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第62話 俺の勘

俺は茂みをかき分け進んでいると、先程の工場地帯に着いた。



さっき、言い過ぎたか……?



___『言葉の分からねえ馬鹿ほど、強い言葉を使いたがる』___



何言ってんだかな。まるっきり俺じゃねえか。


俺は大きく息を吸い、肺に空気を巡らせ、深く息を吐いた。


切り替えろ。

目的を見失うな。良いじゃねえか、フリでも前向けてりゃ。


顔を上げると、先程の工場地帯へと戻ってきていた。


あ、さっき俺を見るなり逃げ出したヤツらだ!


男たちが円になり、昼飯を食べているようだ。



「おーい!」



今度は驚かせないように、遠くから手を振ってみる。

俺に気づくと、皆、大きく手を振り返してきた。



「おーい!さっきはごめんなあ〜!ちょうど幽霊見たって話をしてきた馬鹿が居たもんで、その後すぐだったからな〜!!」


「嘘じゃねえ!さっき工場のあの上の窓から幽霊が覗いてたんだ!」


「まーだ言ってらあ。」



上の窓……?


一人の男が指で指し示す窓を確認する。


あ、それ俺だな。



「わりぃ〜!それ、俺だ〜!!」


「ええぇええ?!どうやってそこから覗けんだよっ!!って、そんなことよりこっちに来て話そうぜ〜!!」


「おう!」



地面を蹴った次の瞬間、皆の目の前に俺が現れると、皆驚きを隠せないでいた。



「うわあ!幽霊!……じゃなくて、えっと……」


「サンだ。」


「サン!いい名前だな!じゃあ父ちゃんはムーンか?!なんてなっ!」



男たちは涙を流しながら大笑いしていたが、俺は何が面白いのやら全く理解出来ずにいた。



何言ってんだ?



「さあな。親は死んでっかもしれねえし、どっかで生きてっかも知れねえな。」



俺は重々しくならないよう明るく話したつもりだが、一瞬、空気が静まり返る。



「そうか、ガキのくせに、過酷な過去なんて背負いやがって、なにか出来ることあればなんでも言ってくれ!」


「そうだぞ!ガキはガキらしくしてねえと、大人になった時大変だぞ!」



俺は辺りを確認する。



「なあ。さっきの水色の髪の男って何処にいるんだ?」



俺の問い掛けに、男たちは一斉に答える。



「B班長のことじゃねえか?」

「水色の髪っつったらボンボムじゃねえか?」

「ああ〜!確かにな!」

「ボンボムならいつもご飯食べたらすぐ工場に戻るからもう戻ってる頃じゃねえか?!」

「さっき戻ってたよ。」


「「「それ先言え〜〜」」」



こいつら元気だな〜


男たちの勢いに押されながらも、工場に戻ったってことと、名前がボンボムという情報を収集出来た。



「ありがとう!ちょっと工場入ってもいいのか?」


「そのまんまはダメだな。俺たちの管轄は食品だからな、食品は衛生、命の工場だからな。」



なるほど、あれだな。

ごぼうには、ごぼうに従えってことだな。


《○郷には郷に従え、✕ごぼうにはごぼうに従え》



「そうなのか。どうすれば入れる。」


「こっちに来い!俺がE班班長のガリガニだ。」



ガリガニの後をついていくと、手を洗い出した。



「まずはここで手を洗う。んでこれに着替える。」



ガリガニは慣れた手つきで着替えを一瞬で終えると、俺を待たずして歩き出す。



「待ってくれガリガニ、これの着方が分かんねえ……」


「ああ、これは頭に被るんだ。」



おぉ。もう目しか見えねえな。



「ほら、次行くぞ。ここで、風で服についたゴミやホコリを飛ばすんだ。」



ブォオオオオオオ。


音が止まると、壁から吹き出ていた風も止まった。



「ほら次だ。ここでまた手を洗え。」


「またぁ?さっき洗ったんだから、汚れてねえよ!」


「言っただろ?食品を扱うからウチは特に衛生は厳しいんだ。」



爪の間をブラシで洗わされ、ようやく工場へ入ることが出来た。


ようやく、ボンボムの所まで来たぞ。

てか、別にここまでして会いたかった訳でもねえんだけど。



「このでっかいホワイトボードに今日勤務中の人間と配置、ノルマが書かれている。……ってサンは別にここで働く訳じゃねえからこの説明は要らなかったな!ボンボムに会いに来たんだったな。」


「ああ。」


「ボンボムはBラインに居るから、こっちだな。」



ガリガニの後をついていくが、雲行きが怪しい。

さっきから同じ場所を行ったり来たりしている。



「ちょっと待てよ。」



ガリガニは黒い機械を取り出し口元に当て、話出した。


ブーーーー

「ボンボム今、何処だ?」


少し間を置いてボンボムから返事があった。



ビーーーー


『今?外のトイレだけど、そろそろ戻るよ〜』


おい、ガリガニ……今、外って聞こえたぞ!

ってか、そんなもん持ってんなら最初から使えよ!



「あーなんだ。工場見てくか?」



ガリガニは目線を泳がせ、頭を搔く。



見ねえよ!



ガチャン、ジュー。ガチャン、ジュー。


機械によって、一定の速さで瓶にジュースが注がれている。



ってそんなことどうでもいい!



「ガリガニ。外行くぞ。」


「だよな。」



俺は着替えを済ませ、先程の場所まで戻ってきた。


なんの時間だったんだ?


この気配は……


振り返ると、水色の髪の男、ボンボムが立っていた。



「おっと、さっきのおチビちゃんじゃないか!お名前は?」



「言わねえよ。」



ったく!相変わらず、ガキ扱いしやがって!



「ボンボム!ここに居たんだな!サンが探してたぞ。」


「サン?」



ボンボムは俺へ視線を向け、首を傾げる。



「俺の名前だ。」


「サンくんか!どうしたの?」


「あーーー……」



ガリガニへ視線を向けると、察してくれたようで席を外してくれた。



「お前、才持ちだろ?」



俺の言葉に、ボンボムは分かりやすく動揺する。



「君、何者なの?君もあの四人と関わりがあるの?」



あの四人?

なんの事だ?



「どの四人かは知らねえが、自覚してなかったら奪ってやろうかなって思ってな。自覚してるならいいや。」


「やっぱり!四人と同じこと言ってる!ツクヨミに入らないかって君も言うんでしょ?」



なんだ、ツクヨミ知ってんのか。

あ、四人って……あいつらか。



「あ?ツクヨミはお前みたいなやつが入るところじゃねえ。お前の笑顔胡散くせえぞ。」



俺が歩き出すと、ボンボムはスキップしながら俺の後をついてくる。



「んだよ!こっちは才の特訓しなきゃなんだよ!」


「へー!教えよっか!」



教える?



「才の付与だ。出来んのかよ。」



ボンボムは途端に黙り込んだ。


ほらな、無理に決まって……



「いいよ!むしろ、俺の才の専売特許だよ!」



ボンボムは明るく笑う。

こいつ、なんか隠してる。

特に証拠があるわけでもないけど、俺の勘がいってる。



「へーお前の才はなんだよ。」


「んー、それは言えないなあ、だって俺の才は出鼻くじかれたら出る幕ないからね。」



自分の才については教える気がないようだ。

ま、俺もないけどね。



「じゃあな。」


「ええ?!サンくん、聞かないの?」



ボンボムは慌てて、俺の肩を掴み、呼び止める。



「胡散くせえやつとはこれ以上話さねえ〜」


「え?……ああ!もう!そんなこと言って!大きくなれないぞ!!才の付与ってのは、イメージが大事だよ。俺の場合は瓶にジュースを注がれていくのを見て気づいたんだ。」


「ジュース?」



俺の言葉にボンボムは頷く。



「そう、溢れないギリギリを攻めて注がれるジュース。物が壊れないギリギリを攻めて付与する才。イメージが大事。」



なるほど、胡散臭いやつの割には何となく的を得てるような気がする。



ブーーーー

『ボンボム、今どこだ?』


突然、ボンボムの体の何処から声が聞こえてくる。



ビーーーー


「え?今、外のトイレ、ら辺。」


ブーーーー


「時間見ろ。休憩交代の時間だぞ。」


「やば!!じゃあサンくん!特訓頑張って」



忙しないやつだな。

しかし、ヒントになった。

素直に感謝しておこう。

ありがとう。


俺は落ちている石を拾い上げる。


っさて!やるか!!


瓶にジュースが注がれるように、才を発動させ、流すように……


石に全集中を研ぎ澄ます。


ビキビキビキ……


石に亀裂が入る。


おっ!亀裂が入ったってことは、才を付与できてるって事なのか?!


でも、どうやって、その確認するんだ?!


はあ、やること山盛りだな。

リン、お前が殺されたら、俺も一緒に死んでやるからな。安心してくれ。



「へっくしゅん!!!」

「リーダー風邪ですか?」



洗脳が掛かったバツサイの下っ端共がリンを気に掛ける。



「いえ、大丈夫です。」

「それより、今回の功績で、G基地に呼ばれているなんてリーダー、流石です。」

「……ああ。代わりに行きますか?」

「ハハハ!リーダーもそんな冗談言うんですね!」


ハハハハ……全くもって冗談ではないのですよ!!

私の命は貴方にかかっているのですからね!ツクヨミのサン!!



「へっくしょい!!」


おっと風邪かな。

よし、もう一回。

ビキビキビキ。

よし、もう一回。

俺の周りには沢山のヒビの入った石が転がっていた。



「ボンボム!珍しいな!時間忘れるなんて!」


「ごめんね、可愛い客が居たもんでね!」


「なんだよ!お前にも春が来てんのかよ!!」


「そんなもんじゃないよ!さあ!仕事、仕事!」



そう、そんなもんじゃないよ。


聞いてたより、強そうじゃん。


は〜、俺の心臓は高鳴って、弾けちゃいそうだよ。

また出会う時はもっと強くなっててね、サンくん。


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