第6話 キーマンという男
これが…才持ち…
正直…圧倒された。恐怖すら感じた。今もまだ現実と思えない…
《しかしサンは恐怖と同時に押し寄せる『何か』を確かに感じた》
ハハッ…俺、死にかけたぞ…。
それなのになんでこんなワクワクするんだ…
さっきのは何だ…知りたい!!
「おい、大丈夫か。」
ピーマンは俺を覗き込んでくる。
あのピーマンが心配そうにしてるのが笑えてくる。
「ピーマン…」
俺は視線を逸らし下を俯く。
「なんだ。」
「無口クールボーイキャラはやめたのか…嫌いな相手をそんな必死に助けて、ずいぶん懐かれたもんだなっ」
__『ほぅ…信用出来るか。だいぶ懐かれたもんだな。』__
「無駄に記憶力が良い奴だ。」
ピーマンは鼻で笑い、俺の頭を軽く叩き、歩き出した。
「ありがとな…お前が居なきゃ多分死んでた。」
俺の改まった態度にピーマンは鼻で笑う。
「大袈裟だ。その時は一緒に死んでやろう。」
「いや、お前とは嫌だわ。……え?マジ?…」
あまりにも真剣な顔のピーマンに俺は驚いた。
「冗談だが死に時ぐらい選べるくらいには鍛えてるつもりだ。」
まだ俺には何か隠してんだな…このミステリーボーイめ。
「そんな事より、俺の才口外するなよ。」
「もし、言っちまったら?」
「俺は死ぬことになる。……多分な。」
「多分かよ!!!!それにしても、ジョインはあのまま気色悪い顔でこれから生活すんのか?」
ジョインの顔を思い出すだけでゾッとすんな。
「違うな。才と言っても、種類は様々だ。身体強化する才もあれば、俺みたいに魅了という他者に影響する才もある。他者に影響する才は掛けた者の生命力によって持続可能時間は変わる。」
「そうか。じゃあ今頃正気に戻ってんじゃねえか。ピーマン弱そうだし。」
黙り込むピーマンに俺は慌て出した。
「否定してくれよ。まっまさか!追って来たりしてねぇだろうな…ここかっ!ここかっ!!」
「何してるんだ…」
俺の奇行ぶりにピーマンは周囲からの視線を気にしたのか、突然俺は首の後ろを掴まれ無理矢理制止させられた。
「あ!!!!!!」
暫く歩いて俺の突如として発された声にピーマンは肩をビクッとさせ、怪訝そうな顔で俺を見る。
「なんだ。」
「女の子居なかったか!俺よりちょっとちっこい位の!白いワンピース着てた、シンバと同じ髪の色の女の子」
ピーマンは少し考えて首を横に振る。
「俺が来た時はお前とジョインしか居なかったが?」
「まあ、ジョインのあのアホ面じゃ何も出来ねえか。俺が狙いみたいだったし。」
「あ!!!!!!」
俺はここに来た目的を忘れていた。
「なんだ。お前それでしか喋り出せないのか。」
「服選ぶの忘れてた!!」
「もう選んでいる。」
「俺の好みは!!!」
「着れればなんでもいいんだろ?」
俺の言動を読んでいるのか間髪入れずに応えていくピーマンに俺の対抗心に火が付く。
「シンバとの合流場所決めてなかった!!」
「俺が知っているから問題ない。」
「じゃあ今から何するんだ!!」
「着替えがてら温泉だ。」
「…なんか…お前、すげえな。」
「付き合いは短いが、お前が褒めてない事だけはわかる。」
「褒めてんだよバーカ。さては照れてんな?」
俺がピーマンを揶揄うと、少し拗ねた様子のピーマン。
「照れる?ハッ。そんな感情持ち合わせてないな。」
「ここら辺よく来るのか?」
「あぁ。出身国だ。」
「お前さ…名前も才も言わねえのに、出身国はサラッと言うんだな。」
「皆に言ってる訳ではない。」
ふーん…俺には教えてくれるってか。
「ニシシッ」
「なんだ。気持ち悪いサル。」
「は?」
「キモザル。」
ピーマンは俺の顔面を右手で握り覆い、そのまま温泉とやらへ向かった。
ちょっと立ち寄っただけの『サムグ国、首都ビトレイアルン』色々あった。
何よりもピーマンと分かり合えた気がする。
ピーマンのほんの一部かも知れない。
でもいいんだ。これから、少しずつで。
《しかし、そのほんの一部でも嬉しさで舞い上がるサンであった。
生まれて初めて、彼が自分から人へ興味が湧いた瞬間だった》
サンとキーマンがジョインの前を去って、暫く時が経った頃。
ジョインは何もせずただただ横になり、ぼんやり空を眺め過ごしている。
「貴方。いつまでそうしてるつもり?」
白いワンピースに金髪の髪が揺れる。
「あぁ、コリンか。俺は絶賛攻撃を食らい中だ。」
「相変わらずね。そんな事より彼が本当に才持ちなの?そうは見えなかったけど。」
「俺の目に狂いはねえよ。任せろ。しかし、よくあそこまで計画通りに動けたもんだな。流石コリン…いや『ユフ様!』」
「からかわないで。不快よ。」
「なんで『ユフ』なんだ?」
「何言ってるの?もうすぐ冬だからに決まってるでしょ。」
コリンは真剣な顔でジョインを見ている。
「あぁ。そういう奴だよお前は。」
「勝手に憐れむのやめて。」
コリンはジョインの顔面を踏み付ける。
「な…なんで分かったんだ。俺が憐れんでんの。まさか、コリンも才持ちだったのか…」
ジョインは踏まれてる顔を気にせず、コリンを揶揄うのを止めない。
「バカにしないで。私が才持ちじゃない事くらい貴方なら直ぐに分かるのでしょ。そんな事より彼の未来が楽しみだわ。」
「俺もだ。ワクワクを堪えるのに必死だぜ。近くで成長を見たかったんだがな…リンゴ持っていけば良かったか。」
「何言ってるのよ。バカの相手は疲れるから喋らないでくれる?」
《サンが選んだ道、その道は決して簡単な道では無いことだけは確かな事実のようだ》




