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第34話 新緑の目覚め

《時は星歴1716年___


今はシンバと名乗るこの男、齢20にしてツクヨミのシルバー軍を率いる軍隊長コード名シルバー。名をシリウス。


そんな男は現在とある王国で弟の初任務を茂みに隠れながら見守っていた__》


暫くして一人の少年、弟のアルクが茂みに隠れている俺に気づいたようで慌てて駆け寄る。



「もう、兄さん〜〜!!やめてよ!みんなさっきから緊張しちゃってるから!!!」



アルクは恥ずかしそうに俺を茂みから引っ張り出す。



「アルク。俺は別に邪魔しようとしてた訳じゃないんだ……」


「はぁ〜。ほら、見てみてよ。」



アルクと同じ班の隊員は俺と目が合うと途端に駆け寄り、片膝を着き挨拶を始める。



「シルバー!!私共は必ずや班長を命に変えてでもお守りする事を誓いますッ!!」



ツクヨミ隊員から俺への人気は任務を終える事に高まっていき、今では神格化し崇めている者も少なくない。



「も〜!!そーゆの辞めて〜!!!」



アルクは恥ずかしそうに仲間の隊員の肩に軽く当てたつもりの拳を受けた隊員はその場にうずくまり、悶絶している。


アルクの拳の威力を恐れ逃げ出す隊員をアルクが追い掛ける賑やかな様子に俺の顔にも笑みが浮かぶ。



「すまない、アルク。皆も。アルクを特別扱いする必要はない。

学校で良い成績を取っていたからと驕らず、油断せずに任務を遂行するんだ。では健闘を祈る。」



俺はその場を離れ、歩きながらアルク班への任務報告書を確認する。


貧民街の少年に才の疑いか。


大きな木を見つけ、地面を蹴り枝から枝へ飛び乗り造作も無く頂上付近の枝に腰掛ける。



うん、俺は軍隊長らしく不測の事態に備えるか。



……別にアルクじゃなくても初任務の時は手が空いていれば様子を見に行く時もある。



そうだそうだ。職権濫用?……違う違う。



「おとと。」



俺は体勢を崩し、木から落ちそうになる。



「おっ動き出したか。じゃあ、着いていくか………チッ。お前の重みでたった今落ちるところだったぞ。」



俺が背後へ視線をやり舌打ちをすると、背後からギルティーノの姿が現れる。



「弟大好きバカに任務だ。」


「無理。弟、初任務。俺、上司。見守る。分かる?」



俺はギルティーノに首を掴まれた、次の瞬間、気づけば別の任務遂行中のツクヨミ隊員の前に居た。



「シルバー!来てくださったんですね!」



振り返ると、ギルティーノの姿は消えていた。



「待て。俺は何も聞いて……ん?」



服の内ポケットに違和感があり、確認すると、ギルティーノからの手紙が入っていた。



【後はそいつらに聞いてくれ! 天才ダイヤモンド様より♡】



「あのババア。」



俺は読み終わるや否やビリビリと破り捨てる。



「シルバー。実は居合わせたバツサイと交戦中でして。このままですと皆死にます。どうやら皆才持ちのようなありえない強さで……」



隊員の報告の途中だが、俺はゆっくりしてられないんだ。


俺は目にも止まらぬ速さで隊員達と交戦中のバツサイを一人残らず拘束した。


俺の姿をメディア追えなかったのだろう、隊員たちはただただ呆然とし立ち尽くしている。



「何してる。早く才を取り出せ。」



俺の声に慌てて隊員がバツサイのメンバーに駆け寄り、頭にメモリーを当てる。



くそ。偽物かよ。


俺が溜息を吐くと、隊員たちは状況が掴めず困惑している。



「コピー版の方だな。本物じゃない。」



俺は拘束したバツサイの連中の頭に拳を振り下ろす。



「もう拘束を解いていい。何もこいつらはしてこない。それよりスチル王国どっちだ。」


「あっちで……」



俺は直ぐさま走り出した。



「……す。え!もう居ない…やっぱ軍隊長ともなるとバケモンだな……」



俺は今出せる全速力でアルクの元へ向かう。



「兄さんが今から行くぞ。アルク!!」




一方アルク班は貧民街へ作戦会議をしながら颯爽と向かっていた。



「何か不測の事態があれば合図を送る。そしたら必ずさっきの場所に戻る!これは絶対約束ね!」



アルクの言葉に隊員達は頷く。


貧民街へ到着すると、貧民街の有様に一同は唖然とする。


狭い土地に対して驚く程人が密集しており、圧迫感を感じる。


しかし、人々はやせ細り、病気に冒されている者も少なくない。


アルク班は任務の貧民街の少年を探す。


突然、誰かがアルクの服を引っ張る。

アルクは振り返ると、小さな体の女の子と男の子が立っていた。


「お腹、空いた。」

「お金。お金。」


僕は2人には応えず歩き出す。


ごめんな。今は助けてやれない。



「これといって何も感じませんね……どうしますか、班長。」


「うーん。兄さんは、経験を積めば才持ちかどうかが推測が出来るって言ってたけど……」



アルクは腕を組み黙り込む。


少し間を空けて、アルクは勢い良く顔をあげた。


その様子に、隊員達は期待感を寄せる。



「うん、なーんも感じないや!」



悪びれる様子もないアルクに隊員たちは肩透かしを食らった。



暫く貧民街を歩いているが、目ぼしいやつはいない。


すれ違いざまに男女3人組の男の体が当たり、アルクは尻餅を着いた。



「わりぃな。」



男は朗らかな笑顔でアルクへ手を差し伸べる。


アルクは差し出された手を掴み、起き上がる。



この男、強そうだな。

僕が吹き飛ばされるなんて……


「ううん!僕がぼーとしていたのがいけないんだ!ごめんな?」



すると、途端に周りがざわつき始めた。



「アンタら!バツサイじゃないか?兄ちゃんの名前は分からんが、横に居るのは確か幹部のユーリとかなんとかだったか?ようやく、俺たちを助けに……来てくれたのか?」



男達はあっという間に囲まれた。



ユーリ……?あっ、バツサイの幹部だ!確か、他人の才を奪取する才を持つと報告書に書いてあった!


ぶつかったヤツ……よく見れば最近危険人物リストに入った、ジョインという男に似てる気がする。



アルクは状況を把握し、隊員に合図を送る。


隊員達は頷き、全速力で来た道を引き返す。




「おい、コリン、ユーリ。行くぞ。狩りの時間だ。」


ジョインは引き返すアルクたちに不敵の笑みを浮かべた。


《アルクとバツサイとの遭遇に、二人の兄弟の運命は大きく変わった。》



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