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第79話 講義

目的

◆帝都地下迷宮の謎を解き明かす。

◆異形の神々の顕現を阻止する。

◆皇帝オズワルド1世の手掛かりを探す。

◆迷宮内でメアを見つける。

==============================================


 ……よいか、その扉はけして開いてはならんぞ。


 開ければ何があるかだと? それは知らぬ方が良いのだ。


 危険なものかだと? そうだ、ある意味では危険なものなのだ。


 大事なものかだと? そうだとも、とてもとても大事なものなのだ。


 いつか開くべき時が来るかもしれぬが、それまではけして開いてはならない。


 覚えておくのだぞ、■■■。


==============================================



「誠に申し訳ありません……」


 ギルバートの親族が頭を下げる。第五層攻略の訓練に招かれたギルバートだが、もうしばらくギルドハウスで預かることになってしまったのだ。


「陛下、今しばらくお側に……この剣でお守りします」

「この調子で動こうとしないものでして。侯爵様にはご迷惑をおかけします」

「元々お招きしたのは私どもです、いくらでも逗留なさってください」


 この老騎士、未だに俺のことを皇族の誰かと思い込んでる状態で、なかなか帰ろうとしないのだった。まあそれも良いか、まだこの人と訓練できると思えば。


「でも驚きました、侯爵様にお招きされてからの方が元気になったようで。やはり剣を振るってる方が性に合っているのかもしれません」


 そんなことを言いながら親族たちは帰っていった。


「さて王子、今日の稽古はちと厳しくしますぞ」

「まだご飯食べてないよ」


 こんな状態のギルバートだが少し尋ねてみたいこともあった。


「……ギルバートさん、オズワルドとはどんな人物だったんですか?」

「……」


 黙ってしまった。同じ時代を生きた人の証言を聞いてみたかったのだが。




 現在、帝都オルガは熱気と緊張を高めつつある。皇太子が正式に迷宮への大攻勢をかけると発表、各地の諸侯に招集をかけている。それに合わせ帝国に属する周辺国にも参加を呼びかけ、迷宮攻略を生業とする冒険者たちも帝都に集結しつつあった。


 これで迷宮が完全攻略されるかもしれない、そんな囁きがあちこちから聞こえる。それは侵食以来、帝都が完全解放されることを意味し、同時に迷宮で稼ぐ最後で最大のチャンスが迫ってきたとも言える。


 チャンス、という言葉に以前ならもっと胸が躍ったことだろう。だが今の俺に去来するのは迷宮の謎が明かされるという期待と、同じくらいの不安だった。何が不安かというと表現が難しいのだが、開けてはいけない箱を開くような言葉にしがたい感情なんだ。


 その不安をどうにかしたくてか、俺はホセの姿を探した。


「マリアン、ホセさん見てないかな?」

「先程ベッシと居間にいるのを見ましたよ」


 ベッシと一緒か。それはそれで丁度良いかもしれない、行ってみよう。


「ところでウィルさん、ホセさんのことですけど」

「どうかした?」

「サンブリッジの屋敷から連絡があって。ホセさんから贈っていただいた花が何日経っても枯れる気配がない、と言うのです」


 ……ホセめ。永遠に枯れない花とか言うんじゃないだろうな。


「どういう花かそれとなく尋ねてみたのですけど、はぐらかされて……」

「怪しい花じゃないと思うよ、心配ないって」


 多分。




 居間に向かうと確かにホセとベッシがいた。側にある謎の物体は最近作ったという紅茶自動抽出ゴーレムだろうか。ベッシが紅茶をすすりながら渋い顔をしている。


「おおウィル、お主も一杯どうか?」

「はあ、いただきます」

「ところで何か用事でもあったかね?」


 ホセが開口一番に聞いてくる。さすが賢者、俺の気配だけで察せられたかな。


「実は色々尋ねたいことがあるんだけど、忙しくない時でいいから」

「差し支えなければこの場で話しても構わないが」

「ワシは席をはずそうか?」

「いえ、ベッシさんも一緒に聞いてくれませんか?」


 席に着き心を落ち着かせるため紅茶を一口。……これは俺でも分かる、この紅茶はマズイ。


「それで話というのは?」

「皇帝のことを知りたいんだ」


 皇帝オズワルド1世、アルテニア帝国の支配者。帝都の地下に迷宮が出現し、魔の侵食が帝都を覆った最中、皇帝は行方不明になったと聞かされている。


「エドウィン皇太子からも皇帝の手掛かりを求められてはいるけど、俺は皇帝本人のことは人づてに聞いた程度だ。二人から見た皇帝のことを教えてほしくて」

「ふむ……」


 唾を飲み込みながら二人の反応を伺う。何しろ“狂帝”と呼ばれ世間の評判良からぬ皇帝だ、口を開きにくいのは無理もない。


「ウィル、それはこれからの戦いに必要なことなのだね?」

「必要だと思う」

「私に語らせれば長くなるぞ」

「ふむ……ウィル、ホセ。この話、他の者たちにも聞かせてやってはどうか」




 というわけでギルドの仲間にも声をかけ、広間でホセの講義と相成った。予定と少し違ったけど俺はホセの話に耳を傾けるのだった。


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