章間 銀の鍵
「『銀の鍵』のあほーーーーー!」
そう叫んだあと、ニャルラトホテプは完全にフリーズしてしまった。
こいつをどうしたもんだろうと思案している処に『銀の鍵』が戻ってきた。
「『銀の鍵』おつかれさん。生憎おまえのご主人様は、いまフリーズ状態だよ。もう少し遊んできても良かったのに...」
足元で「ぷるぷる」震えているのを抱き上げると、なにかが腕に触れた。
どうやら何か抱えている様だ。
「ぷるぷる(おどどけものです?)」
「えっ、のどかちゃんから?なんだろ」
『パー子へ』と書かれているリボンの掛かった小さな箱を開けてみる。
中には、綺麗なバレッタリボンが入っていた。
そういえば、幻夢境に入って『ソトなる図書館』に向かっているとき、のどかちゃんに『リボンは...そうだな、髪を結ぶやつなら頂戴』と言った覚えがある。
「そっか、覚えててくれたんだ...」
ちょっと嬉しくて、すぐにつけてみた。
「どうだ?似合うか?」
「ぷるぷる(おにあいです?)」
「おぅ、良いんじゃねーの」
ちょっと照れた感じてイタクァも褒めてくれた。
「ふふふ、ありがと」
『銀の鍵』は、もう一つ『ニャルラトホテプさんへ』とかかれている箱を抱えていた。
未だ、フリーズ状態のニャルラトホテプの目の前で箱をふりふりしてみる。
「おーい。ニャルラトホテプ。お前にもあるみたいだど」
「にゃんですとぉ」
動かない塩の彫像になっていたニャルラトホテプが息を吹き返し、箱を奪い取る。
「なんと...」
箱の中からは、カチューシャが出てきた。
それもメイドさんが付けるメイドカチューシャだ。
(のどかちゃん。これはどうかと思うよ...)
友達の趣味を再確認した後、どうフォローしようかと思い悩んでいると...
「わっかりましたぁぁぁ。そういう事ならは、このニャルラトホテプ。のどかさんの専属メイドとしてお側に参ります。『銀の鍵』すぐ準備して下さい」
「どうどう、落ち着けっ。なんでそう言う結論なんだよっ」
完全に前後の脈絡を亡くしているニャルラトホテプに物理的に突っ込みを入れる。
「いいですか、これは言わば王が家臣に剣を与える様なもの。もはや私は、のどかちゃんの専属メイドになるしか、道は残されていないのです」
「だから落ち着け。大体、この幻夢境はどうするんだ。ほっぽったら、アザトースに怒られるぞ」
上司の名前を出してやると、さすがのニャルラトホテプも口ごもる。
「そっ...それは貴方が黙っていれば良い事です...私は行きます」
「良い訳あるかいっ。イタクァ、あんたもこの馬鹿を取り押さるの手伝って」
「おっ、おう」
「ぐっ、後生ですから行かせて下さいよぉ」
そんな、私達をぷるぷるしながら見ていた『銀の鍵』は、急にツイストし鍵形態になったと思ったら消えてしまった。
「あぁぁぁ、『銀の鍵』の裏切り者ォォォ」
泣き崩れるニャルラトホテプを見ながら、ため息をつく。
イタクァが同情したような顔をしている。
「お前も大変だなぁ」
「そうでもないさ、まあまあ楽しいよ」
貰ったバレッタリボンを弄りながら答えた。
最近、ニャルラトホテプさんを含め邪神の皆さんを擬人化して書いているとなんか楽しくて、いけない方向に目覚めそうです。
そろそろ、作者のSAN値が危ないのかも知れません。




