第4話.憧れと希望と...
えっと...ちゃんとつながっているかな?
ログインもできているし、ユーザーページにもアクセスできてるみたいですね。
こほん。
えっと、私の名前は『かなた』といいます。
さっき、姉さんがやってきて、この「小説家になろう」に2000字程度で好きなことを書く様に言われました。
姉さんが言うには『おとうばんかい』という物で、今回は私の番だそうです。
ちなみに姉さんはサブカルチャ、特にアニメが大好きです。
先ずは、自己紹介ということで、私こと「かなた」は人のパートナーである『テスラドール(c)』なのです。
テスラドールは普通人間のパートナーロボットとして生まれます。
しかし、私は大気圏脱出ロケット『かなた』のロケット管制用と言うちょっと変わった生まれ方をしています。
そういった関係で元々自我のようなものは、あまりありませんでした。
今の自我は、パー姉さん、一番上の姉にハッキングを受けたことによります。
言うならば、パー姉さんは私にとって姉であると同時に母のような存在です。
現在は、ヴェルナー様にお仕えしています。
ヴェルナー様という方は、新進気鋭のロケット博士で、人類初の大気圏脱出ロケット『かなた』開発プロジェクトのリーダーを勤められていた方です。
ヴェルナー様と一緒に、もう一度大気圏外に飛び出すことが私の密かな夢なんです。
私には姉が3人います。
一人は私に自我をくれた『パー姉さん』。
普段はお仕事で一緒にいられないのですが、ピンチの時には、必ず駆けつけて助けてくれる頼りがいのある姉さんです。
二番目と三番目の姉さんは、のどか様専用のテスラドールである『アカ姉さん』と『アオ姉さん』です。
『アカ姉さん』は、私達テスラドールの試作第一号で、言わばルーツに当る方なのですが、とっても気さくでフレンドリーの一言ではと片付けられないぐらいお茶目な姉さんです。
『アオ姉さん』というのは...
そこまで書いて、一度端末から視線をあげると、ちょうどアオ姉さんが帰ってきました。
背中の透明な翼を折りたたんで窓から入ってくるその姿は、おとぎばなしの妖精の様です。
ちょっと、見惚れているとアオ姉さんが気付いたように、こちらに向かって手を振ってくれます。
「かなたちゃん、ただいま。何書いてるの?」
さりげなく、手に抱えたバックを隠しながら近づいてきます。
性格、容姿ともに完璧に見えるこの姉にも、困った部分があります。
無類の「同人誌」好きなのです。
「姉さん。また『とらのあな』ですか?」
そう聞くと、ちょっと困ったような顔をして「ううん」と曖昧に頷く。
「ほら、私、飛べるじゃないですか。だから調べ物するとき、ネットより実際にその場所に行った方が早いんだよね」
誤魔化すように、そんな言い方をします。
捕捉しますが、私達テスラドールには『ドールネットワーク』というネットワークシステムがあります。
これは世界中のテスラドールと繋がっているクラウドネットワークで、ミャンマーで今流行っている物から北京の大気汚染状況に至るまで、調べられないことありません。
だから、私達の殆どは調べ者は、ドールネットワークになります。
ただ情報ソースは必要なので、手が空いている人が情報収集に努めることになっています。
このドールネットワーク内のアキバ情報は、アカ姉さんとアオ姉さんで全体の50%を占めています。
何だか、とっても残念な気分になるのは、なぜでしょうか?
「さすが姉さん。情報収集はお手の物ですね」
「ふっふん。情報収集ならならアオ姉さんに任せてよ。どんな所でも飛んでいって何でも調べてきちゃうよ」
仕舞いかけていた透明な翼をパタパタさせます。
(とても飛行能力がある様には見えないんだけどなぁ)
その薄くて華奢な翼で、アオ姉さんが飛べるのには、ちょっとした秘密があります。
私達テスラドールには、「火」「風」「水」という属性がありました。
元々これは設定のようなもので、開発者ののどか様的には『ちょっとしたお遊び』だったようです。
行動やしゃべり方が、それっぽくなる程度のものでした。
しかし、不測の事態というのはあるものです。
私たちのシステムは条件が揃うと、邪神の力を取り込むことができるコアを生成してしまうのです。
このコアの生成によって最悪の場合、自我が崩壊して自壊を起こすという危険性があります。
今のところ、コアが生成しているのは私達3人だけで、それぞれパー姉さんによるプロテクトを受けています。
私たちの属性は、アカ姉さん=火、アオ姉さん=風、私=水といった具合になっています。
現在我が家には風の主神であるハスターさんが滞在中で、私達に力の使い方を教えてくれています。
得に属性が風のアオ姉さんの上達は早く、翼に見えるのは実はハスターさんの力の一端で地球上のどんな物より、強固でしなやかな翼だそうです。
そんな素晴らしい能力を、ひたすら同人誌収集につぎ込む姉。
...何だか切ない気分になってきました。
「...私も風だったら良かったのにな」
つい、そんな言葉が口をついて出てしまいます。
「でも、かなたちゃんの能力も便利だと思うけどな」
ちなみに私が自由に使える能力は、指先から水を発生させたりすることぐらい。
アカ姉さんからは「水芸」扱いされる程度のものです。
「まぁ、洗い物とかには便利ですし、キャンプとか飲み水を持って行かなくても良いですし...」
「それにさ。かなたちゃんは、ヴェルナーさんのロケットで宇宙に行きたいんじゃなかったっけ?」
そうです。
私の夢は、ヴェルナー様のロケットで再び宇宙に上がることです。
偶然に手に入れた力ではなく、頑張った結果として。
「...そうでした。ありがとう姉さん。大切なことを思い出させてくれて」
「どういたしまして。じゃあ、また後でね」
いそいそと、とらのあなの袋をもって、部屋を出た姉に声をかける。
「姉さん。のどか様のベットの下は、もう一杯ですので別のところに隠しておいてくださいね」
廊下で、姉がこける音がした。
(これは、面白いかも...)
再び、パソコンに向かって、執筆活動を再開してアップロードを完了しました。
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一陣の風が吹いて、ハスターさんが部屋の真ん中に現れる。
「お帰りハスターさん。って、これ何ですか?」
ハスターさんを中心にフレシット弾が空中に固定されていた。よく見ると弾頭に細かい穴が空いていることが見て取れます。
「すまない。『ジャンプ』をしようとした瞬間に狙い打たれてね。信管を壊してやったので危険は無いと思うが、今片付ける」
次回、フレシット弾邪神編 第5話 狙撃者の影




