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第40話 人知れず散る花

怒りの任せに、俺はユーリの喉元へ剣を突き立てていた。



「おい、死ぬついでに教えろ。」


「死ぬ気はない。」


「お前が計画的に俺達とユアン王国サン坊が会うようにしたんだろ。」


「ああ。でもそれは上が望んだから。」



望んだ?……アイツが?何の目的があって会わせたんだ?


サン坊は……やはり、バツサイ……



「バツサイじゃない。」



おっと?心読まれてないよな。



「だがバツサイでは有名な御方だ。」


「御方?」



ユーリは俺の一瞬の隙を突いて、俺の腕から潜り抜ける。



「サルはボスの宝物。いや、大事な大事なバツサイの()だ。」



はあ〜。本当に相性最悪だよ。

大事なところは言わず、濁してやがる。



「お前と話してる暇は無い。アルクの魅了を返してもらおうか。」



俺の言葉にユーリは鼻で笑った。



「ギルの魅了の才は、今はミエーダが持ってる。だから俺を殺しても戻ってこない。」


「ふーん。コピーじゃなくて本物渡してんのか。じゃあ、俺の私怨でお前を殺す。」



俺は地面を蹴りユーリとの距離を一直線に詰める。



黒百合くろゆりッ」



ユーリの目の前で一回転、体をひねった勢いでユーリに斬りかかる。


ユーリは俺の攻撃に合わせ、手錠の鎖を俺に斬らせた。



「避けるのだけは上手いな。」


「いつまでも自分の方が強いと思ってないか?確かに9年前のお前の強さは俺達にとっての絶望そのものだった。今でも圧倒的な強さである事は変わらないが、あれから9年、何も対策もしていない訳がないだろう。」



ユーリの体が少しずつ透過し、全く視認できないようになった。



「はー。バツサイのメンバーは才の押し売りにあってるようで大変そうだな。」



当たり前にユーリからの返答はない。


わざわざ透明になったんだ。答える訳は無いか。



生死不定(しょうじふじょう)。」



これは、あいつのあの時の突き技。

俺は気配を感じ取り、見えないはずのユーリの手を掴んで壁へ投げ飛ばす。



「おい、姿は消しても気配はまだ消せねえのか?」



ユーリの透明化の効果が切れているのか徐々に視認出来るようになった時、ユーリはニヤリと笑った。



「……わざとに、決まってんだろ?」



わざと……?何言ってるんだ。……っ!。



「グハッ」



俺の血が全身から勢い良く吹き出る。



「ブラッドローズ。」


「グハッ。」



俺の全身から吹き出ていた血が一斉に固まり、俺の全身に花のように咲き乱れていた。



「対策……しねえわけねえだろ?これは姉さんが開発した、毒薬だ。少量でも体内に入ると、血が即座に凝固し始める。薔薇のように咲き乱れる様から『ブラッドローズ』と名付けられた。」



体内に毒か。


いつだ。いつそんな事を……

ユーリの手を掴んだあの時か。




俺は負けるのか?



アルクに言葉を遺せずに死ぬのか?




「ゲームオーバーだ。さよならツクヨミのシルバー。」



俺がシルバーの胸に手を置くと、赤色と青色の光を引き抜かれていく。



次第にシルバーの目は虚ろいでいった。



「さて、お名前は?」



俺の言葉に、シルバーの意識がハッキリしてきたようだ。



「へ?誰だ?お前……グハッ。」


シルバーの様子に俺は笑みがこぼれる。



完璧だ。あのシルバーの才を奪れたのか。



「シルバー。お前の負けだ。最期というのはいついかなるときも受け入れ難い。記憶が消えてて良かったな。俺からのサービスだ。」





全身が痛い。

動けない。


……いや、痛みが引いていく。


ああ。なんて心地良いんだ。



《ツクヨミ シルバー軍 軍隊長 コード名シルバー。 名をシリウス。齢29にして戦場に死す。》


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