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技術系研究員 由比川のどかの冒険  作者: 錬金術師まさ
ドリームマシーン 海賊版
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第10話.オメザメは**で

 クトゥグァさんに乗っ取られていたアカをなんとか、取り戻した私達は『火の里』から少し距離をとった場所で傷の手当をしています。

 幸い協力してくれた風の眷属さん達に重傷者はいませんでした。

 かえって、アカのおでこの絆創膏を心配される有様でした。

 パー子の愛の頭突き2発くらったアカのダメージが、最も大きかったみたいです。


「パー姉ぇ、ひどいよ。まだぐらんぐらんするよ」

「だから悪いって言ってるじゃないか。アカも目覚めたら目覚めたって言ってくれないと、私、わっかんないし...」

「目覚めたっていったらやめてくれたの?」

「んにゃ、用心の為にもう一発はいっとくかな」

「パー姉ぇ!」


 パー子達が言い合いをする傍らで、全員揃ったドールズを眺めてため息をつきます。


「結局、私、肝心なところでは。なんにも出来ませんでしたね」


 パー子の様な戦闘技術はないけど、もう少しうまい対応があったのではないか。

 そんな思いが、ため息として現れます。


「なに?のどかちゃん。ため息つくとシワが増えるよ」

「それを言うなら、『幸せが逃げる』ですよ。いいんですよ。みんな無事に見つかったんですし、後は戻るだけです」


 パー子がトコトコと歩いてきて『ちょっとちょっと』と手招きをする。


「なんですか?」


 しゃがむと、ぎゅっと抱きついてきた。


「のどかちゃん。抱え込みすぎだよ。私たちはパートナーでしょ?それぞれ得意なところで頑張ればいいよ」

「わかってますよ。ありがとね」


 さっきの戦闘で乱れてしまったパー子のパープルの髪を直しながら答えます。

 気持ちよさそうに髪を撫でられるに任せていたパー子がふと離れ、私をじっと見ます。


「それと...楽しかったよ。これは夢だけど、いつか本当に遊べる日が来ることを信じてる」


 そっか、これでまた暫くこの子とは遊べなくなるのか...


「そんな言葉は、パー子らしくありませんよ」

「そっか、そうだね。またね、のどかちゃん」


 ちょっと、しんみりした空気が流れているけど、大切な質問があったのを忘れていました。


「で、質問なんですが...どうやったら、この夢から覚められるのでしょう?」


「あっ」


 どうやらパー子も失念していたらしいです。

 おいおい、そこ大事でしょう。


「『銀の鍵』なら出入り自由なんだけど、アイツ何処ほっつき歩いてるんだか...とりあえず持ち主に聞いてみるよ」


 と言いながら、携帯を取り出すパー子。

 発信音が響いた後、繋がったらしいです。


「わたし、わたし。実は事故っちゃって」


 ちょっと、なんで『オレオレ詐欺』なんですか!


『ネタが面白くないから切りますよ。何の様なんですか?』


「のどかちゃんが幻夢境から抜けたいんだけど、『銀の鍵』が行方不明で困ってるんだよ。アンタなら何か手はあるんだろ」


『そっ、それはもちろん、この幻夢境の実質的な統括者は、このニャルラトホテプです。それぐらいの事は造作もありませんが...』


「なら直ぐにそっち行くからよろしくぅ」


 携帯を一度切ってから、もう一件連絡をとる様です。


「あと、イタクァにも連絡するからちょっと待ってね」


 なんで、邪神さんの携帯番号知ってるの?

 というか、あれをもう一度経験するのは是非とも遠慮したいところです。


「えっ、いぇ、ほら皆で歩いていくとかできないんですか?」


「出来るけど、何年も掛かっちゃうよ。ここは大空の旅と洒落こもうよ」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「なら直ぐにそっち行くからよろしくぅ」


 それだけ言うと通信が切れてしまいました。

 このニャルラトホテプに対して『よろしくぅ』ですか。

 何だか私、舐められてませんかね。

 ここいらで一発ガツンといった方が良いでしょうか?


 しかし、これまで何度、夢枕にたっても逃げられてしまっていた『由比川のどか』ちゃんと会えるということは、ボーナスを出してもいい大手柄です。


「しかも『黄衣の王』が告白してしまった後ですからね。気合を入れて好感度アップを狙いますか...」


 急に、激しい風の音がしたと思ったら、幻夢城の扉が開いたことを知らせるアラームが鳴る。

 お着きですか...ちょっと早すぎるんじゃないですか?

 まぁ、お迎えの準備程度は、このニャルラトホテプにとっては朝飯前、因果律をイジって既に済んでいる事にしてしまいます。


 ロビーに出たところで、のどかちゃんを発見しました。

 とびっきりの笑顔でお出迎えをします。


「幻夢境での旅、お疲れ様でした。私がここの主ニャルラトホテプです。パー子さんにはいつも良くしてもらっています」

「あ、こんにちは。由比川と言います。パー子がいつもお世話になっています。あれっ?」


 『あれっ』とはいったい?

 のどかちゃんの目線を追うと、足元に『銀の鍵』がぴょんぴょん跳ねている『銀の鍵』がいた。


「貴方、今まで何処にほっつき歩いていたんですか?私はお客様のお出迎えでとーっても忙しいのです。邪魔しないでくださいよ」


 主人の質問も聞こえない振りで、『銀の鍵』は、のどかちゃんの方に這い寄っていきます。

 まぁ、良いですけど、みんな私のこと邪険にしすぎでは?


 しゃがみ込んだのどかちゃんは、『銀の鍵』を優しくホールドします。

 私のハートもホールドしちゃってもいいですよ。


「貴方こんなところに居たんですね。何処に行ったか心配していたんですよ」

「ぷるぷる(たべます?)」

「食べませんて」

「ぷるぷる(ではかえります?)」

「是非そうしたいのですが」


 なぜか、会話が成り立っている。

 さすが、のどかちゃん。

 私の目に狂いは無いです。


 いきなり、ツイストし始める『銀の鍵』。

 ねえ、それって覚醒モードなのでは?

 ちょっ、待ち、歓迎の準備が、私とのどかちゃんの『きゅっきゃ、うふふ』が....


 鍵へのメタモルが終了すると、『カチリ』という音がして覚醒が始まった。


「早速、手配していただいてありがとうございます。このお礼はいつか..」


 残像を残して消えていくのどかちゃんとその他大勢。

 残ったのは、パープルのとイタクァと、放心した私だけでした。


「どうしたんだ?コイツは?」

「気にしなくていいよ。いつものことだから」


 やっと....やっと会えたと思ったのに...涙だが止まりません...うぅぅぅっ


「『銀の鍵』のあほーーーーー!」


 幻夢境にその声が鳴り響きました。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 んっ、なんだか寝た割に疲れが残っています。

 鉛の様に重い眼をこじ開けても、視野が明るくなりません。

 どうやらヴェルナーに抱きかかえられているらしく、駄肉で視界が遮られています。


 ヴェルナーを脇に転がした辺りで、意識がはっきりしてきました。


「そうか…私、幻夢境へ...」


 はじめに確認したのは、いったい何日寝ていたのかということでした。

 時計を見ると次の日の朝です。

 私の感覚では随分と長い間、あちらに行っていた感じなのですが、実際は一晩の事であった様です。

 有休を寝て過ごすという悲劇が回避できて何よりです。


 枕元には『銀の鍵』さんがいらっしゃいました。


「『銀の鍵』さん。ちょっと」

「ぷるぷる(たべます?)」

「食べませんて。貴方、パー子のところには自由に行き来できるんでしょう?渡して欲しいものがあるのですが...」


 渡したのは、ドールズ達の為に買ってあったリボンの一つです。

 気に入ってくれるといいけど...


「あと、これはニャルラトホテプさんへ。この間はあまり御礼が出来なかったので、お詫びの意味もこめてと...」

「ぷるぷる(うけたまわり)」


 そういうと、『銀の鍵』さんはツイストを始めます。

 鍵にメタモルすると『カチリ』という音を立てて消えてしまいました。


「さてとっ...」

「あっ..のどか...お早う。早かったね」


 脇に転がしていたヴェルナーが、目を覚ましようです。


「まあね。あまりあっちにいると素敵な彼女に迫られそうだったから」

「なっ、のどか、それってどう言うこと」

「そんなこと、乙女の口から言うもんではありませんよ。秘密です。ひ・み・つ」


「にょょょょぉぉぉ」


 ヴェルナーは、頭をかきむしり泣かせら枕に頭を埋めています。

 全く、朝からテンションの高いことです。

 しかし、ハスターさんの事もそうですが、幻夢境ではトラブルの元をばら撒いてきてしまった気がします。

 これがもとになってさらなる大冒険とかに成らなければいいんですが...


 まぁ、ともあれ私の冒険『幻夢境への旅』はこうして無事に終わりを迎えたのでした。


 めでたし、めでたしということで...




『ドリームマシン海賊版 FIN』

冒険編に入って一発目のドリームマシン海賊版はいかがだったでしょうか?

作者としての反省は、『日常編』『バースデープレゼント海賊版』から引っ張ってきているところが多いので、初見の方には読みづらかったかな。ということです。

『冒険編』は後2本書く予定なので、もう少しお付き合いよろしくお願いします。

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