第45話 伝説への道標
俺はギルティーノの部屋でただただ横になって天井を見ていた。
そういえば何日経ったんだろ。
最初の何日間かは何も考えられなかった。
今になってギルティーノの部屋へ任務を終え、報告にくる隊員たちが出入りしているのに気付いた。
噂にでもなっているのか、初めましてのやつばかりだが、俺の事が気になって仕方ない様子だ。
ひっきりなしに報告しに来ていた隊員が途絶えると、俺の顔を覗き込んでくる。
「……もう、泣いてねえよ。」
「お、やっと声が届いた。じゃあこれからの事を話そう。」
ギルティーノは俺を軽々と片手で持ち上げると、そのままソファに放った。
「まず、お前はどうしたい。」
「考えたけど……俺は強くなりたい。」
「そうか。なら学校へ通うという選択肢は消えたな。正直、ツクヨミでお前に純粋な戦闘力で勝てる者は、我、アルク、キーマン、シリウス。この4人だけだ。それ程お前の戦闘センスは飛び抜けている。」
学校か。確かに通ってる暇はねえ。
その4人の内3人が同じ班だったのか。
「修行がしたい。才の使い方を含め。そしてシンバが言ってた世界の真実を知りたい。」
俺の言葉にギルティーノは力強く頷いた。
「ああ。才の使い方も大事だ。今のお前は成長したが、才の使い方という面ではコッパーとゴールド、プラチナにはまだ遠く及ばない。だが、幹部になれる器を持っている。どうだ。」
俺は少し考えたが、首を横に振る。
「俺、任務で世界を周りたい。世界を見たい。そこで何を得られるかは分からないが、得た先でまた歩く道を決めたい。」
ギルティーノは黙り込む。
「うむ。いいだろう。一人で行くのだろ。」
「いいか。」
「ああ。今のお前はよく周りが見えている。心配などしてないさ。任務は追って通達する。考えが変わる前に行け。」
俺はソファから勢い良く立ち上がる。
即座に部屋に戻り、荷物を纏めていると、突如扉の外から俺を呼ぶ声が聞こえる。
「サンッ!!」
扉を開けると、フィルが立っていた。
「私、何も出来なくて、サンの力になれなくて悔しかった!!でもいいのっ!!貴方が前を向いて歩き出す姿を見れて嬉しいの。今日は、これ、貴方にあげたくて。」
フィルは何かを俺の胸へ押し当てる。
「新しい服っ!だってユーリが選んだ服着てたんでしょ!そんなの許せないから、私が!!」
フィルは笑顔には涙の跡が見える。
俺と同じようにフィルも沢山泣いたんだろうな。
「ありがとう。」
フィルが渡した、紫の半袖の軍服には金色の糸でツクヨミの紋章の刺繍が施されていた。
「綺麗だな。」
「へ?」
俺の言葉にフィルは何故か赤くなる。
「ん?綺麗な糸だな。」
「あ、糸?糸ね。私が刺繍したの!」
「それと!!!サンが死んでも私、泣かないよっ!!悲しくもならないし!恨まない!!」
フィル?どうしたんだ。
突然の宣言に俺は驚く。
「だから!!死んでもいいから!!未練遺さず、見たい景色いっぱい見て、やりたい事は全力でやって、世界を見てきて!!」
フィルなりの励まし方に俺は笑みが溢れる。
「ああ!!それはそれはのびのびと生きてやるよ!!」
「うん!!!」
俺とフィルは握手を合わした。
俺は紫の軍服に身を包むと、背筋が伸びる。
腰にはシンバの剣を入れる銀色のベルトを巻く。
シンバの剣は、何度も断ったが、ギルティーノが俺に託すと言って聞かなかった。
本部の入口に立ち、大きく息を吐き、振り返る。
シンバ。ギル。
いや……
シリウス。アルク。
見ててくれ。俺、やれるだけやってみるよ。
「シリウス!!アルク!!行ってくるぞ〜!!!」
俺は潜水艦に乗り込んだ。
「潜航っ!!!」
始まるぞ。
俺の人生第二章が。
……あれ、沈まない。
「潜航っ!!!」
……ん?何でだ?
ああ。説明書渡されてたな。
ベント?……を開く。
ああ。これか。
「よいしょっと。」
シューーーーッ!
激しい排気音が俺の不安を掻き立てる。
へ?これ大丈夫か。
まずは説明書読めるように勉強するか。
《未来も知らぬ少年は、伝説の一歩を踏み出したのであった。》




