第18話 シンバの弟
《時は星歴1722年。本部の警備当番がシンバ班が所属してるゴールド軍だった3年前へ遡る__当時のシンバ班はギル、キーマン。そしてシファレンの四人で構成されていた。シファレンはギルと同じタイミングで学校を卒業以来、持ち前の運動神経を活かした戦闘力はツクヨミ内で目立つ隊員だった。更に綺麗な紫髪に劣らない整った容姿はツクヨミの女性隊員の間では絶大な人気を誇っていた。故に彼は自信家な男だった。皆は彼の事をこう呼ぶ『シンバの弟』と。》
「え!僕も任務行きますよ!同じシンバ班じゃないですか!」
僕は絶賛班長の足に掴まり中だ。
離すわけにいかない。僕は班長と任務に行くんだ。
「お前が離れたら誰が本部守るんだ。」
ギルは班長にしがみ付いている僕を引き剥がしそのまま空中へ放る。
「そりゃあ、ゴールドだろ。」
ギルの分かりきった質問に僕は腕を組み首を傾げる。
「シファ、分かってねえな〜。ゴールドなんて侵入者が来たら真っ先に隠れて出てこねえぞ〜」
「それは流石に……」
班長の言葉に僕は考え直した。
ゴールド戦闘向きの才じゃねえしな。
あの打たれ弱さも考えると……
「……ありえますね。」
班長は笑いながら僕の肩に手を置く。
僕の肩に班長の……手が。
僕の!肩に!!
「シファが居るから任務に集中できるんだぞ〜」
班長の有難きお言葉に僕は嬉しさのあまり涙で前が見えない。
「本部は僕に任せて下さい!」
「しっかりな。」
班長の言葉を噛み締めていると銀髪の堅物男が水を差す。
チッ最悪だ。
「お前に言われなくてもやるよバーカ。」
「はいはい。」
僕は三人を見送った後は本部を巡回していた。
「あ。お兄ちゃんまたサボってる。」
「任務行きたい任務行きたい任務……おっと、そこに居りますは、愛しきフィルさんではありませんか?」
僕は華麗なターンの流れのまま片膝を着きフィルの手の甲に軽くキスをする。
フィルは僕の手を勢い良く振り解くと僕の服で手の甲を拭いている。
「そんな事より学校は行かないのか?」
僕の問いにフィルは呆れている。
「学校はとっくに卒業してるの。なんならヒーラー有力候補とまで言われてるんだから、じゃあ医療長に呼ばれてるから。」
フィルは無愛想に立ち去っていく。
出来た妹を持つと兄ちゃんは大変だぞ。
すると突如として本部中に警報が鳴り響く。
侵入者接近の警報だ。
キタキタキタ!!僕に捕まりたいヤツはどこのどいつだーい!待ってろすぐ行くぞー!!
僕は目を輝かせ目にも止まらぬ速さで見張り台へ向かい、見張り台の隊員に話を聞いた。
どうやら不審な船が一隻、港に停まっているのに隊員が気づいたようだ。
「シンクは?」
「侵入者の姿を既に捉えており、他の隊員達が向かいました。」
「早く言えよ!僕の獲物だぞ!おい、そこのチーター。何処だ案内しろ。」
シンクを装着しているチーターは頷き、走り出す。
僕はチーターの後に続き、侵入者の元へと向かう。
目的地へ到着すると一丁前に侵入者は人質を取り、一触即発な状況に隊員達は緊迫した様子だった。
僕は人質の姿を見た途端、次の瞬間には侵入者の頭を握り地面に埋めていた。
「グハッ…ッ。」
僕が地面から出すと侵入者の男は苦しそうな顔を浮かべる。
「おい。お前。僕の妹に肩回しやがって殺すぞ。」
「へ?すいません。本当に。記憶がないんです。気づいたらここに居て。それであなた達に囲まれたから、咄嗟にっ。」
「そんなのに騙される奴はここには居ねえの。残念だな。何が目的だ?」
「本当に。本当に。覚えてな…」
ドガンッ。
何度か地面に頭を打ち付けるが男は一貫して覚えてないとしか言わない。
妙だな。
「おい、お前。そこに座れ。」
「グハッ。へ?」
侵入者の男は頭を何度も打ち付けられ限界の様子だ。
しかし僕には関係が無い。
「何回も言わねえ。死にたくないのなら座れ。」
「っ、は、はい!」
侵入者は急いで正座をして僕に怯えている様子だ。
「さて、覚えてないのは事実と一旦仮定して、最後の記憶は何処だ。」
「ユアン王国です。俺はユアン王国の貴族に仕えている者で、その日、国王のミエーダが仕えてる主に会いに来た事は覚えていますが……」
「なら何故ここに居るか見当もつかねえのか。」
僕の問いに少し間を置いて侵入者の男は答える。
「心当たりならあります。国王ミエーダ、アイツに会った後からの記憶がないんです。それに私は異様な光景を目にしたんです。」
「異様な光景?」
「主の護衛をしていた者が突然ミエーダの命令を何でも聞き出したんです。」
どこが異様な光景なんだよ。裏切り者なだけじゃねえか。
「裏切り者だったんじゃねえのか?そいつ。」
「異様な光景はここからなんです。主は、ミエーダに死になさいと言われた瞬間、その場にあったナイフで心臓を貫いて……その後俺はミエーダと目が合って気づいたらここに居たのです。」
信じ難い話だが……ユアンか。臭うな。
バタンッ。
音がして男の方を振り返ると
侵入者の男は突然舌を噛み切り血を流し倒れていた。
僕の仮説は確定変わった。
ミエーダは才持ちだ。
「こいつを医療施設へ持っていけ。」
「はい!」
そうとなれば任務任務任務っ!
僕は急いでボスの元へ向かう。
総本部に到着した。ボスの部屋の扉の前に着いてノックをしようとした途端に部屋の中からボスの声が聞こえる。
「シファレンか。入れ。」
僕は扉を開けて、ボスの姿を確認する。
「僕、ユアン王国に行きます。」
「ダメだ。」
「では行ってきます。」
「シファレン。立場が分かっているのか。」
「はい。僕は成績の良い班長に恵まれたただの一隊員です。本部の警備はゴールドが居ますので大丈夫です。」
僕の返答にボスは溜息をつく。
「何故行きたい。」
「任務に行って班長に褒められたいからです。」
「だから行かせられない。そういう奴は足元を掬われて死ぬぞ。」
「僕は死にませんよ。直ぐに戻ります。」
僕にはボスが何を懸念しているのか分からなかった。
シファレンの自信家な所をギルティーノは懸念しているようですね……。
全7話のシファレン編が開幕しました。
皆さん、シファレンの最期を共に見届けてましょう。




