第8話 天秤と鏡と太陽
潜水艦が浮上を開始し、暫くすると空が見えてきた。
遠くを見ると海の上に浮かぶ大きな島が見えた。
近づいて見てみると、大きな島だと思っていたものは大きな軍艦だった。
潜水艦から降りると
『祝帰還!ギル様、シンバ様、キーマン様』
の横断幕を持って、嬉しそうに3人の帰りを大勢の人が港へ迎えに来ていた。
「話違うな!随分と立派な有名人だな。役職ねぇんじゃなかったのか?」
「俺たち、役職はねえけど、成績は良いもんでね〜」
呑気に手を振るシンバ。気配を消し俺の後ろに隠れるキーマン。感極まり涙ぐむギル。
おいおい…この班大丈夫なのか?
「おかえり、3人とも!…と、サルくん?だっけ?ヤホヤホ〜!!ここだよ〜!!」
大衆の何処からか声が聞こえてくる。
その場に居たもの達は、次々に声の主に道を作る。
道の先の人影が見える。
何だこの、チャラチャラしたメガネ男は。
「ほらほら〜話してたプラチナだよ〜」
シンバが耳打ちしてくる。
「お前ら久々だな!!誰も死んでなくて良かった良かった!!」
プラチナはギルの肩に手を置くと、三人の顔を見て笑顔を見せる。
「プラチナの軍が警備当番の年でしたね。」
「おうよ!それにしてもサルくん!遠路遥々ご苦労だったね」
「あ、どうも。」
「ギルテ…あーーー。ダイヤモンドが、班長とサンくんに会いに来いってさ〜!他の奴らはしばし休憩!だってさ!!」
「分かりました。」
ギルが応える。
「行こ〜、サン坊〜」
シンバは足を引きずり気怠そうに歩き出す。
「は?ちゃんと聞いてたのか?今から会いに行けって」
「だから行くところじゃんか〜」
「いや、シンバは休憩って言われただろ?」
「え?何言ってんの〜班長俺だよ〜」
「は?そうなのか??!」
「あ、そういえば歳も20じゃなくて、今29なんだよね〜」
突然の告白に俺のモヤモヤと残り続けた感覚は晴れやかに消えていった。
「……だよな!?くぅー!スッキリした…ずっとモヤモヤしてたんだよな〜!!!」
じゃあ、本当の21ってどんな感じなんだろ。
「ハハ、そんなに悩ませてたとは、悪いことしちゃったかな〜」
口ではそんな事を言いつつ、全く気にもしていない様子に俺は鼻で笑う。
「なんで9もサバ読んだんだよ。」
「だってまだ仲間じゃないのに、ペラペラ言ってる方が変だろ〜もっと警戒しなよっサン坊〜」
俺の額をシンバは人差し指で突く。
シンバって普段は何も考えてなさそうなのに、時々怖いくらい冷静な時あんだよなー。
それにしても人がちらほら居るのは全員プラチナの軍隊員なのか?ここって全部軍艦の上なんだよな。
上から落ちてくる川とかもどういう仕組みなんだ?
なんで軍艦の上に森林が?
どうやってこの重みに耐えてるんだ?
そして、さっきから首輪付けた動物とよくすれ違ってっけど襲ってこねえんだなー。
誰かに飼われてんのか?
シンバと俺はダイヤモンドが待つ総本部へ向かっていると俺は異変に気づいた。
「なんで、あんなチンチクリンがシンバ様の班に」
「僕だって、シンバ様に助けられてココに居るのに。」
「学校に通わないって本当かしら?直ぐに班に入るってこと?」
「そんな人今まで居た?」
ヒソヒソと聞こえる声は、右から入って左から出ていった。
俺の心には全く響かない。
そんな俺を見たシンバは微笑んでいた。
「君は大物になるね、きっと」
そう言って、また歩き出した。
歩いていると、立派な建物が現れた。
門には、天秤とその両方に鏡と太陽が描かれていた。
あ、皆んなが付けてる指輪と同じ模様だ。
「これ、気になりますかぁ?」
ひょこっと現れたのは、花が開くように可愛く笑う長い赤い髪の女性だ。
「これはぁ、ツクヨミは何も知らない人達に、真実を映し出す希望だよぉていう思いがこの紋章には込められて居るんですよお」
「へー…」
変わった喋り方。若そうな女の子は皆こんな感じなのか?
ユフも変わった喋り方だったし。
「くくっ…ブハッ!あ〜滑稽すぎて……あ〜おもしれぇ」
シンバは笑いを堪えすぎて目には涙が見えるが俺は何が可笑しいのかさっぱり分からない。
「えぇ?なにがですかぁ?シンバってばおかしくなっちゃったのぉ?」
赤髪の女は白々しく小首を傾げる。
「相手が悪かったなフィル〜こいつはお前の安っすい演技には少しも興味ねえんだからな〜」
シンバがフィルを煽るとフィルは俺をギロリと睨んでくる。
「ふぅ〜ん、どーゆーこと?」
口調も雰囲気も違う…何かに取り憑かれてんのか?
「こいつのことは無視でいい〜構ってたら日が暮れちまうぞ〜」
「待ちなさいよ。私は、その子認めないわよ。」
「それは、ボスが決めるんだろ〜じゃあな〜」
プラチナ軍だよな?さっきの女の子。
シンバはあの子の事よく知ってるみたいだったな。
そして、エレベーター?ってやつで最上階へ到着した。
俺が窓から外を覗くと先程通って来た道が見える。
「落ちたら死ぬかな?」
「防御しなきゃ即死だろ。ほら、行くぞ〜」
コンコンッとシンバが大きな扉をノックする。
意外だな。俺が知ってるシンバならノックとかせずに入ると思ったのに。
余程の相手なのか?
「開いている。」
「ほんじゃ〜入りま〜す」
扉の先に現れたその姿は、紫の髪と妖艶な雰囲気漂う、いかにも只者ではないオーラを感じる。
静かに微笑みを見せながら、こちらに向けるその目の奥は酷く冷淡で威圧的だ。俺の本能が告げる。
この女は危険だと。
え、俺、ここで死ぬ?




