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第92話 さらなる深淵

目的

◆帝都地下迷宮の謎を解き明かす。

◆異形の神々の顕現を阻止する。

◆皇帝オズワルド1世の手掛かりを探す。

◆迷宮内でメアを見つける。

◆異形神の信奉者を探す。

「えぇ、ウィル君これどうなってるの……?」

「ああセレナさん、アイリーンにティタンも」


 風呂から戻った女性陣が最初に目にしたのが男どもの惨状だった。半数以上が倒れて頭を冷やされている。


「熱湯風呂で我慢比べを始めちゃって」

「ガキかよ」


 エルフとドワーフが張り合いはじめ、ガロまで煽るもんだから勝負になってしまったわけ。そこに何故か<白の部隊>まで割り込んできて、互いの意地をかけた熱闘は全員ノックアウトで幕を閉じた。

 ちなみに俺はずっと傍観してて、ガロは毛が暑くていち早くダウンした。


「テメェら~!」

「うおっ!?」


 俺の頭を誰かが引っ叩く、と思ったら何か違う。


「人が頑張って探し物してたのに風呂入って楽しんでたにゃー!」

「何だマイケルか……」


 黒いネコモドキがフシャーとするのを見て昔飼っていた猫を思い出す。あの猫は私の食事をつまみ食いしたが、毒が入っていて死んだのだ。


「落ち着け、怒りで形が崩れてるぞ」

「おっといけないにゃあ」

「何だこいつ、猫か魔物か?」

「こいつはあれ、それ、ホセの使い魔だよ」


 ティタンにはそれで納得してもらう、似たようなものだろ。


「こちとら言われた通りに先遣隊とやらを探してたら、良いもの見つけて帰って来たってのによぉ~、お前らときたら」

「こっちだって大変だったんだよ、番人と戦ったりしてな」

「マイケル、いったい何を見たの?」

「七層に行く階段を見つけたのにゃ」



***



 俺たちはエドウィン皇太子の元で詳しい報告をした。


「先遣隊については残念だった」


 <冒険者ギルド>の登録証で身元を調べ、全員の死亡が確認された。遺体は酷い有様で、埋葬する場所もなかったので火葬にしてある。


「早速犠牲者を出してしまったな……」

「だがエドウィン、失うばかりでもない。ウィル、例の物を」

「うん」


 番人を倒して見つけた物、皇族の印章付き指輪を皇太子に渡す。


「おお、これはまさしく皇族の指輪だ!」

「けど……」


 調べてみて気になったことがある。指輪には数字が刻まれていて、あとちょっと古い。


「ふむ。私の指輪もそうだが、皇族は成人した時にこの指輪を与えられる。数字はその年代で、諸君が見つけたものは祖父マクベタス1世の成人した年が刻まれている」

「ではオズワルド陛下の指輪ではないんですね」

「それがな、我が父は自分の指輪をどこかで失くしたため、祖父が薨去(こうきょ)した折にその指輪を受け継いでいた」

「それじゃあ」

「うむ、これは紛れもなく我が父の手掛かりだ」


 親子で受け継がれた指輪か……。俺が垣間見た記憶は、マクベタスとオズワルドの思念が指輪に残っていたのかもしれない。


「よくやってくれた、本当によく……」


 感慨深いエドウィン。数年かけた迷宮探索で初めてとなる父親の手掛かりだ、当然のことか。


「……それで、報告にあった件だが」

「マイケル君、殿下に話して差し上げよ」

「にゃ」

「猫……いや猫なのか?」


 マイケルが探索中に見つけた下層への階段、そこを下りた先で見たものとは。


「暗くて嫌な所だったにゃあ。死体とカビの臭いがすごくて、そこら中にアンデッドがウロウロしてたにゃあ」

「次はアンデッドの巣窟か……」

「今までとは違ったにゃ、アンデッドの数が多すぎて奥までは行けなかったにゃあ」


 ちなみにマイケルがにゃあにゃあ言うのは癖とかでなく、猫っぽく振る舞いたいだけだ。


「厳しい戦いになりそうだな」

「殿下、まず六層へ進み腰を据え直しましょう」

「うむ。それにしても六層の番人をこれほど早く倒すとは、またお手柄だなウィル」

「皆の協力あってのことですよ」


 そう言って仲間たちの方を振り返るけど、エリアルは目を逸らすしジェイコブは無心で考えが分からん。ティタンたちは早めにダウンした負い目か苦笑している。


「……皆で勝ちました」

「そうか。うん、そうか」


 そうなんです。そうなんですけど。


「これより部隊を編成して六層の制圧を始める」

「他にも陛下の手掛かりがないか隅々まで調べましょう」

「宝物が隠されている可能性もあります、味方同士で奪い合いにならぬよう注意せねば」


 話が六層の制圧作戦に移った辺りで俺たちは退出した。まだ疲れが残っているので宿舎で眠ってしまおうか。


「じゃねーティタン」

「おう、借りは今度返すぜ」


 手を振るティタンたちと別れる一方、エリアルやジェイコブたちは言葉少なく去っていく。まだまだ壁の厚さを感じるな。


「<白の部隊>は貸しを作れず憮然(ぶぜん)としているだろうな」

「すんなり共闘とはいかないのかな」

「ムリムリ、あのジェイコブさんて聖堂第一、信仰のためなら何でもするような人だから」

「アイリーンにそこまで言わせる人かぁ……」


 信頼関係の構築は今後の課題だが、その他にも問題は残る。


「番人は倒した、先遣隊や皇帝の手掛かりは見つけた。だけど……」

「例の信奉者は関係なかったみたいね」


 異形神の信奉者は今もどこかに潜伏しているのか。俺たちを阻止しようと刃を研いでいるのか。


「前に敵、後ろに信奉者、これで次の階もしんどかったら嫌だぜ」

「恐らく、次もしんどくなるのだよ」


 ホセの言葉に俺たちは足を止める。


「ホセさん、七層がどんな場所かもう知ってるの?」

「いいや、だが予測はある」

「予測?」

「かつての帝都地下に何があったか、という話だ」

「そういえば……」


 前に言っていた、第三層は秘密の脱出路と通じる地下水道、第五層は地下墓地。それらのように第七層の下地となる空間があるというのか。


「そこには何があったんだ?」

「それはだね……」

「……」

「まだ言うには早いかな」

「テメェ」

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