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第50話 解

「レオ、お前は敵か?」


「敵って?俺は札を渡しに来ただけさ!」



レオが持っていた札からゴールドに掛けられた才と同じ感じがした。



「その札、才の影響を受けてる。なんで、そんなもの持ってんだ。」


「何言ってんだ?俺は才持ちじゃない!」



レオは今の状況に混乱しているのか、会話が成り立たない。


痺れを切らしたゴールドは、ただ無表情のまま後ろに手を組み、ゆっくりとレオの方へ歩き出す。



「ねえ。君さ。才持ちじゃないことくらいボクたちには見れば分かる。そうじゃなくて、なぜ、札を持っているのかって聞いてるんだけど。」



ゴールドの存在感を前に、レオは腰を抜かし尻もちをついた。



「レオ、勘違いしないでくれ。別にお前を殺したい訳じゃない。お前は俺と敵なのか。それが見極められたら何だっていい。話せ。」


「……んだよ。」



レオは突然俯き、今度は声を震わせた。



「何だよ!!いいよなあ!お前は、16で?強くて?才持ちで?分かんねえよ!!凡人の気持ちなんてよッーーー!!!!」



息を荒らげるレオの目には涙が浮かんでいた。



そうか。



「ゴールド。剣をしまってくれ。」



俺の言葉にレオを包囲していた短剣は、ゴールドの元へと戻っていく。


俺はレオの前まで近づき、目線を合わせるように屈んだ。



「ああ。分からない。俺は親が誰かも分からない。生きてるかも分からねえ。16年間、死体しか転がってねえ場所で俺一人で過ごしてたから、最初は感情さえ分からなかった。やっと出来た仲間もこの前みんな死んだ。お前がどれだけ苦しんでるかは分からない。ただ辛いのはお前だけじゃない。話せねえなら、俺は俺の大切なものを守る為にお前を殺す。」



俺の言葉にレオは一瞬顔を上げたが、また直ぐに俯いた。



「そうか。それがお前の答えだな。」



俺は、剣に手をかける。



「なあ……」



レオがゆっくりと口を開く。



「サン。才が無くてもすげえやつになれるかな。皆からチヤホヤされて、お前みたいに強く。なれるかな。」


「……俺は才に頼らずとも強く生きたすげえやつを知っている。」



俺の言葉にレオは顔を上げた。



「俺の夢は無謀かな、笑えるかな?」


「その夢を無謀かどうかなんてそいつ次第だ。とりあえず動け。その過程で失うものもあるかもしれない。それでも、動いた分、夢との距離は動く。動かなければその距離は永遠に平行線だ。その時点で動けた者と動けなかった者が見る景色は俺は違うと思う。」



俺の言葉にレオは食い気味に答える。



「動いたことで、夢との距離が遠くなったらどうすんだよ。」


「それでも動き続ければいい。寄り道した先で得るものも必ずある。」



俺の言葉にレオは立ち上がる。



「サン!俺……グハッ。」


「レオ?」



レオは突然、血を吐き出した。



「レオ!」


「サンが闇市の壁を抜けて、少し経った時だ……俺の全身に激痛が走った。俺は怖くて、直ぐに父から受け継いだ本を読み漁ったさ。そこには、案内した者が札を渡せなかった場合は、使命放棄とみなし、才が発動すると書いてあったんだ。」


「札って、これのこと?」



ゴールドが内ポケットから同じような札を取り出した。



「ハハ……可哀想に。お前も、もうすぐ死ぬんだな。」


「え、ボク死ぬの。もし本当なら、まずはボスに報告……と。」



ゴールドは、またしても素早く紙とペンを取り出した。



「報告はいいって。ゴールドの方に掛かった才は解けてる。」



右手でペンを持ち、意地でも書く手を止めないゴールドの手を握り制止させると、ゴールドは俺に感心している様子だ。



「君、やっぱり力、強いね。」


「いいんだよ、今は!それよりレオ、死ぬってどういう事だ?」



レオは胸を押さえ、地面へ倒れ込む。


おっと。それどころじゃ無さそうだ。



解放(デリバレンス)。」



グワン___

やべ、調子に乗りすぎたか。


足に力の踏ん張りが効かず、地面に座り込む俺にゴールドはわざわざ俺の左側に周り、右手で俺の体を支えた。



「ああ。これ?ボク、左手動かせないんだ。才の自覚をした時に引き寄せた剣が、運悪く左手に刺さってね。でもいざって時は磁力で動かすから心配しないで。」



そういえば、確かにこいつは会った時から右手しか使ってねえ。


ゴールドも、レオも色々抱えてるもんがあんだな。



「ねえ。君。サンくんが才解いたから平気でしょ?どうしてそうなったの。」



レオはゆっくりと起き上がった。



「分からない。ただ断片的な記憶では、呪いによって生気を吸い取られ、一日と経たず死んでいく。」



おいおい、そうなると、いよいよゴールドって本物のバケモンじゃねえか。



「生気を吸い取る……か。だから、ここ最近上手く言葉が出なかったのかな。」


「ここ最近?お前、いつからその札を持ってんだ。」



レオの問いにゴールドは淡々と答える。



「一年。」



「一年?……ハハ。お前たちバケモンだな。」



レオの呆れている驚きている様子だ。



「俺も一緒にするな。こっちは本物のバケモンだ。俺たちの組織の幹部だからな。」


「え!このガキが?」


「ボク、こう見えて今年で34だよ。」


「は?!嘘だろ?」

「えー?!」



衝撃の事実に、俺とレオの声が重なる。



「なんか、俺、お前たちと一緒に居るとしんどいよ。生まれ持ったもんが何から何まで違う。」



レオはその場に倒れ込んだ。


大袈裟なやつだな。



「レオ、俺たちは俺たちのやるべき事がある。話せるのか?」


「ああ。それが不思議なんだ。」


「不思議?」


「ああ。俺はサンが呪いを解くまで、案内が俺たち一族の使命と信じて疑わなかった。今では馬鹿げた使命だと思うんだけど……突然ハット帽を被った男が二年くらい前かな、俺たち家族の前に現れて。」


「ハット帽……!」

「ハット帽ッ!!」



俺とゴールドは視線を合わせ頷いた。



「いいよ、続けて。」


「ああ。そいつに言われたんだ。お前たちの使命は外部の才持ちをバツサイのDM基地への案内することだって。」



DM基地?なんだそれ。


ゴールドに視線を向けるが、黙ったまま考え込んでいる様子だ。



「でも、ついさっきまで忘れてたんだ。DM基地へ案内してる事も、ましてやハット帽から始まった使命だということも。」



洗脳も俺の才で解けたのか。

だとすると……


俺はユーリの最期を思い出した。



___『ユーリ。洗脳が解けたお前はもう要らぬ。儂が要らぬというのだから、お前はどうするべきだ?』


『直ちに自死すべきです。』


『分かっているなら直ぐにやれ。』



ユーリは何やら小瓶を取り出し、飲み込んだ。___



俺は急いでレオの様子を窺う。



「お前、洗脳解けて、どうもねえか?」


「ん?えっと。平気みたい。」



俺は胸を撫で下ろすと、黙っていたゴールドが口を開く。



「ねえ。ボク、コード島から入る時、眼鏡をかけたおじいさんからお札貰ったよ。誰?」


「コード島か。グロース島が父だから……それは恐らく一年前亡くなった祖父だな。」


「一年前か。ピッタリだね。やっぱり思うんだけど、君たち役目を終えたら、成功、失敗に関わらず死ぬ呪いでも掛けられたんじゃないのかな。」



ゴールドの仮説にレオが少し考えてから頷く。



「そうか。つまり俺達にも予め呪いが掛けられてたのか。だから、俺は今、死にかけてた!!ってことか」



なるほどな。

でも待てよ?


俺の中に次々と疑問が浮かぶ。



「なあ、四つ島があんのに、あと一個の島は誰が案内してんだ?」



俺の問いにレオが答える。



「確かに。コード島は祖父。グロース島は父。クラシオス島は俺。ディコベリー島は……誰も居ねえな。」


「つまり、闇市はバツサイのなんとか基地って訳だろ?みんながゴールドのこと知った上で知らないフリしてんだろ?」



俺が確認すると、ゴールド続けて口を開いた。



「そうなるね。どんな意図が、あるのか知らないけど。」


「俺、潜入して、あっちの作戦暴いてやるよ。」


「それならボクも。」


「いや、一人の方が動きやすい。ゴールドが強いのは分かってんだ。でも、シリウスも強かったんだ。」



俺の言葉にゴールドは少し間を置いて頷いた。



「……そっか。じゃあボクはディコベリー島へ行ってくる。」



ゴールドは俺が何を考えているのか分かっているかのように、今欲しい言葉を掛けてくれる。


シリウスもだったけど、幹部のやつって強いだけじゃない。



「それじゃあ、行ってくるよ!ゴールドも油断すんなよ。」



俺が拳を前に突き出すと、ゴールドも答えて右手を前に突き出す。



「うん。何かあったらサンくんを引っ張るよ。」



俺は地面を蹴り、壁をすり抜ける。

ゴールドから貰ったゴーグルを掛け、基地の中を進む。


さて、任務開始だっ!!!

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