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第49話 巣窟

目的

◆帝都地下迷宮の謎を解き明かす。

◆皇帝オズワルド1世の手掛かりを探す。

◆異形の神々の顕現を阻止する。

◆第三層で新たに発見されたエリアを調査する。

 その後も新たなエリアを進んでいく。ガロとホセが何か言いながら魔物を退け、ウィル君が罠を見つけては解除していく。


「あれは……箱」

「宝箱?」


 とある部屋で大き目の宝箱を見つけた。さすが人の来てないエリアは物が残ってる。


「ウィル君、調べてみて」

「はいはい、でもあまり期待しないでね」


 ウィル君が宝箱をしげしげと確認する。ほどなく道具を取り出して鍵開けにかかる。

 ……速いというか早い。普通は罠とか魔物、ミミックなんかが潜んでる可能性を警戒するけど、彼の場合さっさと見極めてしまうみたい。


「鍵はかかってないや」

「……ということは?」


 オープン。中身は……穴の開いた革靴。


「ゴミ入れだな」

「ええいこのハズレ宝箱が!」

「セレナさんカッカしないで」


 うぬぬ情報代ぐらいは取り戻したいのに。


 その後もいくつか部屋があったけど大した物は見つからず。ただ所々に人間のいた形跡が残っていて、そこが探索の肝になりそう。


「……空気の流れがある」

「それに何だこの臭い、ウエッ」


 ガロが鼻を抑えた。ほどなく私たちにもかすかな腐臭が感じられるようになる。


「広い空間があるな」

「あれってまさか……」


 眼下に焚火の灯り、その周囲に蠢く大量のゴブリン。ここは奴らの大規模な集落みたい。

 身を隠しながら観察、見えるだけでも数十匹はいるか。こういう連中がたまに地上まで這い出してくるんだね。


「どうすんの、戦う?」

「無理だよアイリーン。備えがないし全体の数も分からない」

「ガロは鼻がダメみたいだしね」


 ゴブリンの住処にはゴミが積まれたままで酷い臭いを放っている。どうして奴らは平気なんだろう、ガロはもう涙目なのに。


「地上に戻ったら報告するとして、今は迂回してもっと奥を探りたいな」

「妙だな」


 ホセがポツリとこぼす。あのゴブリンたちに気になる点でもあるのかな。


「人口密度が高い。狭い場所に押し込められているような感じだ」

「狭い場所……まあ地下だからね」

「普通ならもっと勢力を拡大しようと動く所だ。何か彼らを押しとどめる力が働いてるのか……」


 考えても分からない、私たちは身を潜めながら離れることにした。


「うぬ」

「どしたのガロ?」

「静かにしろ、この先にゴブリンがいる」


 慌てて身をかがめる。今度は音だけで察知したのかな。


「確かにいるな」

「ウィル君も分かるの?」

「ずっと先に一人だけ、見張りかな」


 何で分かるのかは置いておいて。見つけたのは良いけど面倒ね、無理やり突破しても仲間に気付かれたら囲まれかねない。ここは密かに処理したいところね。


「ホセさん、暗い所で目が見えるようにできる?」

「簡単なことだが、戦うのかね?」


 私も役に立つ所を見せてあげよう。ホセに魔法をかけてもらうと足音を忍ばせて動く。

 見える。手製の弓を持ったゴブリン。こちらには気付いていない。ここの空間は空気が流れているから風下を選んだし。闇に溶けるように静かに、全神経を尖らせて繊細に、1インチずつ進むような地道な歩み。


 たっぷり時間をかけてゴブリンの背後に回り込んだ。後は口を押え、短剣を首元に突き込む。

 腐臭の中に血の臭いが加わった。腕の中でもがくゴブリン、その動きが止むまで力は緩めない。やがて完全に息の根が止まるのを確認すると、仲間に合図して引き寄せた。


「セレナさん……うわぁ!」


 ウィル君が目をまん丸くする。今の私返り血とかで凄いことになってるだろうなー。この装備は買い替えだ、また出費がかさむ。


「しーっ、静かに。血の臭いでそのうち気付かれるかもしれないから、急いで離れよ」


 全員確認、そそくさとゴブリンの巣窟から離れていく。任務完了。


「セレナって結構スゴ技持ってたんだねー」

「他にも役立ちそうなスキルあんのか?」

「あるよ、持ち物や装備品の値段を言い当てるとか」

「でも紛い物は見抜けねえのか」


 ガロが鼻で笑う。あれ、私が騙されたことガロに話したっけ。何だか記憶に欠落がある気がする、う~ん思い出せない。




「ガロの鼻は大丈夫?」

「まだちょっと鈍いけど、まあ大丈夫だろう」


 ゴブリンの住処を抜けるとまた地下水道の迷路に戻った。そんな中でやけに整った部屋を見つける。――そして再び宝箱発見。


「今度は当たりますように……」

「宝くじかよ」

「これは鍵がかかってるな」


 それでもちょちょいと開けるウィル君。私も昔やったけど同じようにはできないなあ。あの技術、やっぱり彼には何か秘密がある気がする。良い意味で気になるんだよね。


「何だコレ?」

「魔道具かな」


 水晶や宝玉、巻物、薬瓶、ルーンの刻まれた短剣等々。これは売ったらそれなりの金になる!


「この骨は?」

「ただの骨だな、置いていっちまえよ」


 骨を戻して宝箱を閉じる。こうしてまた一つハズレ宝箱ができてしまった。


「これってもしかして誰かの所有物なんじゃ……」

「そうか? 見つかったばかり、それもゴブリンの巣の奥に誰がいるってんだ?」

「……やはり気になる点が多い」


 ホセの思案した声にギクリとする、戻した方が良い?


「このエリアに通じる壁の穴、あの時に感じた魔力の痕跡は魔法の使用後のものに思えた。あの壁は後から作られたものではないのか。であればこのエリアは意図的に隠されていた可能性がある」

「誰が何のために?」

「それは調べねば分かるまい、そのための探索だ」


 ちょっと怪しい気配。思った以上に厄介な案件かもしれないけど、それだけに重要な手掛かりが見つかると良いな。


「待て、静かに」


 ガロが急に耳をすませる。誰か来た? これ返した方が良い?


「人の声がする、こっちだ」


 向かった先に誰かが倒れていた。怪我人か行き倒れか。


「大変!」


 アイリーンが走る。ガロとウィル君が止めようとするのも聞かず、駆け寄って治療を始めちゃった。


「ダメだよアイリーン、ちゃんと警戒しないと」

「そうだぞ、万一罠だったらどうすんだ」


 そうそう、死体に罠を仕掛けるとか、助けを求めるふりして襲ってきたり、魔物が潜んでる可能性だってある。


「そっかゴメンね」

「私が勇者パーティーで戦っていた時は、人間の体内に魔物が潜り込み急に食い破って出てきたことがあったよ」

「ホセさん何と戦ってたのさ……」


 でも思わず助けに行っちゃう辺りがアイリーンの性格か。大聖堂で過ごしたのもあるだろうけど、基本的に他人は放っておけないんだろうね。自身も血で汚れながら献身的な治療に当たってる。


 怪我人は体中ボロボロだった。傷はアイリーンの魔法で治療、毒に備えて薬も飲ませておいた。でも衰弱しきっていて意識も朦朧としてるね。


「すぐ安全な場所に運んだ方が良いね」

「ま、待って、仲間が……」

「他にも誰かいるの?」

「捕まって……」


 捕まった。ゴブリンのような魔物に襲われたのかな。


「どうしよ?」

「この先に何があるのか気になるな」

「では私の魔法で彼だけ転送しよう」

「それじゃ頼めるかなホセさん」


 専門の魔術師がいると便利だねえ。怪我人に手紙を添えてギルドハウスに転送、マリアンたちが彼の治療を引き継いでくれるでしょ。


「こっからが危険な領域ってわけだね」


 未踏のエリアに隠されたものとは何か、調査は深部へ続く。

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