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第51話 ウォーター大陸 クラシオス島にて

「サンッ!?消えた??!」



レオの驚嘆する声をよそに、ゴールドは何食わぬ顔で空に向かって地面を蹴る。



「そんでお前は飛ぶのかよッ!!……て、俺は?」


「君、ツクヨミじゃないし、気配殺せないから、連れて行けない。」


「ツクヨミ?悪の組織かなんかか?」



ゴールドは深くため息をつき、レオを適当にあしらう。



「うん。そうそう。だから、邪魔しないでくれる。」


「悪か正義かなんてどうでもいいからさ、どうやったら気配は殺せるんだ?俺、ここ見張っとくよ。」


「一定のリズムで呼吸して、心拍数を安定させる。それを常にやる。それだけ。」



そう言い残すと、ゴールドはあっという間に西の方角へ消えていった。



「あいつらそんな事ずっとやってんのか。よし、負けてられねえ。気配、消してやる!」



《レオが気配を消す呼吸法に必死な頃、基地へ潜入していたサンは気配を出すために足音を出すのに必死だった》



「なあ、あいつの姿ねえな。」

「ああ。でもあいつは幹部だ。今も何処かにいるかも分からねえ。」



お、早速怪しい話してんじゃねえか!



男たちは周りを見渡し、ゴールドの姿が無いか確認しているようだ。



俺は何気なく横を通り過ぎるが、誰も俺に気づかない。


あ、そうだった。

歩く時は、音立てて歩くんだったな。忘れてた。


ドンドンドン。__


俺は地面を踏みならすように歩く。



「おっと、新入りか?先輩に挨拶しろよ」



ようやく俺の気配に気付いた男の一人が俺の肩に腕を回す。


挨拶?なんだそれ、めんどくせえな。



「どうも。」


「どうもだあ?舐めてんのかガキ。」



おっとっと。

今度は礼儀作法を学ばないとだな。



「なんのことでしょうかー。ボクはユーリに言われてここに来ただけですがーーーー。」



俺の咄嗟に出た言葉に男たちは顔を見合せて、男の一人が口を開く。



「おい、ユーリ様って実在すんのか。」



なんだ?その質問。



「なんだよ、会ったことねえのか?」


「あったりめえだろうが!我らバツサイの幹部様だぞ。」



男の熱量に若干引き気味の俺に、ここの連中のゴロツキとは、雰囲気の違う一人の黒髪の男が間に入る。



「そんな貴方はこちらに何をしに?」



お、こいつはここの連中より頭一つ飛び抜けて強い。



「いや、えーと。あれだ、んーと。そうそう。しっかり作戦遂行出来てるか見てこいって言われてね。」



俺、潜入向いてねえな。


アルクくらい演技上手ければなあ。




____『わじの名前が!分からじゃるのか?!……ギルキー……』


『スワリン。』


『スワリン・ギルキーであじゃる……ぞ!!!』___



ああ。アルクも最初は耳真っ赤にしてたもんな。


ふと、アルク・ギルキーを思い出していると、黒髪の男が自分の胸に手を当て、片膝を突いた。



「やはり。そうでしたか。」



おっと、勝手に勘違いしてくれてるぞ。


周りは男の行動に困惑している様子だ。



「あのリーダーが、膝を着いている。」



ふーん。こいつがリーダーか。

想像通りに陰湿そうな奴だな。



「お前がユーリが言ってたリーダーか?」


「ユーリ様が私の事を?!」



あー、こいつはあれだ。シファレンみたいなやつだ。



「いや、そいつから作戦の進捗を聞けってな。」


「左様でしたか。本部へ現れた時より、計画どおりゴールドは我々のDM基地にて足止めを遂行中です。依然として我々はあくまでも闇市を装っており、本質にはまだ気付いていないようです。G基地への侵入者も依然確認しておりません。」



G基地か。覚えとこ。G基地。G基地。


G基地。


ん?……C基地だったか……?


いや、D……?いや、B?


それにしても、やっぱりゴールドが本部へ潜入した時には目をつけられていたのか。



「しかし……」



男は言いづらそうに口を開く。



「しかし?」


「私の呪いが掛かっているのにも関わらず一年以上生き延びています。」



会った瞬間気付いてはいたけど、やっぱこいつが呪いの才持ちか。



「相手が幹部だから仕方ねえだろ。お前そんなに強くねえし。」


「貴方……私が弱いと……?」



あれー、なんか踏んじまったか?

弱いから弱いって言っただけなんだけどな。



「んーまあ、ここの連中よりは頭一つ抜けてるから気にすんな。……な?」



俺が肩に手を置くと、男は突然黙り込んだ。

かと思えば、突然激昂してきた。



「下手に出ていれば抜け抜けと。弱いと言ったこと……後悔させましょう。」



勘弁してくれよ。



「あーあ、あいつ死んだな。」



周りもリーダーの暴走を止めに入る訳ではなさそうだ。



「シノンエイエッー!」



男は、呪文を唱えながら振り上げる拳を、俺は呆気なく止める。


その瞬間、男はニヤリと笑った。



「発動!!」


ハツドウ、ドウ、ドウ……__


男の声が闇市中に響き渡る。



「響いたな〜!ハツドウドウ。」


「へ?何故呪いが……」


「気をつけろ?自意識過剰はろくな死に方しねえぞ。」



男の間抜け面を眺めながら、俺は男の顔面に遠慮なく回し蹴りをぶち込んだ。 男はそのまま壁に打ち付けられ気を失った。



「お前達、敵の力量見極めきれねえやつは早死するぞ。」



周りの連中の空気が凍り付く。


潮時かな〜。

こいつだけ連れていこうっと。


俺は男を担ぎあげ、そのまま振り返る。



「報告されたくなきゃ、しっかり作戦遂行して、ゴールドを騙し続けろよ?んじゃな。あ、そうだ。こいつが戻るまでお前がリーダーだ。よろしく。」


「はい!」



さっきまで俺に肩を回してた男は調子よく返事する。



「……なんの、つもり、ですか。」


「お、目が覚めたか。話は後でだな。とりあえず俺と来い。」



入ってきた壁をすり抜けると、変な音が聞こえてきた。



「すぅ〜〜〜はぁ〜〜〜すぅ〜〜〜はぁ〜〜〜」



レオが何やら深呼吸?しているようだ。

全く俺たちに気付いていない。


ガンッ。

俺はレオの脇腹に肘を入れる。



「カハッ。……サン。普通に、声、掛けてくれ。」


「あ、確かに。ゴールドは?まだ戻って来てないか?」



見渡すがゴールドの姿は見当たらない。



「まだって言っても、さっき行ったばっかじゃねえか。てかそいつ誰だ。」



レオは俺に担がれた男を指差す。



「こいつ?お前とゴールド殺そうとしてたヤツ。」


「コイツがァ?!俺に与えた激痛の分殴らせろ!!」



そう言うとレオは、腰の入ったパンチを男にお見舞いした。


お、いいパンチ打つじゃん。



「そんくらいにしてやれ。喋れねえと困る。」


「貴方、何者ですか……何故、私の呪いが効かないのです。」



俺は男をロープで縛り終えると、地面に寝そべり空を眺める。



「なあ。お前は何でバツサイに居る。」



男は黙り込み、俺の声は虚しく空に吸い込まれていった。

それから俺たちは一言も喋ること無く、ただ時間が流れていった。



「お前達は何者だ……」


「それはもう一人来てから話した方が早い。待ってろ。」



太陽が眩しいほどの青空は、次第に夕日が差してきて、日が沈み始める。



「来たか。」


「ん?」

「?」



俺の言葉に、男とレオは首を傾げる。

次の瞬間、凄まじい物音と共に土埃が舞う。



「お待たせ。」



ゴールドが俺に向けて小さく手を振る。

俺はゴーグルを外して、ゆっくりと起き上がる。


俺が手を高く揚げると、ゴールドも勢い良く右手を俺の手にぶつける。



「ああ。任務完了だな。」


「さすがだよ。サンくん。」


「ゴ、ゴ、ゴールド!……と、サン……?ハッ!ツクヨミのサン?!」



ゴールドの姿を目の当たりにし、ようやく状況を理解した男は口から泡を吹き、また気絶した。



「なんだよ、やっぱお前らすげえ奴らなんだな。」



ゴールドは、気絶している男に意識が集中し、レオの言葉が耳に入っていないようだ。



「えっと。ナニコレ。」


「あんま触んなよ。ユーリ大好き下っ端男だ。」


「え。ナニソレ。」


「こいつの名前。」


「え?」


「ん?」



俺の大雑把な説明に、ゴールドの頭の中は処理出来ずに制止している。



「コレよりも、ゴールドの方はどうだった?」


「バッチリだよ。コード島、グロース島、クラシオス島、つまりレオくん一家が案内していた入口は、()()()()の基地にしか辿り着けない入口だった」


「ニセモノの基地?」



《ゴールドが手に入れたこの情報が、後の世界にどれほど大きな一歩になることをこの時はまだ誰も知らない》


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