第53話 新たな任務
「よし、サンくん、本部に戻るよ。報告しなきゃ。」
「おう!あ……」
そうだった。潜水艦ねえじゃん。
「俺、また泳ぐのか……?」
「もう。まだ言ってるの?地図見たよね。」
「うん。見た。お前の潜水艦に乗せてくれんのか?」
「えっと。潜水艦、ボク持ってないよ。」
「え?」
「ん?」
じゃあ俺らはどうやって本部に行くんだ?
ゴールドは至って真剣でボケている訳ではないようだ。
「あ……指輪か?」
「えっと。指輪外してもいいけど、また付与しないといけないし、それにボクがいるのにわざわざそんな事させないよ。」
そう言うとゴールドは俺の胸に右手を当てた。
次の瞬間、ふわっと俺の体が宙に浮き始めた。
「うわ、おもしれえ!」
あっという間に海が見渡せる高さまで、俺の体は天高く浮いていく。
ゴールドは地面を蹴り、一瞬で俺の高さまで並ぶと、下からレオの声が聞こえる。
「俺!お前達に会えていい刺激になった。この世には色んなやつがいるって知った。ありがとうな!」
レオは大きな声で別れを告げ、元気よく手を振る。
「ゴールド、降ろしてくれ。」
「うん。」
俺の背中にゴールドが触れると、磁気を失ったのか、重力に抵抗することなくストンと落ちる。
俺がレオの前に着地すると砂埃が舞う。
ゴールドも俺の後を追って来た。
「お前、俺たちと来いよ。」
俺の言葉に、レオは目に涙を浮かべる。
「うん!!」
「なんだ?泣いてんのか?」
俺が揶揄うと、レオは急いで涙を拭う。
「砂が目に入ったんだよ!うっせえな!」
「へー!本当に砂が目に入ってだけで涙って出るもんなんだな!」
俺とレオのやり取りをゴールドは笑みを浮かべた。
「それじゃあ、行こうか。」
ゴールドはレオの肩に手を置いた途端に体が宙に浮き始めた。
「よし!本部へ帰還だあ〜!!!」
俺たちは大きく手を広げ、大空を駆けていた。
「ひゃっはっ〜!!気持ちいいなあ!これ!」
「そうでしょ?喜んでくれて嬉しいよ。」
ゴールドが先頭を飛んでいると、後ろから騒々しい声が聞こえる。
「いーーーやーーー!!!!うわああ!!死ぬ死ぬ死ぬ!!!助けてえええええ」
「レオ、さっきの意気込みはどこに行ったんだよ……」
「いやああああ!うっせえ!!うぎゃああああああ。」
しばらく飛んでいると、レオの声が聞こえなくなった。
振り返ると、レオは気絶していて、抜け殻のようにただ磁力で引っ張られている。
うわあ、大袈裟だな。
俺の様子にゴールドは近付いきた。
「君は、空飛んだことあるの?」
「ない。」
ある訳ねえだろ。どんな質問だよ。
「怖くないんだ。」
「走る時って怖くねえだろ?それと一緒じゃん。」
「……可愛くない。」
ゴールドは、そう言い残すとそのまま先頭に戻った。
「?」
しばらく飛んでいると、本部が見え始めた。
「レオ、起きろ。本部が見えたぞ。」
「無理。今動いたらゲロ吐きそう。」
レオは良いポジションを見つけたとか何とか言って、そこからピクリとも動こうとしない。
「そのまま司令室に行くね。」
「そのまま?」
どのまま?
ゴールドの言葉に理解出来ないまま、次の瞬間には総本部のギルティーノの部屋の窓を俺たちは突き破っていた。
パリィーン___
「ボス、戻りました。」
俺はゴールドの磁気を失い、地に足が着く。
「よっ!ギルティーノ!プラチナ!元気だったか?」
俺が手を振ると、プラチナは俺とゴールドの姿を見るなり、ため息をついた。
「サンくんなら、ともかく、ゴールド〜いつからそんなにアグレッシブ男になっちゃったのさ〜!」
「任務完了したし、今後の作戦には、ボクの生存を他の人に知られるわけにいかなくて。」
ゴールドが言葉に詰まることなく話す姿に、ギルティーノは俺に視線を向ける。
「ああ。才の影響を受けてたから解いた、そしたらこの調子だ。」
「うん。ボスの才も相まって、スラスラ言葉が出てくるよ。」
「それは良いが……アレはなんだ。」
アレ?
ギルティーノが指さす方を見ると、壁に頭から埋まってるレオの姿があった。
「ああ!こいつはレオ!」
俺たちはウォーター大陸での出来事を報告した。
………
……
…
「そうか。基地はウォーター大陸だったか。ひとまず、ルナは気にしなくていい。それで、ゴールドは死んだということにして欲しいと。」
「ああ!そしたら、バツサイ側にも不審がられねえと思うんだけど」
得意気に話す俺に、ギルティーノはバッサリと切り捨てる。
「無理だな。」
「うん、無理だね〜」
ギルティーノとプラチナは考えが一致してるようで、俺の作戦をバッサリ切り捨てる。
「何が無理なんだよ。」
「だってさ〜、この間シルバー失ったんだよ?それに加えてゴールドも〜?ボスの才があっても士気はだだ下がりだよ〜。」
確かに。
士気か……そこまでは考えてなかったな。
俺が肩を落としていると、見兼ねたギルティーノが声を掛ける。
「でも、よく考えてる。成長している。」
そう言うとギルティーノ俺の頭に手を置いた。
「ゴールドの安否はあえて公表しない。しかし、我が思うに、あっちが都合良く解釈してくれるはずだ。」
「都合良く?」
俺がギルティーノの話に理解出来ずにいると、ゴールドが補足する。
「うん。ボクがバツサイなら、こう考える。あっちはシルバーを失ってる。それに加えてゴールド死亡となると士気を下がるのは容易に想像出来る。だから、言えないんだ。って。」
なるほどな。
「だが、作戦自体は文句なしだ。スパイをその場で作れたのも大きい。総じて良くやった。それで?洗脳に対する、お前の策っていうのはなんだ?」
ギルティーノは机に肘を付き、手を組む。
「ああ。俺もゴールドとかリンみたいに、物に才を付与出来れば、洗脳も弾けるんじゃないかなって。」
「なるほど〜!考えたね、サンくん〜!本当にあの、サンくん〜?アップルパイ知らないサンくんとは見違えるね〜!」
プラチナはいつもの調子で俺を揶揄う。
「だから、ちょっと一週間くらい籠って才の特訓したいんだけど……」
「いや、それならやはり、グロース島へ行け。」
グロース島ってウォーター大陸にある島だったよね?
「なんで急にグロース島なんだ?」
「最初からお前にはグロース島に行ってもらう予定だったからな。我からすると、なぜクラシオス島に居たのがか分からない。グロース島までしか燃料積んでいなかっただろ?」
悪びれる様子もないギルティーノに沈みゆく潜水艦を思い出した。
「あ!そうだよ!お前やっぱわざとだったんだな!」
「人聞きが悪いな。我はお前が潜水艦の操縦など、出来るわけないと思っての親切心だぞ。」
「いーや、親切心ってのはしっかりとそのグロース島に着く分の燃料は積んどくんだ。手前で沈んだぞ!そっから泳いたんだよ、俺は。」
「泳いだ?クラシオス島まで?」
すると突然、その場に居た全員が笑い出した。
「泳いたんだ〜!脳筋だね〜!」
俺は急いで話題を変える。
「もういいっ!グロース島に何があるんだ?」
「それは行けば分かる。」
「でも、言えば更に分かるぞ。」
俺の言葉にギルティーノは腹を抱えて笑い出す。
「ハッハッハ!確かに!言えば更に分かるか。口の減らぬ男だな。特訓ならグロース島がいい。」
「確かに、サンくんにピッタリだと思う。」
ゴールドも相槌を打つ。
これ以上は言う気がないのか、早く行けと言わんばかりに圧がひしひしと伝わる。
「ったく!分かったよ。行くぞ、ゴールド。」
「いや、ゴールドには別任務を言い渡す。お前だけで行け。」
「はぁ?!」
《果たして次こそはグロース島へ無事に着くことが出来るのか。》




