第24話 ありがとう
班長の消息が途絶え、二日が経った。
私は何度も王都の門の前へ様子を見に行ったが騒ぎが起きている様子もなかった。
「グラン……どうする?」
キヤラとバックは私を頼りにしているが……この班の班長はシファレンさんだ。基本班長の指示外で動く事は連携が取れなくなる原因になるのでご法度だが……。
「状況がこうでは仕方ない。とりあえず、バックは報告書を本部に提出してもらいたいのでここで任務を離脱してくれ。」
「わかった。」
「キヤラもだ。」
「俺もか??!」
キヤラは一人になる私の事を心配してくれているのだろうが、少しでも班長と合流する可能性を上げるためには見つからない事が重要だ。キヤラは攻撃力は申し分ないが、速さが心許ない。潜入において速さは命に直結する。だから連れてはいけない。
「私はお前を守れない。」
キヤラは私の考えを汲み取ってくれたようで二人は指輪を外した。
ゴールドの『磁力の才』が指輪を外すという条件で発動し、バックとキヤラの体は磁力で引っ張られてるかのように本部の方へと飛んでいった。
私は門の前に張り込み、門番の隙を窺っていた。
よし、完全に日が落ちた。
私は地面を精一杯蹴り、全速力で門を通る。
「ん?猫か?いや、侵入者だ。」
くそ。見つかったか。
「班長!!!何処ですか!!!!班長っ!!!」
私の悲痛な叫びは王都の煌びやかな街並みに虚しく吸い込まれていった。
とりあえず隠れよう。
私は大きな木を見つけ、一目散に登り始めた。
ある程度まで登ると王城の窓が小さく見えた。
しめたっ!班長が王都に潜入してるなら、きっとミエーダに近づく為に王城に居るはず。
街の調査中に購入した双眼鏡で王城の窓を細かくチェックする。
すると私は変わり果てた班長の姿を目にする。
班長はミエーダにピッタリと身体を寄せ、体中に打撲痕や切り傷が生々しく残っている。
それよりも私が驚いたのは、あの班長自らミエーダに忠誠を誓っている様に見えた事だ。
……私はひとまず帰還し報告しよう。
撤退の為、足を踏み出した瞬間。
パキっ。
しまった。枝を踏んでしまった。
やばい。私は双眼鏡越しの班長と目が合う。
すると、班長の顔付きが変わった。
いつもの班長だ!!!
嬉しさと同時に安堵が押し寄せる。
やはりミエーダを油断させる罠だったんですね!!
班長は窓を突き破って私に近づいてくる。
「!?」
私は班長の速さに目が追い付かず、気づけば私の目の前に立っていた。
「聞け!僕はあいつの才に逆らえねえ!!だが、何の才か分かった!!皆に伝えてくれ!!!!」
班長の決死の叫びに私も誠心誠意頷く。
私の肩に手を置き、班長は呼吸を整える。
「ミエーダの才は、み……グハッ」
班長は、突然自身の手で自分の心臓を握り潰していた。
何が何だか分からない状況に彼だけは理解しているようだった。
「今はいい。直ぐにここを出ろ。すまない。」
班長は申し訳なさそうに告げ、私の指輪を外した。
私はゴールドの才によって体が宙に浮く。
視線を感じ、顔を上げる。
王城を見ると、ニヤリと笑うミエーダの姿だ。
くそ!そうか!アイツの仕業なんだ!!!
あんなやつに!!班長っ!!
私は班長に視線を向けた。
班長はミエーダの才から、ようやく解放され安堵した表情を浮かべていたように見えた。
その顔が私の脳裏に焼き付いて離れない。
「せめて班長の体だけでもアイツに渡しません!」
私は本部へ引っ張られる力に精一杯抵抗し、手を伸ばしたが、班長は首を横に振る。
「嫌だっ!嫌だっ!班長っ!!帰りましょう!!」
私の視界は次第に涙で良く見えない。
涙を拭うと、遠くの班長と目が合った。
何やら話掛けられてるようだった。
涙、今だけは出るなよ。
お願いなんだ。
私は班長の口元を見逃さないように目を凝らした。
【あ】【り】【が】【と】【う】
私は班長の最後の言葉を受け取り、本部に着いても尚、流れる涙を止めることが出来なかった。
シファレンの最期。僕は涙を流しながら書き終えました。
ありがとう。そういって死ねる人生。かっこいい。と僕は思いました。
本日の19時、22時の二話投稿にて、シファレン編は完結いたします。
是非感想お待ちしております。




