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第55話 尊敬と嫉妬と愛情

「僕の名前は、ログです!いつかサン様と共に任務へ行き、サン様の右腕となることが夢……いや、なります!!」



俺は、ログが向ける羨望の眼差しに少しむず痒さを感じる。


こいつ、多分才持ちだな……

横目でメモリーを確認すると、メモリーも反応している。



「ログか。俺はサンだ。宜しくな!」



俺が手を差し出すと、何やらログの様子がおかしい。

苦しそうに胸を押さえる。



「ぐっ、ぐっ、ぐっ。あっ、はっ!」



なんだ?こいつ。



「それはもう!!サン様のお名前など!!聞くまでもなく承知しておりますッ!!」


「サン様?サンでいいよ。」


「いーや!呼べません!」


「サン様って、なんか嫌なんだけど。」


「ぐぬぬ……であれば、せめてサンさんと呼ばせていただけないでしょうか!!」



サンサン??あだ名か?



「ちょっと俺には可愛すぎるんじゃねえか?まあ、好きに呼んでくれていいけど。」



俺とログが話していると、学校の方から声が聞こえる。



「あの赤髪の人がサン様?」

「なーんだ、なんか普通じゃん。俺の方が強よそうじゃね?」

「腰についてんの見ろよ。本物の剣だぜ。おままごとかよッ!ダハハ!!」



おーおーおー好き勝手言われてんな。

ま、どうでもいいけど。



「シルバーが死んだのってサン様のせいだろ?」



ハハ。それは、少しこたえるな……


ログに視線を移すと、肩を震わせ、物凄い勢いで振り返る。



「お前らッ!!サンさんの陰口、コソコソコソ聞こえてんぞ!出て来いよ!サンさんに正面から話せる度胸あんのか?!」



おっと、元気ハツラツな少年だこと。


しかし、勢い良く啖呵をきったログの手は僅かに震えていた。



「なんだアイツ、誰だ?」

「さあ?話した事ねえし。」

「あーいつものサン様のおっかけじゃん?」



なるほど、こいつは今、俺のために頑張ってくれてる訳ね。



「ログ!お前、かっけえな!」


「へ?サンさん?」



俺がログの頭に手を置くと、ログの顔は茹でたタコのように途端に赤くなっていった。



「でも、全く気にしてねえから心配すんな!ありがとうな!」


「はいッ!……はぁ、かっこいい。」



今度は校舎の方から叫び声が聞こえる。


……学校ってのは騒がしい所だな。


視線を校舎へ向けると、フィルが窓から落ちていた。



え。何で?


なんか……今日、窓から落ちるヤツ多くない?

俺が言えた事じゃねえけどッ!



俺は地面を蹴る。



「消えた?!」



ログとレオの居る校庭に居た俺は、次の瞬間には、少し離れた校舎のすぐ側でフィルを抱き寄せていた。



「フィル。今日は先生なんだろ?窓から落ちるなんてカッコつかねえぞ。」


「だって、皆サンの事悪く言うんだもん。悔しくて……そしたら、ログに先に言われちゃって……」



フィルは顔を赤らめながら、答える。


理由になってねえだろ。



「サン様やっぱり凄い!見えなかった。」

「フィル様とどんな関係なの?」

「ピッタリ抱き合って、教育に良くないですよーー」



学生達に茶化されてようやく俺達の距離の近さに気づき、急いでフィルを降ろす。



「ま、まあ、俺がたまたま居てよかったな。」


「え、ええ。無事に帰ってきたのね。おかえり!」



フィルの花が咲くような眩しい笑顔に、鼓動が乱れる。



俺は、即座に腰の剣を抜き、フィルの背後へ斬りかかる。


俺が向けた剣の先にはギルティーノが気色の悪い笑みを浮かべて現れた。



「ボス!」


「なんだよ、ギルティーノか。お前が来るなら、俺の案内要らなかったじゃねえか。」



剣をしまうと、ギルティーノは気色の悪い笑みをこちらに向けながら、俺とフィルの肩を組む。



「おーおーお。我はお邪魔だったかな?お前達はいつからそんないい感じなのかな?」


いい感じ?どんな感じだ?


「ボスッ!私たちはそんなんじゃ!?!」



フィルは顔を赤らめながらギルティーノに答える答える。



「と、愛しき彼女が言っておるが?」


彼女?だれが?フィルが?


「ん?フィルは彼女じゃねえぞ。」



俺の言葉に場が一瞬止まった気がした。


ん?なんか俺変なこと言ったかな?



「フィル……こいつは一筋縄じゃいかないようだな。」


「だから!違うんですって!」



ギルティーノは豪快に笑った。


学生のやつらも、さっきの勢いはなく、ギルティーノに緊張しているようだ。



「ログ……あのかわい子ちゃんは誰だ……」


「へ?あぁ、フィル様ですね。ヒーラーといって、とても凄い称号を持つお方です。どうやらサンさんをお慕いしているようですね。」


「おんどれええ!サンの野郎!!!」



レオが俺目掛けて、騒々しく走り出した。



「あの血相変えて走ってるあいつはレオっていって、今日から学校に通うんだ。」



フィルへ紹介が終わると、息を切らしたレオがやって来た。



「はあはあはあ。フィル様、私、サンのお友達のレオと申します。是非、貴方とは愛について語り合いたいと存じ……」


「え、誰で、何。」


「レオと、申します!貴方と愛し合いに馳せ参じました!」


「レオね。覚えておいて?貴方は学生、私は隊員。それ以上でも以下でもないわ。」



腕を組み冷たく言い放つフィルにレオは唖然としている。



「大丈夫だ、レオ。俺なんてフィルに最初はまともに目も合わせてくれなかったからな。」


「もう!昔の話でしょ!?」



俺とフィルのやり取りに、レオは肩を震わせる。



「前言撤回ッ!お前は全然可哀想じゃねえーーー!!」



そう言って、レオは校舎の中へと消えていった。



「なんなんだ?」



お、後ろからザザンの気配がする。



「サンくーん!」



ザザンの登場に学生が騒ぎ出す。



「ザザンさんよ!」

「かっこいい。俺も成績残してザザンさんみたいになりてえ。」



うーわ。デジャブだな。

初めてザザンと会った時もこんな感じだったな。


横に皆は居ねえけど。


……あぁ、もうッ!感傷に浸んな。俺。



「ザザン!!久々だな!!」


「そうッスよ!ユアンから帰ってきて全く会えずに任務に行ったッスから!心配してたんスよ。」



エプロン姿って事は、また食堂の当番なのか。



「お前、当番だろ?ここに居ていいのか?」


「そうッス!料理長に言って抜けて来たッス!何しろボスから呼ばれてるッスから!あ、サンくんに料理長が会いたがってたッス!」



ザザンはエプロンを脱ぎ始めた。



「わりぃな。俺もう次の任務に行くんだ。」


「えええええ!俺と戦ってくんないんッスか?それでボスに呼ばれて来たんスよ!?」



ザザンは脱いだエプロンを畳むと、フィルに渡した。



「何も聞いて……」


「言ってなかったか?」



何食わぬ顔でギルティーノが俺の言葉に被せてきた。



言ってなかったか?……だと?



「お前、またやったな?」


「人聞きが悪いぞ!大丈夫だ!ザザン、終わったら、渾身のポジティブ掛けてやるからな!」


「頼んだッス!!ってなんで負ける前提ッスか!!」



ギルティーノとザザンのやり取りに笑いが起こる。


この空気感懐かしいな……



___『へ〜面白いじゃん!やろうよサン坊!!』


『げっ…シンバ!!!どこから居たんだよ。』


『怖気付いたのか、サル』


『あーあーあー、やってやるよ。わざわざ揃いも揃って俺がやられるところ見に来たのか?あ?』


『頑張れよ。』


『ギル…お前なら止めてくれるって信じてたのによ!!!俺が怪我して任務に行けなくなった時、どうギルティーノに説明するかを考えとけよバカ共!』____




「俺、喧嘩は専門外の盗人だからよ。そこんとこ宜しく頼むぜ。」



俺の言葉に、ザザンは鼻で笑う。



「そんな言葉に、今度は騙されないっッスよ!」


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