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第64話 イヌホオズキ

水龍(すいりゅう)



俺は即座に剣を抜き、翠の剣を受ける。



「待って、待って!ここは狭すぎる。違うんだよ!検証したいだけなんだって!!俺の才が……ッ!」



霧雨(きりさめ)



翠の突き技に避けるので精一杯だ。


どうすっかな、……そんな怒ることか?



「俺の話を聞けっつってんだろ!ギルティーノに会えなくていいんだな!!ッ滅亡(スイレン)!!」



くそ、やっぱり鋭さがない。


……ッ!?


しかし、翠は攻撃を受ける前に剣を収めた。

俺も慌てて攻撃を止める。



「……ギルには」


「ん?」


「ギルには会う。話を聞こうかのぅ?」



なんかギルティーノのおかげで命拾いしたみたいで気に食わねえけど、結果オーライか。



「ああ、まず燃料切れで潜水艦沈んだ。んでこの島に泳いで辿り着いたら、レオというやつに出会ったんだ。」


………

……


「て、訳だな。」


俺はクラシオス島上陸から、ゴールドとの任務遂行、本部への機関から現在に至るまでこと細かに話した。学校の出来事は自分で言うんじゃ、小っ恥ずかしいので省いた。



「なるほどのぅ。ギルは相変わらずじゃのぅ。それで今回も潜水艦がないということか。」


「そうなんだよ。有り得ねえだろ?」


「そうか?お主のことを良く分かっておるではないか。」



こいつ、ギルティーノのことになるとダメだな。

俺は深くため息をつく。



「そもそも、ギルティーノには死んだ男が居たって話だっただろ?」


「ハッハッハ。しかし、才の効力を確認したければ、そう早く言えば良かったじゃろう」



話、逸らされたか……?

それよりも……



「言ってんだよ!最初からッ!!」



渾身のツッコミに隠れていたリンも恐る恐る近づいてくる。



「そもそも貴方が、先に説明しておけば良かったんですよ。」


「ああ、それはそうだ。わりぃな。てことで、翠、これ持ってみろ。」


「何ですか、その軽さ。貴方と一緒に居たら命がいくつあっても足りませんよ。」



リンが呆れているのもお構い無しに、俺がネックレスを渡すと、翠が受け取った。


途端に、俺の才によって翠に掛かった呪いが消えていく。



「大丈夫そうだな……」


「はい。私の才が消えました。」


「よし!確認終了!」



俺は、ネックレスに付与し終えると、リンへネックレスを返す。



「ほいっ。」


「ありがとうございます。」



リンはネックレスを身につける。



「サン。」


「ああ。じゃあな。リン。」



俺と翠は急いでその場を立ち去る。



「おお、リン!ひっさしぶり〜!あっしが迎えに来たの分かってたの〜?」



茶髪の女が現れると、リンへ手を振る。



「リカ様が、来ていただけるとは。幹部昇格おめでとうございます。」



リンは女に向かって頭を下げる。



「ありがとう〜!それも、リンが好きなユーリ様の席が空いたからだけどねえ〜!あっしを呪い殺さないでよね〜!」



ゆっくりリンは頭を上げると、出会った頃と同じ目をしていた。


洗脳にかかっているフリをしてるのか。うまいな。



「さて、行こうか!」


「はい。」



一瞬リンが俺たちの方を確認する。

今にも泣き出しそうじゃねえか。


俺は右手でガッツポーズを作ると、リンは首を横に振った。



「はい、ジャーンプ。」



リカはリンの手を引き、高く空へ飛び上がると、そこへ大きな鳥がタイミングを合わせて飛び込んでくる。


ほえ〜、潜水艦もかっけえけど鳥もいいな。

今度シンク連れて行くか。



「よし、行くか?」



俺が一方踏み出した瞬間、聞き馴染みのある声が聞こえる。



「我はそんな事頼んで無い。勝手な行動を取るな。」


「……はあ。」



この声……

恐る恐る振り返ると、やはりギルティーノが腕を組んで立っていた。



「何だ、サン。既に何かあったのか?」



ああ!ありますとも!

まだ翠から剣術教わってねえのによ。

ほーら、翠の顔見てみろ。約束なんてとうに忘れちまってるさ。


しかし、ギルティーノは翠の事など気にも止めていないようだ。


ったく!しょうがねえな!



「おい、ギルティーノ。アレ。」



俺が親指で示すと、ギルティーノもそちらへ視線を向けた。



「誰だ。」



ええええ!こういうのって会えばわかるとかそういうもんじゃねえのか〜?!



どうすんだよ!翠!



「……えっと、久しぶりじゃのぅ。」



翠は照れながらギルティーノへ声を掛ける。


うーわ、見てられねえー。



「その喋り方……翠か?!」



翠は照れながらギルティーノへ頷く。


うーわ、見てられねえー、パート二だな。


てか、若い頃からその喋り方なのかよ。

てっきり爺さんになってからかと思ってたよ。



「久しいな!それにしても随分と老け込んだな。女子達にキャーキャー騒がれていた昔と見る影もないなッ!」



おーい、うちのボスって、嘘つけないんだなー。


ギルティーノは翠の背中を叩き、口を大きく開けて涙を流しながら豪快に笑う。



「四十年前じゃろ。そんなお主は髪が伸びたくらいで一切老けとらんが、変な薬でもやってないじゃろうな。」


「何だ〜?まだ我が好きなのか?」



おおー!急な展開!いけ!漢を見せろ!



「ハッ!何を言うておる。お主には(ひゅう)が居るじゃろうて。」


「ハッハッハ!死んでしまってからは常に見られているようで余計に隠し事が出来ないさ。」



えっーと。ちょっと待てよ。


ギルティーノにダイヤモンドの指輪をプレゼントをしたのが死んだ旦那。

つまり彪。

んで?ギルティーノが好きな翠は、彪と知り合い……つまり……これは噂のッ



「泥沼ッ!!」



俺の言葉に、ギルティーノが反応する。



「小さい脳みそに無駄な事を入れてどうする。そろそろ潜水艦の操縦を覚えろ!これでは予算がいくらあっても足りぬぞ!」


「覚ーえーてーんだよ!それなのに変な気きかせて、お前が毎回毎回勝手に海に沈めてんだよ!」


「なんだそうならそうと早く言え。無駄金じゃないか。」



だから、言ってんだよ!ずっと!

何だこの二人。



「……お前たち、二人揃って話聞かな過ぎじゃねえか?」



俺の言葉に二人が顔を見合わせた。



「懐かしいな。それがアイツの口癖だった。」


「アイツ?」



俺が首を傾げると、翠が笑いながら答える。



「彪じゃよ。」


「そうだ、我ら三人は出会い、そして彪を筆頭にツクヨミという組織を立ち上げた。聞きたいか?我らの冒険ストーリーを。」


「いや長くなりそうだから、いい。」



ギルティーノと翠は肩透かしを食らう。



「今のは、絶対に聞く流れじゃったろう。」


「な?面白いやつだろ?」



死んでるって分かってるやつの冒険ストーリーなんて今聞いちまったら、また気分落ちちまうからな。



「それより、リンを追おう!」



返答も待たずして、リンが向かった方へ俺は走り出した。



「翠。」


「ああ。」



ッ!!

翠はいつの間にか目の前に現れると、刀の刃先を首に突き立てた。



「話の途中じゃ。」



ギルティーノがヒール音を響かせながら歩いてくる。


………


……



「……いや、さっさと歩けよ!!」



堪らず、ツッコミを入れた次の瞬間、目の前から消えたギルティーノの膝が俺の顔面へもろに入った。



「こういう時は雰囲気が大事なんだ!!」



___『おい、シンバ。名前は伏せてた方が雰囲気出てかっこいいだろ!!!』___



うわー。めっちゃデジャブ。



「で?なんでダメなんだ。」


「それは、今のお前には言えぬ。」


「出た。ギルティーノお得意の言葉濁し!」



「……なあ、ギルティーノ。お前、なにか隠してんだろ。」



俺の言葉に一切動揺を見せず、真っ直ぐに見てくるギルティーノの瞳に俺の姿が映る。



「何か?とは。」


「分かんねえけど、あえて言うなら……お前が何か企んでる〜っていう勘?」


「勘か。ならばその勘は外れている。」



堂々とした姿に俺も気になっていた事をギルティーノにぶつけたくなった。



「残念。俺の勘、外れたことがねえ。」


「調子付いているところ悪いが、無駄な詮索だ。」



俺はその場に座り込み、空を見上げる。



「ボンボムという男を知っているか。」


「ああ。それがどうした。」


「俺たちの内部事情を知っていた。幹部が誰で、シリウスが死んでいたことも。」


「それは我らも同じことだ。お前は知らぬかも知らぬが、我らは幹部が誰でどんな才を持っているか把握している。ましてや、シリウスやアルクの死などその場に居たのだから当然だろ。ちょっと気が経ちすぎだ。落ち着け。」


「なら、俺たちはバツサイと総力戦すんのか?それは、どこで、いつだ。」



ギルティーノは 俺の言葉に黙り込んだ。


緊迫した空気にただ時間だけが過ぎ去っていく。



「なあ。お前は俺たちに何をさせようとしている。」



《ギルティーノとサンの間に僅かに入った亀裂が、物語を大きく動かす。》

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