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技術系研究員 由比川のどかの冒険  作者: 錬金術師まさ
フレシット弾 邪神編
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第5話.狙撃者の影

 我が家にハスターさんがやってきて、一ヶ月が経ちました。


 ハスターさんは、フレシット弾の件であちこち飛び回ってます。

『犯人と未だ遭遇できていない』とハスターさんは悔しがっています。

 しかし、自らを囮とするその作戦の性格上、『遭遇=撃たれた』になってしまいます。

 例え、ハスターさんには石ころをぶつけられた程度としても、ひょっとして怪我をするかも知れないので、とっても心配です。


「ハスターさん遅いですね。大丈夫なんでしょうか」

「のどかちゃん心配しすぎだよ。仮にもハスターさんは風の主神だよ。のどかちゃんが考えているよりも、ずっと強いんだからね」


 アカはそう言いますが、家庭的なハスターさんしか見ていないので、保護欲を掻き立てられます。

 何かあれば分かる様に、アオちゃんをお供に付けているのですが落ち着きません。


(次は、私もついていこうかな)


 やきもきしていると、開け放っていた窓から強い風が吹き込んできました。

 それが止むと部屋の真ん中にハスターさんとアオちゃんが現れます。

 そこまでは、いつものことですが、いつもとは違うものが混ざっています。


 ハスターさんを中心に数個のフレシット弾が空中に固定されていました。

 強力な風によって空間にピン止めされている様です。


「脅かしてしまって申し訳ない。移動をしようとした瞬間に狙い打たれたんだ。信管を壊したので危険は無いと思うが...」


 確かに爆発とかの危険性は無さそうですが、何か引っかかります。


(直撃しても効果の無いハスターさんを狙い打った。しかも移動の直前に...油断して当りやすいから? 違う、移動するのは何のため...)


 その意図に気付いて『ぞわっ』と髪の毛が逆立ちます。


「アカ!無線妨害を最大に!アオちゃん、発信機がついていないか調べて!」


 アカが『ヴォン』物理的な音がしそうな勢いで、強度の電波妨害をかける。

 その間にアオちゃんがフレシット弾を凄い勢いで分解しています。

 やがて細かいLEDが点滅しているモジュールが引っ張り出されました。


「このモジュールから超長波が出ています。おそらく追跡用のビーコンが出ていると思われます」


 悪い予感、的中です。


「こっちの場所、ばれたと思う?」

「この周波数ですと、おそらく市レベル以下の絞込みは難しいでしょう。また、通信波の遮断が早かったので敵がビーコンの解析ができていない可能性が大です」

「そう...悪いけどこのフレシット弾全部ばらして通信モジュールを外しちゃってもらえますか?」

「判りました」


 アオちゃんに指示を出しながら、未だ引っかかりが消えません。

 位置の特定が市レベルでは広すぎます。

 こちらの場所を知るには、もっと良い方法があるはずです。

 何でこんな効果のない方法を選択したのでしょう。


「...のどかちゃん」


 おそらく同じ結論に達したアカに向かって頷きます。


「挑発に乗って出て来い。そう仰っているみたいですね」


 このビーコンは、ただの挑発。

 そう結論付けて良さそうです。


「まぁ、こんな挑発されなくても次からは付いていくつもりでいましたけどね」


 まるで悪戯を見咎められた子供のような表情をしたハスターさんと目が合った。


「の、のどか殿。なんとお詫びをしたらいいのか判らないが、大変申し訳ない」


 深々と頭を下げるハスターさんを見て狙撃者のもう一つの意図を理解しました。

 ハスターさんを倒せないなら、押し返してしまえばいい。

 どうやって?

 拠点に居られないようにして。

 このとき狙撃者に対して敵意が湧き上がってくるのを感じました。


「のどか殿?」


 ハスターさんが不安げに私を見ているのに気がついた。


「あ、ハスターさん。大丈夫だからね。私が怒っているのは狙撃者に対してだから...」

「いや、のどか殿が笑っていたので...」

「とっても邪悪な感じでね」


 そうアカが付け足します。

 何だか私の好感度が激減しそうなコメントです。

 反論しようと思いましたが、その前にハスターさんにお話することがあります。


「ハスターさん、お話があります」


 びくっと、身をすくめるハスターさん。


「今回の狙撃者は危険です。この犯人がハスターさんを物理的に傷つけることはできないと私も思います。しかし、彼、又は、彼らの標的は貴女の周りのものに及ぶと思います」

「そ、それでは、私は…」


 不安げなハスターさんを励ます様に、彼女の髪を撫でながら続けます。


「ハスターさん。貴女は私を守ってくれると言いましたね。同じように私も貴女を守ります」


 一瞬嬉しそうな顔をしたハスターさんだが、直ぐに表情が曇った。


「確かにのどか殿に手伝ってもらえれば心強いが、のどか殿が私と行動を共にするには契約が要るんだ」

「契約ですか?良いですよ。ちゃっちゃと契約しちゃいましょうか」

「良いのか?私は邪神なんだよ?のどか殿にどんな影響が出るか分からないんだ」

「私は邪神なんて人は知りません。私が契約するのは優しくて可愛いハスターさんです」

「そ、そうか…」


 急に顔を赤らめて、もじもじし始める。


「そ、それならば、契約をするから服を脱いで欲しい」

「は?」


 血文字で羊皮紙にサインとか想像していた私は、想定外の展開に固まります。


「けっ、契約の為には絆を深めなければならない。わ、わたひは、初めてなので、そっ、その、巧くできないかも知れないが許してほしい」


 そう言って、ハスターさんは、顔を真っ赤にしてにじり寄ってくる。

 私は、その迫力に押されて、ソファーに躓き倒れこむ。


「のどか殿!」


 上から覆いかぶさってくるハスターさんの熱い身体と豊かな駄肉!


(こっこれは、ひょっとして貞操の大ピンチかも!)


 逃げ出そうとしますが、ハスターさんに押さえ込まれて身動きが取れません。


「のどか殿。私頑張るからっ」

「ちょっ、ハスターさん。頑張るって何を...」


 抗議をしようとした途端、唇をふさがれた。


「ちょっ、ハスターさん。やっ止めなさい、んっく...」

「のどか殿ぉ...ちゅっ、ちゅく..」


 柔らかな唇の感触に我を忘れそうになる所を何とか持ちこたえているが、このままでは本当にヤバイです。

 ドール達に救いの手を求めてそっちを見ると、アカが口ぱくで何か言っている。


(がんばれっ、ファイトだ!のどかちゃん)


 って、救う気なしですかっ。

 覚悟を決めかけたときに、意外な所から救いの手が入った。


「ただいまーー。まったく、休みの日もなにもあったモンじゃない...」


 ドア前でフリーズするヴェルナーが見えます。


「あんたたち何をやっているの!!」


 ナイスタイミング!!ヴェルナーが、休日出勤から帰ってきました。


「ヴェルナー、ちょうど良かった。ハスターさんを止めて!!」


 しかし、ヴェルナーの反応は私の想像の斜め向こうを行くものでした。


「のどかの初めては私のものだからっ。ハスターにも、これだけは譲れないっ」

「何で貴女も服を脱いでるんですか!!」


 こちらに混ざろうとするヴェルナーを見た瞬間、私の中で何かが切れました。


「あんたたち、いい加減にしろーーー!」


 気がつくと、ヴェルナーとハスターさんの側頭部を捕まえて打ちすえていた。


『ごっちん』


 その音は、ご町内中に響き渡りました。

「で、どういうことなんですか?判る様に説明してください」


 このまま、正座させているだけでは話が進みません。

 ハスターさんにはハスターさんなりの理由があったはず、そこを聞いてみたいところです。


「私達、邪神が人間と契約を行うには、相手の精を受ける必要があるんだ。身体も心も一つになることで、強い加護を与えることができるようになる...とこれに書いてある」


 ハスターさんは、胸の谷間から古文書を取り出して私に見せます。


次回、フレシット弾邪神編 第7話 契約

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