第19話 師匠と弟子
「ボス。僕は死にませんよ。」
ボスは大きく息を吸って突然僕の前から消えた。と思った次の瞬間班長を連れたボスが目の前に立っていた。
「なんだ〜。緊急事態か〜?」
班長は突然連れてこられ状況が全く掴めていない様子だ。
「シンバ。こいつがユアンに行きたいというのだ。」
「なんで〜?本部はどうすんの〜。さっき任せてくださいって言ってたじゃ〜ん。」
ボス……許せない。班長にそんな言い方したらまるで僕がわがまま言ってるって思われるじゃないか。
「班長、違うんです!僕……ミエーダ許せなくて。」
なんてね。侵入者の男が死のうと心底どうでもいいが、任務成功させて班長に褒められたいんだ!!
「ん〜。行ってもいいけど、作戦は立ててね〜。シファは自分の事強いと思ってるけど上には上が居るからね。」
班長……僕控えめに言っても強いですよ。
なんて言える程空気が読めない訳ではないが、信用されてないみたいで少し悔しい。
「分かりました……作戦立てます。」
「よし、ギルティーノじゃあ戻して~。」
ボスは僕に聞こえないように何やら班長に耳打ちをしている。
ボス、班長に近付きすぎです。と今すぐに引き離したいのだが僕は決死の思いで我慢する。
班長とボスが話し終えたのか俺の方へ班長が近付き、僕の頭に手を置いた。
大切な事なのでもう一度言うが、
班長が!!僕の頭に手を置いた。
「約束その1、一人で行かない。約束その2、自分の力を過信しない。約束その3、任務完遂が難しいと判断すれば指輪を外す。以上!シファ守れる~?」
「はい!勿論です。」
班長は僕の態度に満足気に頷いた。
対照的にボスは僕の態度に何故か呆れていた。
「流石、シンバの弟と言われるだけはあるな。我の言う事より、シンバの言う事が大切とはな。」
「俺に弟は居ねえよ~。」
「僕がなります!班長。」
班長の弟。あぁ、なんて甘美な響き。
おっと、班長とボスが僕を見ている。
「シファ、死にそうになってなくても指輪は外してね〜。」
ボスは大きく息を吸い、班長を連れて消えた。
しかしやはり次の瞬間には僕の前へ現れる。
ボスの時間干渉の才ってデタラメだな。攻略法あんのか?
ボスは僕の肩へ腕を回し、大きく息を吸う次の瞬間、
ボスと僕は学校の図書室に居た。
「うわ!懐かしい!!」
僕が思い出に脳内に花を咲かせていると、ボスが口を開く。
「せめて事前にユアン王国の情報は頭に入れておけ。」
ボスはそう言い残して消えた。ボスも忙しいんだな。
それにしてもここからユアンの資料どうやって集めんだよ。
図書室を一周すると、男女二人の生徒が本を並べている所に遭遇した。
「そこの二人。ユアン王国の資料は何処だ?」
男女二人は僕の声が聞こえると本を並べる手を止め、こちらを見上げた。
「わぁ。シファレンくんだ。本当にカッコイイ……」
「ユアン王国の資料ですね、コチラです。」
対照的な反応を見せる二人だったが、黒髪の少年の方は何故だろう。
僕に怒っている気がする。
「コレとコレとコレです。」
少年は僕の手の上に次々と本を積み上げていく。
何だこの舐めた態度。
「はあ……本当にカッコイイわ……。」
黒髪の少年の後ろに隠れている女子生徒が僕の容姿が気に入ったようだ。
女子生徒の言葉に黒髪の少年はムッとしていた。
ははぁ~ん。そういう事〜。
「おい少年、こっちへ来い。お嬢さんはあっちに行ってな。」
恐る恐る近づく少年に僕は勢い良く肩を回す。
「お前、名前は。」
「……ザザンです。」
ザザンは僕に怯えているのか消え入りそうな声で名前を言った。
「そうか。ザザン。あの女の子が好きなんだろ。」
「え?!は!?何言ってるんですか!!!」
ザザンは僕に核心を突かれたようで取り乱している。
「余裕のねえやつに女は惚れねえぞ?」
「……どうすれば良いんですか。」
お、いいねえ。
ザザンは悔しそうだが素直に僕に教えを乞う。
うん、コイツ気に入った。
「そーだな。語尾に〜ッスとか付けたらどうだ?余裕あるように見えるぞ。」
「はぁ……早く本読んで任務に行ってください。」
ザザンは時間を無駄にしたと言わんばかりにそそくさと女子生徒の元へと戻っていく。
何だよ。ツクヨミにも居るじゃねえか。
決めた。ユアンから帰ったらアイツは俺の弟子にしよう。
ザザンは突然の寒気に身を震わせていた。
「風邪かな?」
《シファレンがシンバとフィル以外に自ら話し掛けるなどどれ程珍しい事なのかこの時のザザンは知る由もない。》
ザザンの口調は、まさにフィルの兄、シファレンの受け売りだったのですね!
ザザンとシファレンの凸凹な二人の関係。
皆さんも気に入ってくれたら嬉しいです!




