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王都、そして教会

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門が近付くと荷車を降り、ローブのフードを被って荷車を押していく。

「ふわぁ…そこのお前、名前は?」

「リズ・ブランです」

「通行目的は」

「魔石の売却です」

「よし、行っていいぞ」

投げやりに済まされた検問を通過し、門を越える。門番にはどうやら平民が採用されているようだ。前回来た時はこうではなかった。王宮騎士団が門番をしていたはずだ。これもお偉方の立案なのか。


 門を抜けると、眼前に華やかな王都の景色が広がった。王宮からは離れているが、それでも賑わっている大通りに来るのは4年前の建国祭以来だ。荷車は路地裏に置いておく。他の店のものと混じって、目立つことはない。

 土産屋の看板が下がった店に入る。ここでは王都の地図が観光客向けに売られているのだ。

「お客さん、一人かい?」

「えぇ、親戚に会いに」

嘘は言っていない。現に私は家族に会いに来たのだから。

「女の子一人はあぶないさね。なにしろ最近、ゴロツキが歩き回ってるもんだから」

「そうですか…ありがとうございます」

やはり王都の治安は少し悪化したようだ。施行して間もないので、それほど顕著では無いというだけだろうが。


地図を手に入れると、路地裏で広げる。

現在地は通過してきた王都の西門から離れていない。王宮は王都の中心にあり、セフィラ教会はそこから若干南寄りにある。東には王立学園があり、貴族の屋敷は各地に点在しているようだ。

王都中心、つまり王宮に近付くほど警備は厳しくなる。なのでできるだけ外を回って南に向かう。早々にどこかで宿をとりたい。教会近くの宿は恐らく質は良いが宿泊料が高い。平民向けの宿は教会から少し離れた所にあるのだろう。歩いている途中に探せばいいか。


それにしても…


歩けば聞こえてくるのは元聖女…シエラへの心無い言葉。

「聖女を騙るだなんて」

「ライア様の手柄を全部横取りしてたらしい」

「さすが、田舎育ちは違う」

「早く処刑されればいいのに」

シエラへの国民感情は最悪だ。想像はしていたけど、実際耳にするとやはりひしひしと伝わってくる。

真偽の程は分からない。もしシエラが本当に罪を犯していたなら、この反応も死刑になるのも当然だ。何も言うことはできない。間違っているのは私。ならどうして助けるのか。


罪は裁かれるべき。それ以上に、妹が大切なだけ。

大丈夫、貴方がたのお嫌いな元聖女は私がどこへなりとも連れ去ってあげるから。






しばらく南を歩き回り、手頃な宿を見つけた。部屋には簡素なベッドとテーブル、椅子しか置いていない。まぁ、長居はしないので充分だろう。料金は先払いしておく。こういった宿は先でも後でも滞在分の料金さえ貰えればいいの精神だ。いつ出ていっても気にかけられることはない。

地図を広げ、教会周辺を見る。最短ルートで王都を脱出するなら一番早いのは南門。

南側には騎士団の詰所がない。つまり敵は教会常駐の騎士と、王宮からの派遣が一番早い。

教会は血や死、穢れを嫌う傾向がある。詰所がないのは恐らくそのせいだ。繁華街もないので、他と比べてトラブルは少ないのだろう。

窓の外を見る。距離はあるが、ここからもセフィラ教会が見える。相当に大きい。当然だ、国内随一なのだから。

警備も多いだろう。神官の数も、使用人の数も。

「とりあえず…見に行くか」


宿から教会まで距離はあったが、馬車を使うほどではない。荷車を押しながら歩いていく。まずは南門の様子から。

なるほど、西門より警備がしっかりしている。というか平民ではないな。恐らく王宮騎士団だろう。西門が不遇なだけなのか、教会…新聖女が近い南門だけ特別なのか。後者だろうな。

教会襲撃…というか侵入だけで済ませたいものだが、騒ぎになればここにも知らせは来るだろう。警備が強化される前に脱出したい。ダメなら強行突破。

経路を確認しながら教会まで歩いていく。昼でも人通りが少ない場所、目につきにくい場所、物が多い場所。荷車はこの辺りに隠しておこう。


ようやく着いた。

噴水広場から正面にあるセフィラ教会を眺める。思わずため息が出る。広大で荘厳な外観はまるで城のよう。平民の私が今まで見てきた建物の中で一番大きい。王宮でも見れば話は変わってくるかもしれないけど。

中の構造も把握したい。だけど、セフィラ教会に出入りできるのは貴族や富裕層だけ。身なりからして平民な私は入り口で止められてしまうだろう。

ならどうするか。


噴水の側に腰掛け、目を閉じて魔力を抑制する。しばらく待っていると、肩に何かが触れた。目を開けると肩に白い鳩が止まっている。

あぁ、運が良い。

白い鳩は王国では平和の象徴、神の遣いとして扱われる。

「おまえ、少し手伝ってくれる?」









「きゃっ!」

「ちょっと、どうしたの?」

「今、何か入って…」

白い羽根がヒラヒラ舞っている。振り返ると、白い鳩が部屋を出ていくところだった。

「あら、白い鳩じゃない!」

「どうする、捕まえる?」

「とんでもないわ!神の御遣いなのよ、そのままにしておきましょ」

鳩が滑るように教会中を飛び回る。廊下、告解室、礼拝堂。今日は参拝者はいないようだ。聖堂は閉ざされていて入ることはできない。神官達の住居は教会と隣接している。この時間、神官達は忙しなく廊下を歩き回っている。外の警備は教会を囲むように配置されており、中は重要な部屋の前にそれぞれ配置されているようだ。

応接室だろうか、上品な造りの扉から二人の男が出てくる。神官服とは違う、身なりからして貴族だろう。あまり良い対応をされなかったのか、不快げだ。

「クソッ、こっちの話なんて聞きもしない」

「教会相手に下手打てないからね〜」

「使用人から聞き出そうとしても口割らねぇし、神官なんて…あの新聖女シンパ共!」

「誰が聞いてんのか分かんないのに…あ?鳩?」

「は?いいですよね、鳩は呑気で」

「神の遣いとか言われてんだけど…」

諸々気になる会話だが、今は気にしない。とにかく内部を把握しなければ。


飛んでいるうちに中庭に出た。薔薇のアーチから入り、百花繚乱の庭園を飛び回る。奥まった東屋に、二人の男女がいるのを見つけた。

「エディ様…」

「ライア…」

あの紫なのか黒なのか分からない髪色は王族特有のものだ。平民でも流石に現王族の名前は知っている。実物は初めて見るが、エディ…恐らくイディオット第一王子殿下。

そして、女。シエラと違い、少し青みがかった白を真っ直ぐ背中に流している。瞳は青。なんだろうか、青としか言いようがない気がする。主観で言うなら、平民向けの絵の具のような色だ。白髪青眼と言えなくもない、あれは…


ライア・ダチュラ。


二人は東屋に座り、抱き合っていた。

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