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【第一章:任務と残響】
革命から始まった戦争は、終わることなく続いていた。
各地で死者が増え、補給は滞り、命令すら途切れがちだった。
彼女と男は、前線の掃除係だった。
仲間の捜索、敵の残党狩り、崩れた補給所からの物資の回収。
そのすべてを、自分たちの脚と感覚に頼って続けていた。
補給所Cは、静かだった。
焼け跡の中に、敵兵の死体が三体。崩れた壁。破れた通信機。
だが、その中に、ひとつだけ息をしている者がいた。
少女だった。
十歳ほど。煤に汚れた顔。腕を縛られていた。
生きていたが、声もなく、ただ震えていた。
「生きてるな」
「……ああ」
ノノが少女に近づいた。
音を探るように、ゆっくりと歩いた。
視線ではなく、耳で少女の存在を捉え、距離を測る。
「立てる?」
少女は答えなかった。
けれど、倒れなかった。
それだけで、十分だった。
その日から、三人になった。