【プロローグ:闇のなか】
こんにちは!ユイです!
2作目となります!
1回消してしまったのでまた載せておきます!
彼女は銃を抱いて、壁に凭れ、蹲っていた。
戦場は静まり返っていた。
硝煙と、黒煙と、焼けた血の臭い。
空は黒く染まり、遠くで爆弾の光が赤く揺れていた。
足音が一つ、ゆっくりと近づく。
彼女は動かない。
闇に慣れた目がなければ、誰も彼女を見つけることはできないだろう。
「まだ生きてるか」
男が小声で言った。
彼女は返事をしない。
代わりに、膝の上で銃がわずかに揺れた。
男はその隣に腰を下ろし、壁にもたれた。
焼け焦げたビルの内部には何も残っていなかった。
道路には瓦礫が散らばり、それがこの建物の一部だったことだけが分かった。
戦争は空爆で始まり、三日目にしてようやく落ち着いた。
だが、仲間の大半は、その三日間で焼かれていった。
彼女は、何も言わなかった。
話す気力もない。
「水、あるぞ」
男が水筒を差し出した。
「なら、いい」
それだけ答えて、彼女はまた黙った。
それは確認でしかなかった。
二人はしばらく、眠った。
夜明けはまだ遠く、夢は昨日の続きだった。
お読みいただきありがとうございました。
たった三人の物語ですが、誰かの心に残ってくれたなら、それがなによりの救いです。
「静かな物語」が好きな方の目に届くことを祈っています。