第57話 サンvsゴールド 遺された者の戦い
訓練場にギルティーノと俺だけが居るという、世にも奇妙な状況に何故か、ふとシンバの言葉が過ぎる。
「生理的に無理」
気付けば俺の頭に過ぎっていたシンバの言葉が口に出ていた。
「ほう?……死にたくなったのか?」
ギルティーノから放たれる殺気に、慌てて訂正する。
「違う!俺じゃなくて!」
「俺じゃなくて?」
「シリウスが!!アルクと話してる時に、ギルティーノは生理的に無理だって……」
ごめんな、シリウス。
もう死んでるからいいだろ?
死んじまったお前が悪い!!
「ハッハッハ!我の子ながらあいつの減らず口には我も困ったものだったッ!」
へ?シリウスとアルクはギルティーノの子供だったのか?
それなのに、あの時、ギルティーノは我が子である二人を生き返らせないという決断をしたのか。
決断の重みを改めて痛感させられる。
「まあ、我の子と言っても……」
「ギルティーノ。ありがとう。俺の可能性を信じてくれて。」
「……ああ!大いに背負った宿命の重さを感じて生きることだなッ!」
ギルティーノは俺の言葉に優しく微笑んだ。
「さて、ちょうどギャラリーも来たところだしな。」
上を見上げると、ゴールドとプラチナが宙を浮いていた。
「あ、バレた。」
「とんでもない殺気を感じて隠れてました〜ははは。……あ〜。帰っていい?」
ゴールドとプラチナが降りてくると、ギルティーノが口を開く。
「さて、サン。お前はどっちと戦いたい。」
二人を前へ押し出すと、プラチナとゴールドは気怠そうに答える。
「え、俺パス〜」
「えっと。僕も。」
ゴールドとプラチナの消極的な様子にギルティーノは二人の頭を掴む。
ギギギギギ。
「ギルティーノ〜。なんか掴まれてるところギギギギいってるよ〜……」
プラチナが、ギルティーノの機嫌を窺うように弱々しく尋ねると、更に強く二人の頭を掴んだ。
「二人とも、幹部……だったよな?」
ギギギギギ。
ゴールドとプラチナは何度も頷く。
「なら、新人と戦って鼻を折ることくらいできるよな?」
ギギギギギ。
ゴールドとプラチナは何度も頷く。
「さあ、サン。どっちだ?選べ。ゴールドか。プラチナか。」
選べって言ってもなあ……
二人は頭を掴まれ、宙吊りになっている。
「じゃあ、ゴールド。」
「理由は。」
「クラシオス島で戦って、負けたから。」
ギルティーノはゴールドを降ろすと背中を押し、前へ出した。
「そうか。ゴールド行け。」
「えっと。負けても怒らないでね、ボス。」
「何か言ったか?」
ギルティーノの笑顔にゴールドは首を横に振る。
俺とゴールドが向き合うと、俺は大きく息を吸い、呼吸を整える。
新鮮な空気が肺を巡っていく感覚が心地良い。
「サンくん。行くよ。」
「ああ!!」
ゴールドは宙に浮き、右手を掲げると、マントの内ポケットから数十本もの短剣が飛び出し、俺の方へ刃先を向ける。
「貫け。追尾」
ゴールドの合図で宙に浮いた短剣が一斉に俺の方へ向かってくる。
「!?」
避けても避けても、剣は俺についてくる。
ついてくる……?
そうか、磁力だな?
そして、当のご本人様は宙に浮いてて高みの見物ってか。
このままずっと避けてても仕方ねえ!
無駄でも何でもいい。手数を増やせ。
カキンッカキンッ___
俺は短剣を、剣で叩き落とす。
叩き落とされた剣はやはり止まることなく、俺の方へ向かってくる。
しかし、向かってくる剣の鋭さが若干落ちたように感じる。
「あ。バレちゃった。磁力って強い衝撃に弱いんだ。」
そ、そうなのか!……そこまでは分かってなかったけど……結果オーライだ!
「今度は俺の番だッ!!!」
「お前ならゴールドとどう戦う。」
「ん〜……あ!強力な磁石でゴールドを地面に引きずり下ろす〜!」
「話にならんな。それも磁気で操られて終いだ。」
「あ。」
「さて、サンはどう戦うかな。」
「この剣、俺についてくるんだろ?」
俺は地面を思い切り蹴り、垂直に高く飛び上がる。
俺についてくる剣を足場に思いっきり踏み込み、ゴールドへ一気に距離を詰める。
「!?」
俺の速さについてこれずに、ゴールドの反応が遅れた。
「憎悪!!」
よし!完璧なタイミングッ!!
「ほう……あれはシリウスの……」
「憎悪だね、初めて見たよ〜!俺と戦ってもほとんど技出さないからね〜。技出したとしても、無関心しか出さないし、まあ……それにすら勝てない俺も俺なんだけどさ〜」
ギャラリーから観戦するプラチナとギルティーノがシリウスの技に興奮をしていた。
……くそ!手応えがない!
俺の剣はゴールドのマントを切り裂いただけだった。
やっぱりだ。
ユアンの時より確かに強くなったハズなのに、ユアンの時より剣に鋭さがない。
空中で無防備になった俺に剣は容赦なく襲い掛かる。
俺は空中で体の向きを変え、何とかバランスを保ちならがら、避ける。
よし、今だ。剣の追撃に隙が空いた!
抜けた先に向かうと、ゴールドが目の前に現れた。
くそ!いつの間にッ!!
ゴールドは俺の方へ右手をかざす。
「付与」
俺の体はゴールドから触れられてもいないのに、磁気を纏った時のように宙に浮いた。
「引力」
俺の体は、訓練場の壁に引っ張られ、そのまま壁にぶち当たる。
「グハッ。」
俺の体は、まるで壁とくっ付いたように離れない。
「そこまで!」
ギルティーノの声を合図に、ゴールドの磁力が俺をゆっくり下へ運ぶ。
「どうだ、幹部。強いだろ。中でも、ゴールドは才の応用がピカイチだ。」
「くそ〜!強え〜!!」
座り込んでいるとゴールドが俺に手を差し伸べる。
俺はゴールドの手を掴み、立ち上がる。
「憎悪は、シリウスに習ったのか?」
「いや、何となく。シリウスが剣で戦ってる姿がサムグ国で見た花が舞っている時みたいだったから。」
「ほう……であれば、シリウスの憎悪を見た事ないのか。それは勿体ないな。やっぱ生き返らせるか。」
「やめとけ!俺が、ギルティーノに生理的無理って言ってたのをバラしたのが、バレんだろ!」
俺とギルティーノの掛け合いに笑いが起きる。
……そうか。シリウスも、憎悪使ってたのか。
今もシリウスと同じ道を歩いてるようで少し嬉しくなった。
「ただ、剣に鋭さがなくなってる。ユアンの時に出した憎悪と今の憎悪はまるで別モンだ……何でだ。」
「そこは我の専門外だが、シリウスは感情を剣にのせて技を繰り出していた。その感情が大事なのではないか。」
感情……そうか。あの時はどす黒い行先も分からぬ感情を剣に乗せた。
だから、剣にも鋭さがあったのか……?
今は、俺の感情とのせてる感情がチグハグだから鋭さに欠けるのか……
分からない。
「グロース島に行けば、お前の答えが見つかるはずだ。」
「へー、グロース島に行けば、才の特訓も出来て、剣の特訓も出来んのか。とんでもねえ便利な島だな。」
俺の嫌味に三人は特に気にする様子もなく、三人流れるように相槌をうつ。
「お前にとっては便利な島だな。」
「そうだね。便利だね。」
「良かっね〜一人一つは便利な島は持っとかないとね〜なんてね!」
俺は三人の言葉にため息をつく。
こっちがピリピリして余裕ねえのが、バカみたいだ。
「分かったよ!とりあえず行けばいいんだろ!ゴールドありがとうな!お陰で、また俺は強くなれる!」
「うん。僕も負けないよ。」
ここでゴールドと戦えたのは俺にとって大きな収穫だ!
グロース島……何があるか知んねえけど、絶対強くなってやる!




