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第44話 堕ちゆく光

俺は虚無感と脱力感で天井を眺めていると、こちらへ近づく気配に気付いた。


敵かな。


どうでも良い。


殺されたらそこで俺の人生も終わり。


俺の道もそこでゴールを迎えるってこと。



「サーン。」



この声……ギルティーノか。



俺は、初めてギルティーノに会った時の事を思い出す。



__「我の才は、ポジティブの才。希少才は、時間干渉の才だ。」__



ギルティーノ!!

アイツに頼めば、時間を戻せるんじゃねえのか。



唯一見つけた一筋の希望の光に俺は勢い良く起き上がる。



「こっちだ!」



俺が応えた瞬間、目の前にギルティーノが現れる。



「気配が無いと不便な時もあるんだな。」


「そんな事はどうだっていい!!ギルティーノ!時間戻せるんじゃねえか?こ、これ見ろよ。見た目ちげえけど。こっちシンバ。こっちギル。死んでる。お願いだ。戻してくれ。」


「いや、戻さない。」


「何でだよ。お前にとってシンバの死は困るんだろ!」


「ああ。困るさ。ツクヨミで私に次いで強い男だった。他の幹部達とは圧倒的な戦闘力の差がある。」


「なら、戻せよ。お願いなんだ。」



ギルティーノは首を横に振るばかりで才を発動しようとしない。



「その時ではないと言っているんだ。外に出てみろ。」



部屋からバルコニーへ出ると、国民が王城に押し寄せていた。


国王が死んだからなのか……?

そう思っていたがどうやら違うようだ。



「ありがとう!どこの誰かは分からないが、本当にありがとうございます!」


「私の父はミエーダに殺された!」

「俺も!」

「私も!」


「赤髪の人ー!名前を教えて下さい!!」



俺は状況が飲み込めずに後退りし、部屋へ戻る。



「何だ、あれ。」



ギルティーノは俺の背中を押し、共に外へ出る。



「この国はバツサイと国王ミエーダの陰謀によって支配されていた!正義だと思っていたバツサイに裏切られてたと知った今、突然の事で追い付かないだろう。だが、現実から目を背けるなッ!本日、バツサイの支配から救ったのは紛れもない事実!この国を救ったコイツの名はサンッ!ツクヨミのサンだ!いずれ世界を救う男の名!いずれ世界は変わっていく。希望に満ちた世界へと。力で支配されない世界へ導く!私たちツクヨミは約束するッ!!」



持ち前のカリスマ性とポジティブの才が相まって、ユアン王国は国王を失ったばかりだというのに活気に沸いていた。



違うだろ……ギルティーノ。



俺は英雄とかそういうのになりたい訳じゃないんだ。


ギルティーノと視線がぶつかるがギルティーノは俺に対して頷いただけで何も言わない。



分からない。お前の考えていることが俺には。



シンバはツクヨミにとって大切なんだろ。



なんで才を発動しない。



「ただ……我々は3人の戦士を失ったッ!体制を整える時間が欲しい。気持ちを整理する時間が欲しい。必ず後ほど改めて人を送るッ!以上!解散だ!!」



「「オオオオオッ!!!」」



ユアン王国はすっかりツクヨミを、俺を、英雄とした。


ギルティーノ。シンバとギルの命より、賞賛が欲しかったのか。



「さて、行くか。我に捕まれ。本部まで飛ぶぞ。」


「行かねえ。俺は時間を戻して欲しい。お前がユアン王国に任務を命じる前まで。望むのはそれだけだ。」


「聞けないな。」


「何でだよッ!お前の考える事が分からない!俺はお前とは進んでいけねえ。」



俺は頭に血が上るのを感じる。


ああ……頭の血管がはち切れそうだ。



「ならば、お前は過去に戻ったとしよう、今のように才を自覚し、覚醒までさせる事が出来るのか。何も知らずにその境地までいけるのか。それは窮地に立たされたお前と、そしてシリウスとアルクが繋いだ未来への希望。それをお前は無かったことにするのか。何よりも戻った過去でお前は命を落とすやもしれぬ。繋いだ希望、つまりお前の存在はシリウスとギルの死よりも世界への影響は大きいと一組織のボスとしての判断をしたまでだ。」



ギルティーノの言葉に、俺は言葉が出なかった。



確かに、才が発現したのは絶対にシンバのおかげだ。そしてギルを助けたいと強く思えたから。


他のやつがギルと同じような状況にたっても、俺はそこまで思えなかっただろう。


それが理解できるからこそ、俺は認めたくなかった。



黙る俺にギルティーノはこれ以上何も言わなかった。



ギルティーノはギルとシンバを担ぐとそっと俺の肩に手を置いて、息を大きく吸った。

そして、気付けば本部の入口に立っていた。



初めて来た時とは対照的な本部の入口。



当たり前に、誰も横断幕を持ってやいないし、呑気に手を振るシンバも、感極まって涙を流すギルも、俺の後ろに隠れるピーマンも居ない。


正直、実感がないのか、それともやはり俺には感情が無いのか、死体になったシンバとギルを見ても俺は涙が出なくなった。


ただ死体がある。


ずっと過ごしていたあそこと同じ。


すると、バタバタと足音が聞こえる。


前を向くと、スカートの裾をギュッと握り、涙いっぱいのフィルが立っていた。



「おかえり。サン。無事で良かった。」



フィルは俺に笑顔を向けた。


俺の為に泣いてくれてるのか。



ああ。俺はもうダメだな。

何も感じない。



泣いてるなーと。本当にただそれだけ。



「フィル。すまないが、サンに時間をくれ。」



フィルは溢れ出る涙を一生懸命拭いながら、精一杯頷く。


総本部を歩いていると、プラチナ軍隊員の声が聞こえてくる。



「シンバ様がシルバーだったなんて……」


「俺が一緒に任務へ行っていれば……」


「シルバーに、俺は、シルバーに、認めて、もらうために、ツク…………オェ。」



隊員達の咽び泣く姿に俺は、頭がいっぱいになる。


ああ。俺は何故生き残って、アイツらは死んでしまったんだ。と。

いっその事一緒に死にたかったよ。


まるで出口のない迷路の中を歩いているようだ。



ふと、シンバの言葉が俺の頭を過ぎる。



__『君は大物になるね、きっと』__



……ああ。戻って来いよ。


才発現出来たんだ、偉いねって。

俺の頭に手を置くんだろ。


なんでお前は今、ギルティーノに大人しく抱えられている。


ギルティーノは生理的に無理なんじゃ無かったのか。



ああ。そうか。


俺は何処かでまだギルティーノが時間を戻してくれるかもしれないと期待していたんだ。


しかし、本部に帰ってきた今、それが叶わないと悟った。



もう会えないんだ。


理解した瞬間、俺の視界が歪み始める。



__「お前が、死なずに……みんなが死なずに……絶対…任務を成功させたい。」


「当たり前だ。俺がお前を死なせない!!」


「絶対だぞ!死んだら呪ってやるからな!!!」__



俺は3人で過ごした最後の潜水艦の出来事を思い出していた。


はは……。俺は死ななかったから呪えねえな。




__『俺はあの時お前達に出会い、俺の人生は動き出した。お前達と居ると決めた俺の選択は正解だったと将来の自分に自信持って言える。』__



こんなに辛いなら出会いたくなかった。



俺は涙で前が見えない。

瞬きをすると大粒の涙が頬を伝う。




__『この任務が終わったら俺、死ぬほど鍛える。

だから今回だけは誰も死なないで居て欲しいんだ。

俺の初任務皆で笑って終えたい。』__




終わったらとか無かったよ。シンバ。ギル。




__『サン坊は年の割には大人びてるけどまだまだ赤ちゃんですね〜』


『おばえ〜〜おべばって…おべばってだびずきば〜』

『おい!!!鼻水!!!鼻水ついてっぞ!!』__




今までの出来事を思い出すと涙が止まらず、嗚咽が止まらない。



見兼ねたギルティーノは俺を連れて総本部のギルティーノの部屋に飛んだ。



《三人と出会い、動き始めたサンの運命の歯車は、三人が死して尚止まることはない。》

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