第37話 シンバという男
俺はアルクと共に潜水艦で本部へ向かった。
その間、アルクと話す事はなかった。
あっという間に本部へ到着すると、先に指輪で向かわせた隊員から報告を聞いたのだろう。
コッパー、プラチナ、ゴールド、ギルティーノのツクヨミ幹部が港へ待機していた。
「お前達、話は聞いたか。」
「ああ。シリウスには悪い事をしたと思っている。」
「いや、アルクもツクヨミ隊員だ。仕方の無いことだ。」
嘘だ。お前のせいだ。お前が別任務に俺を飛ばさなければ。
俺の腹はドス黒い感情で支配されていた。
しかし、ギルティーノの存在のお陰で、先程までの何処までも続きそうな暗闇、絶望感は薄れつつもある。
こういう時のポジティブの才ってのは有難いな。
アルクはこの状況に訳も分からないといった様子で辺りを見渡している。
その様子を見た幹部の4人は改めてアルクの記憶は消失している事を再確認した。
そのままアルクは部屋で待機となり、俺たち幹部は総本部へ向かった。
ギルティーノの部屋、指令室に着いた。
「俺の催眠の才で催眠を掛け、幼少期、ツクヨミ入隊の記憶を作りたい。」
「なんでわざわざそんなことするのよ。普通にもう一度学校に入ればいいじゃない。」
コッパーの問いはごもっともだが、俺は頷かない。
「いや、アルクと同じ班になりたい。俺はシルバー、シリウスでは無い、ツクヨミ一隊員になりたい。」
「なってどうするんだ。」
ギルティーノの問いに、俺は一呼吸おいて話出す。
「復讐する為に時間が欲しい。その為には相手に俺とアルクの正体は隠しておきたい。ゴールド。俺達をお前の軍に入れてくれ。」
「ボクの軍にシリウスくんが……?えぇ。ボク、君に命令なんて出来ないよ。」
「無理に命令する必要は無いが、俺を特別扱いされては困る。それよりもお前に聞きたいのが、指輪に磁気以外の干渉があっても従来の役割を果たせるのか。」
「例えば……?」
ゴールドの問いに俺は頷く。
「外見を変えたい。出来れば声も。」
「そうだなぁ……どちらかであれば干渉しても問題無いと思う。……多分。二つ共だと、磁気の才が妨害される可能性が格段にあがると思う……。」
どちらかか……両方が理想だったが、もしもの時のゴールドの才は生存確率を大幅に上げる。
「ならば外見を頼む。」
「声は……大丈夫なの……?」
ゴールドは自分で言った手前、心配になっているのだろう。
「ああ。声は口調で何とかする。」
俺が考え込んでいると、突然俺の顔の前にコッパーの顔が現れる。
「なら、ウチに任せてよ!」
「なんだ?」
「なんだ?じゃないわよ!聞いてなかったのね。アンタをウチがプロデュースしてやるって言ってんの!」
プロデュース……?
「名前はペルで、口調はプラチナ意識の語尾は絶対伸ばす。性格は気怠げなやる気無い感じで、あ!これは絶対。忘れっぽいの、バカ過ぎて呆れられるくらいに。」
コッパー……俺で遊んでないか。
「忘れっぽいってのは何の意味がある。」
「そんなの1番大事よ。絶対記憶の才を持つアンタが忘れっぽいなんて誰が気付くのよ。」
成程、確かに一理ある。
「ほら、やってみなさいよ。」
プラチナっぽく語尾は伸ばす。気怠げな感じで、忘れっぽい。だな……
「金髪の奴〜。悪いけど今日までに頼む〜。俺の髪色はお前と同じがいい〜。アルクとは変えてくれ〜。とか?」
俺の言葉に一瞬空気が止まる。
「まあ、ぎこちなさはまだあるけど、絶対にシルバーって分からないわよ!」
「じゃあ〜アルクの所に行って催眠してくる〜」
俺はアルクの部屋へと向かう間、すれ違う隊員達に声援を受ける。
「シルバーだ!」
「かっこいい……」
この当たり前になっていた日常にハッとした。
不味いな。これは面識がある者全員に催眠を掛ける必要があるな。
そんな事を考えながらアルクの部屋の前へ着く。
………
……
…
「兄さん!ここ!ここが僕の部屋なんだよ!僕も今日からシルバー軍隊員だ!指輪も貰ったんだよ〜!へへーん!!」
…
……
………
クソッ。アルク……兄さんが全部奪り返すからな。
コンコンッ___。
アルクの部屋をノックするが返答がない。
俺は胸騒ぎがした。
急いで部屋に入るとアルクはベッドに横になり、眠っている。
近づくと、アルクの頬には涙の跡が見える。
俺はアルクの頭に手を置く。
「お前の名前はギル。年は18歳。お前は家族を失い路頭に迷った所ゴールドに連れてこられその後学校へ通った。学校の同級生はシファレン、テーラ、アルク。アルクはシルバーと共に消息不明中。お前は冷静沈着。堅物な男で真面目な性格。」
よし、これでアルクとは分からないはずだ。
その後、ギルティーノより全ツクヨミ隊員へ伝達があった。
内容はこうだ。
【ツクヨミ隊員諸君。現在、シルバー軍 軍隊長 コード名シルバーの消息が不明である。よってシルバー軍隊員は直ちに本部へ直ちに帰還せよ。尚シルバーと面識がある者も任務を中断し直ちに帰還せよ。それ以外の者は任務を続行せよ。以上】
といったものだった。
なんだ……この如何にもな文は……。
俺が呆れていると、ゴールドが走ってきた。
「シリウスくん!……じゃなくて誰だっけ……指輪できたから持ってきたんだけど……」
ゴールドから指輪を受け取る。
見た目は……よし、今までとは変わりないな。
俺が指輪を付けると、身長が僅かに低くなり、髪色は銀髪から金髪へと変わった。顔も何かが大きく変わった訳ではないが何故か別人に見える。
「さすがだよ〜。金髪くん〜!」
ゴールドは、まだ俺のペルモードに戸惑っている。
するとアルクの部屋の方から見知らぬ高身長の銀髪男が近づいてくる。
アルクと同じ銀髪か……。
そんな事を考えていると、銀髪の高身長男がゴールドに一礼している。
「ゴールド。この方は?」
この声……そうか。アルクなのか。
俺は何とも言えない感情が一気込み上げてくるのをグッと堪える。
「えっと……ギルくんの班長のシルバーだよ……あ。」
あ。じゃねえんだよ。全部言ってんだよ。
シリウスって言わなければいいとでも思ってんのか。
「シンバさん!俺はギルと申します。共に任務遂行する仲間として宜しくお願いします。」
シンバ……?あ、俺?
聞き間違えたのか……。シンバ。シンバか。
ペルより格段にいいな。
「やほ〜シンバだよ。敬語は要らないし、名前も呼び捨てで構わないよ〜」
「わ、わかった。」
「さあ!行こう行こう〜!」
俺はアルクの肩に腕を回し歩き出す。
アルク。ごめんな。指輪で外見変えて。
全部片付いたら催眠なんて解いて全部話するから。
その時、今が笑い話になるように。
また兄さんって呼んでくれな。




