第16話 サンの選択
才の自覚のために俺は数多くの事を試みた。
ジャンプしてみたり、寝てみたり。
水に潜ってみたり、腕を組んでみたり。火が付いた木の棒を手で持ってみたり。高い所から落ちてみたり。
しかし、俺は才を自覚する気配は一向に無い。
俺は訓練場のシャワーを浴びながら、ぼんやりギルの言葉を思い出していた。
__『そいつによって才は無にも宝にもなる』__
「俺の才は俺にとって『無』なのかもなあ…」
俺の進むべき道はこのままツクヨミと共に突き進むべきなのか?
分からない。
越えなければならない壁を越えられずに俺は自信を失っていた。
ぼんやり考えているとふと、親指に付けた指輪が目に入る。
うわ!!そういや、ギルが今日本部を出発するって言ってたな!
こんな所でシャワー浴びてる場合じゃねえ!行かねえと!……どこ行きゃいいんだあ〜!聞いてなかったあ〜!!!
俺はとりあえず総本部へやってきた。
来たはいいけど誰も居ねえな。
ギルティーノに聞きに行くか!
最上階へ上がると、ギルティーノと誰かが話してる声が聞こえた。
「ユアン王国だ。気をつけろ。シファレンの件で我々は警戒されている。」
シファレン……フィルの兄ちゃんか。
「ああ。分かっている。国王の噂が本当なら俺は迷わず殺す。いいか。」
殺すのか。それよりもシンバ……なのか……?
普段とは違う口調と雰囲気に認識が遅れる。
「無理はするな。ここでシリウスを失ってはツクヨミにとって大きな痛手だ。」
シリウス?誰だ。シンバはコード名じゃねえはずだ。
「俺はこの時の為に9年間過ごしてきた。死ぬつもりは無いが……俺は止まれない。」
9年?…3年じゃないのか?シンバの大切なやつってシファレンの事だと思ってたけど違うのか。
「そうだな。配慮に欠けていたか。悪いな!」
ギルティーノはシンバの肩に手を回し俺の方へ近づいてくる。
やべ。バレてたのか?
分かんねえけど、俺はここに居るべきじゃない気がする。
考えよりも先に俺は最上階の窓から飛び降りた。
俺は体の軸を保ち、ストンと垂直に落ちていく。
そして着地の瞬間、一回転して勢いを殺し着地する。
ふぅ。才の自覚の為に高い所からいっぱい落ちた甲斐があったぜ。
それにしてもあっぶね。見られてねえよな!と一旦信じて、外に出入りするところ行ってみっか
風を切るように走る俺の姿はツクヨミに来る前の俺とは見違えて成長している。
皆、港へ集まっているようだ。
よし!まだ二人は来てない。
「サンは着いたか。あとは、シンバだけだな。」
__『俺はこの為に9年間過ごしてきた。』__
俺は先の出来事を思い出す。
暫くしてギルティーノとシンバが港へ到着した。
「いや〜、どこ集合か忘れちゃってよ〜」
いつもの飄々としたシンバだが、目の奥には何処と無く覚悟のようなものを感じる。
「お前は記憶力というものが無いのか。」
ギルはまたかと言わんばかりに呆れている。
「それじゃあ〜皆さんお元気で〜!!」
プラチナが元気に見送り、俺たちは潜水艦の入口へ向かう。
「サン!!」
フィルの声に振り返ると涙を堪えて立っていた。
「生きて。帰ってきて。」
俺の為に泣いてくれているのか。
「ああ。帰ってきたらお前の話が聞きたい。」
俺は心から思った。
フィルの事が知りたいと。
フィルはゆっくりと頷き、花が咲くように笑った。
シンバとギルが先に潜水艦へ乗り込み、俺は後に着いて行く。
シンバの様子は全く変わらない。
シンバが何者かは、俺からは聞かない。
シンバが誰であろうと信じる。
それが俺の選択だ。
シンバの意外な一面が見れた回でしたね!
シンバ=シリウス?
シンバは何者?敵なのか?
今後の動きに注目です!!




