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技術系研究員 由比川のどかの冒険  作者: 錬金術師まさ
銀の鍵英雄伝説 特別編
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第1話.由比川のどかの英雄伝説

 気がつくと、ディスプレーやらボタンやらが、やたら付いた席に座っていました。

 どうやら此処は船、それも宇宙戦艦の艦橋に居るようです。

 私の座っている席が艦長の席、周囲にヴェルナーやハスターさん達の席があります。


「はて...私ってベッドで寝ていたのでは無かったでしょうか?」

「のどかちゃん。これって?」


 それに直ぐには答えずに、ちょっとした実験をしてみます。


 自分の机の端っこのボタン、できるだけ意味の無さそうなものを、細かい項目に分けて確認していきます。


『色、形、動き、表示されているもの...』


 始めは認識できていたものが、指定を細かくしていくと、だんだん曖昧になり、ついには認識できなくなりました。

 まるで『これ以上の設定はありません』と言われている様です。

 この現実とも幻とも区別のつかない感覚には覚えがあります。

 余りに様変わりしているので、俄かには信じがたいですが...


「どうやら、ここは夢、おそらく幻夢境のようですね」


 視線を上げると、目の前の大型ディスプレーに三角や四角のマークがうごめいています。

 BGMに荘厳なオーケストラミュージックが流れていて、私の席のディスプレーにオープニングアニメが開始されます。


『銀の鍵英雄伝説 ONLINE』


 どうやらオンラインゲームのタイトルのようです。

 ...語呂がイマイチですね。 


「『銀の鍵英雄伝説』ですか...語呂が悪くないですか。私なら、略して銀英...」


 そこまで行ったとたん、ヴェルナーとハスターさんの二人掛かりで口を塞がれました。


「むぐっ、何するんですか!」

「何するじゃない!怒られる前にやめとけ」

「すまない。のどか殿の危険を察知して反射的に体が動いてしまったのだ」


 二人は何かに怯えるように周囲を見渡し、特に変わったことが起きていないことを確認すると、ほっとしたように手を離します。


(この話は『禁止事項』なんでしょうか...)


 また口を塞がれるのも嫌なので、略すのは無しにします。

 タイトル下のメニューには『Start』と書かれたボタンが1つ表示されています。


「『スタート意外はさせない』そう仰りたいわけですね」


 そう言う態度に出られると、私としても素直に押すわけには行きません。

 ワザと、違うことをし始めます。


「ぽちっとな」


 ディスプレーのボタンを押すふりをして、横のボタンを押してあげます。

 スタートから切り替わろうとした画面が一瞬乱れて元に戻ります。


「なかなか、面白いですね」


 何度か繰り返して遊んでいると、何処からか『すんすん』とすすり泣く声が聞こえてきました。


「あまり虐めるのも可愛そうですかね」


 放置していたスタートボタンを押すとスクリーンにスペオペの背景っぽい説明が出てきます。


『遥かな未来。その勢力圏を銀河系にまで拡大させた人類は人類統一政府である銀河連...』


 なにやら凝った設定の様ですが...


「長いです」


 コントロールキー(この船、なぜか艦長席にキーボードがついています)を連打してすっ飛ばしてしまいます。

 背景だか何だか知りませんが、導入がやたら長いゲームってありませんか?

 せっかく買ったゲームをやる前に、何分もデモを見せられてたら普通切れますよね。

 プレーする側の気持ちを、ゲーム会社の人ももう少し考えてほしいものです。


「おいっ、とりあえず読んでおいたほうがいいんじゃないか?」


 私の所業にヴェルナーが抗議の声を上げます。


「いいんですよ。ゲーム会社の思惑に乗る必要はありません」


 と言いながらも、アカの方をみると指で小さく、OKマークをしています。

 早送りした導入部分を、きっちり読んでおいてくれたようです。

 長くて鬱陶しいテキストに、重要なヒントが隠されていることも多いので、私がゲームをするときはアカ同席が我が家の常識になっています。


「チュートリアルが有るみたいだけど...」

「では、チュートリアルを..と思いましたが、それは放っておいて、どこかに降りて情報集めでもしましょう...ん?」

「どうした?のどか」

「誰かが転んだ音がしたと思ったんですが...気のせいですよね」


『のどかちゃん。あんまりコイツを虐めるのもどうかと思うよ』


 いつの間にか艦橋の入口に立っていたパー子が指差す先には、膝を抱えて床に『のの字』を書いているニャルラトホテプさんがいました。


「のどかさん酷いです。これはアレですか?『この仕打ちを快感として捉える様になれ』、そう仰っているんですか?」


 すっかり、いじけたご様子のニャルラトホテプさんの髪には、私の送ったカチューシャがとまっていました。


「パー子だけと思って悪ふざけが過ぎました。カチューシャ、使ってくれているんですね。そのエプロンドレスにも、よく似合っていますよ」


 その声に、ニャルラトホテプさんは、伏せていた目をこちらに向けます。


「本当に...本当にそう思います?」

「えぇ、本当によく似合っていますよ」


 それを聞いたニャルラトホテプさんは、華が咲くように見る間に笑顔になりました。


「あはっ、ありがとうございますぅーー。このドレスはぁー、のどささんから頂いたカチューシャに合わせて新調したんですよ」


 ニャルラトホテプさんは、落ち込んでいたのが嘘のように、頬を染めて幸せそうな顔をしています。

 ハスターさんもそうだけど、邪神さんで本当に感情の起伏が激しいですね。

 横で呆れたような顔してその様子を眺めているパー子にも声をかけます。


「パー子もおひさ。リボン似合っていますよ」

「褒めても、何もでないよ」


 そっぽを向いたパー子の髪には、私の贈ったリボンが揺れていました。

「『銀の鍵』さんが私の中にあるのに、なぜ幻夢郷への扉が開いたか?ですか?」


「やはり気づいていたか。でスペアキーの存在の可能性をハスターに聞いてみたんだ。そうしたら一つの可能性にぶつかった」


「『銀の鍵』の持ち主であるニャルラトホテプというのは、複数存在する邪神なんだ。そして其々が、幻夢境に干渉できるアイテムを持っている。ということは...」


「こちらのニャルラトホテプさん以外のニャルラトホテプさんがいる可能性が高いと...」


「そうだ。このニャルラトホテプは基本的にのどか殿に甘かった。しかし、今回はそうはいかないだろう」


銀○伝 特別変× 第2話 始まりの会戦

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