォーマルハウトの恒星を背にして布陣しています。


「のどかちゃん。あれ、暑くないのかな?」

「こちらが後ろに回り込むのを防ぐとはいえ、あれは暑いでしようね」


 さて、どう戦うかが問題です。

 私の艦隊を構成している兵隊さんは素人集団といってもいい烏合の衆です。

 今後の戦いを有利に進めるため、初戦で大勝ちして勢いにのせたいところです。


「アオちゃん。相手の船団を誰が指揮しているか分かりますか?」

「...データ出ました。クトゥルフ陣営のダゴンさんが指揮を取っているみたいです」


 にゃるちゃんが胸を張っています。


「このゲームは、幻夢郷にいる全ての邪神の協力を得ています。そこらのオンラインゲームと同じにされては困ります」

「ダゴンさんですか...」


 なかなかの難敵ですが、それならそれで策は有ります。


「かなたちゃん、相手の射程ぎりぎりまで近づいて一時停止。アカ、一時停止後、浮遊機雷の散布を開始して下さい」

「そんな目の前で機雷敷設したら敷設中に敵に攻撃されちゃうよ」

「心配なら無人の輸送艦をあちらから撃ちやすいように横向きに置いてください。それで、絶対に邪魔は入りませんよ」


 射程限界まで近づいて、無人の輸送艦を盾に機雷敷設を開始します。

 思った通りダゴンさんは、こちらの妨害をしてくる気配がありません。

 機雷敷設を終えたアカが戻ってきます。


「のどかちゃん、機雷敷設終わったよ」

「ご苦労様。何でうまくいったか不思議そうですね」

「うん。なんで?」

「ダゴンさんは、ルルイエでの海戦の時、私の罠に引っかかっています。だから、私のやることに対して過敏になっていると思うんですよ。そんな私が、いかにも撃って欲しそうに輸送艦や機雷を敷設し始めたらどう思うでしょう?」


「なるほどね。何かあると思ってよってこないか...でも、機雷の場所はバレバレだし役に立たないんじゃ無いの?」

「それは大丈夫です。戦闘が始まったら機雷をあちら側に近づけられますか?」

「ゆっくりならばできるよ」

「それで十分です。では戦闘開始といきましょう」


 こうして、チュートリアル用会戦『フォーマルハウトの戦い』が開始しました。

ダゴンさんの艦隊は、フォーマルハウトを背にして密集体型を取っており、こちらが背面をとれなくしています。


 それに対して、私たちの艦隊は機雷群を盾にして進軍を開始します。


「機雷群をダゴンさん側に押し出しながら、半月陣を構築しつつ全艦前進。遠距離ミサイルで敵を牽制しつつ空戦隊を展開」


 レーダーに映るダゴンさんの艦隊が、此方に呼応して陣形変化していく様子が見えます。


「そうか。半月陣型は中央突破されやすい。それを防ぐための機雷群を敷いたわけか」


 ヴェルナーが関心したような声を上げる。


「まぁ、そんだけでは無いんですけどね」


銀○伝 特別変× 第3話 フォーマルハウトの戦い

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