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第35話 狂い始めた歯車

ジョイン、コリン、ユーリはアルクが向かった方向先へ歩みを進める。



「俺達は運がいい。あいつは『魅了』の才持ちだ。確か、ユアン王国の国王がご所望されており、ボスからユーリに奪取を命じられていた才リストの内の一つのはずだ。」



ジョインは不敵な笑みを浮かべる。



「あのババアが魅了を手に入れて何をしようとしてるのか。気色悪いわ。それも仕方の無いこと。いくら気色悪くてもユアン王国との友好関係を築くためだもの。これもボスの意向。」



コリンの息をするように悪態を着く姿にユーリは呆れている。



「姉さん。何でもかんでも言葉に出して良い訳じゃない。巷では守ってあげたくなるような非力な女がモテると聞いた。」



ユーリの言葉にコリンは表情を変えずに応える。



「結構よ。好みで生きていないもの。愚かな弟の為に言ってあげるけど、モテるからって勘違いしてはダメよ。アンタは顔以外取り柄ないんだから。」



コリンの辛辣な言葉にユーリは固まる。



「コリンそろそろ辞めておけ〜。ユーリは顔モテだけなの気にしてんだからよ。」



ジョインがコリンへ耳打ちすると、コリンは鼻で笑った。



アルク達は元の場所へ戻ってくると、先程までは姿が無かったはずの少年が頭から血を流しながら遠くの空を見上げていた。



「君……痛くないの?」



アルクの声に少年はゆっくりと振り返る。


少年の瞳には光が無く、焦点も定まっていない。



「……分からない。……記憶が何もない。……僕は誰で、……何をしていたのか。ここはどこかも何も分からない。」


「っ!」



少年の様子にアルクは全てを理解し膝から崩れ落ちた。



「班長?……」



隊員達はアルクの様子に困惑している。



「遅かったんだ……もうこの子は才を奪られてる。きっとさっきのバツサイがやったんだ。」



アルクは自身の無力さを悔いている。



「じゃ、さっきのバツサイから取り返すればこの子の記憶って……」



隊員の提案にアルクは横に首を振る。



「僕たちがやるべき事は才の回収であって、バツサイを倒すことじゃない。対バツサイの任務は僕たち新米隊員ではなく、ボスや軍隊長らに認められた一部の隊員達にのみに任される任務だよ。それに、僕たちが変に手を出し、班の誰かを失う事になれば僕は死んでも死にきれないよ。」



アルクの言葉に、皆冷静さを取り戻す。



「いや〜将来有望くんだね!君!!」



突如背後からの聞こえる声と拍手に、アルクは即座に距離を取り警戒態勢をとる。


目の前に現れたのは先程のバツサイの3人組だ。



「それなのに俺に見つかっちゃって残念だね。きっと将来俺達にとって脅威の存在となっていただろう。」



ジョインは腕を組み頷く。

コリンはジョインに続けて口を開く。



「でもそんな状況は有り得ない。なぜなら貴方の才を今から奪うから。」



コリンの見下した態度にアルクは鼻で笑う。



「何を言っんのか知らないけどさ、黙って殺られる僕達じゃないんだよね。」



アルクはジョインの一瞬の隙を逃さず、一直線に距離を詰める。



よし、行けるっ!!


しかし、アルクの背後にユーリが現れる。



「遅い。」



次の瞬間、アルクの腹にユーリの拳が入る。



「グハッ」



アルクの内臓は破裂し大量の血が吐き出た。激しい痛みに動けず、その場にうずくまる。



「おや、手加減したんだが。少し弱ってくれれば才が取り出しやすんだが……すまない。想像するよりも遥かに弱かったようだ。」



ユーリは心にも無い謝罪を済ませると、アルクの胸に手を当てる。


すると、眩しい程の赤色の光の塊がアルクの胸から抜き出てきた。


赤色の光を瓶のようなものに詰めると、あっという間にバツサイは去っていく。


アルクは腹ばって必死に後を追うがそのまま視界が遠のき、気を失った。



「__ク!_ルク!アルク!!」



アルクの意識が戻ると、瞳に俺の姿が映る。



「よし、起きたな。」



俺が一先ず胸を撫で下ろすと、アルクは口を開く。



「君……誰。」



その一言に俺は隊員達へ視線を向ける。


隊員達は下を俯いたまま、俺を直視出来ないで居る。



「実は、バツサイに……」



その一言を聞いた途端に俺は血相を変えて走り出した。



才を奪られたか。どこのといつかは知らんが、絶対に。



「殺す。」




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