表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/164

第39話 賢者ホセ

目的

◆帝都地下迷宮の謎を解き明かす。

◆皇帝オズワルド1世の手掛かりを探す。

◆賢者ホセの手掛かりを探す。

◆第四層ドワーフ地下要塞を探索する。

 恐らくここは要塞の最深部だろう。堂々たる構えの門扉がそう思わせる。その周囲には白骨化した遺体が散乱していた。


「……身元を確認しようか」


 見た感じはローブをまとった男性だが迷宮深部へ潜るには軽装で荷物も少ない。ちょっと油断しすぎと思う反面、これほどの関門を突破したことには驚かされる。


「ウィル君、この日記見て。前に見つけたのと似てるよ」


 見覚えがある装丁の手記、「ホセ」の名が確かに記されていた。


「これが賢者の末路かい」

「惜しい人を亡くしたね、南無南無」

「アイリーン宗派違わない?」


 覚悟はしていたが残念な出会いだ。せめて遺骨と荷物は回収して、この手記に何らかの情報、迷宮攻略の手掛かりが見出せれば良いが。


「このネコモドキに助けられたねー」

「なう」

「アイリーンにもね」


 アイリーンに抱き上げられるネコモドキ。俺は散乱してる骨を拾い集めて袋に収める。頭蓋骨なんかは一部欠けていて結構な打撃を受けたと見える。


「先生そろそろ起きるにゃあ」

「先生?」


 ネコモドキがまた喋った。でもどういう意味だ?


「うーんうーん、今日は日曜だぞ」

「……え?」


 俺の手の中で骸骨が呻きだした。


「ハッ、特別講義の日だったか!? それとも精霊自然学の学会!? 論文の締め切りか!?」

「ウィル君!」


 咄嗟にセレナさんが骸骨をはたき落とす。


「グエーッ」

「アンデッドだよ!」


 コロコロ転がった骸骨に対して戦闘の構え。まさか賢者の遺体と思ったものが……。


「……襲撃か!? いやここはどこだ、古代精霊種の遺跡調査中だったろうか?」

「……」


 骨がペラペラ何か喋ってる。


「アイリーン、浄化できる?」

「待ちたまえ、寝起きドッキリにしては酷くないかね?」

「テメー何モンだ!?」

「問われれば答えよう。我は賢者と呼ばれし者である」


 やっぱり賢者?


「ふざけんな、てめえみたいなスケルトンが賢者なわけ」

「待ってガロ。もしかして貴方“リッチ”なの?」


 セレナさんの言葉にまたギョッとする。リッチといえば確かアンデッドの中でも高位の魔法使いとして知られる存在だ。


「フフフ、その呼び方は適切と言えないが似たようなものと捉えて結構だ」

「地面に転がってると威厳がねえな」

「だから頼む拾ってくれたまえ」


 仕方ないのでもう一度骸骨を拾い上げてみる。


「うん、君は……」

「ん?」

「王子?」


 ああ、またそれか。


「エレア王子か? しかしまだ子供だったはず、いったい私は何年地下にいたんだね?」

「落ち着いて、俺は王子じゃないしアンタが失踪してたのは一年ぐらいだよ」

「王子じゃない?」

「似てるって言われるんだ」


 骸骨が口をカクカクさせながら状況を理解したようだ。


「……そうか、そういうことか」

「あん?」

「皇太子の命令で私を捜してくれたのだな」

「命令というか依頼でね」


 皇太子や王子のことも知っている、どうやら本当にこれが賢者らしい。まさか不死者とは……。皇太子は生きてる前提で依頼してたわけだな。


「よくこんな要塞の深部まで探しに来てくれた。ドワーフの仕掛けや符号が分からなければ到底来れない場所だが」

「大変だったよ。でもこの魔物が助けてくれて」


 そのネコモドキ、今はアイリーンの腕の中でとろんとしている。


「ああマイケル君だね」

「マイケル」

「私が途中で見つけて連れ歩いていたんだ。後で調べるつもりでいたんだけど、ここで動けなくなってしまって」


 どうもこの賢者、骨がバラバラになってしまうと死なないまでも動けないらしい。


「なんとか生還できないかと、このネコモドキに魔力を分け与え育ててみたのだ」

「ああ、魔物って魔力があると成長するって話だっけ」

「なかなか良い成長ぶりだから言葉も教えたりして、相当賢くなったよ」

「そしてアンタや俺たちを助けてくれた訳だ」


 知能を持った魔物かあ、それが良いことかどうか分からないけど今は助かった。


「これで後は脱出するだけだね」

「このデカい扉が開けば良いんだが」


 ガロが分厚い扉をガツンと蹴とばす。


「あ、マズイ」

「ホセさん?」

「扉から離れたまえ」


 しまった、どうして賢者が(しかばね)晒していたか考えていなかった。


 ズズン、と辺りが揺れた。扉からは重々しい機械音が鳴り響く。


「何が起きるんだ?」

「あれを見て!」


 扉の上部にある装飾、よく見ると人の顔のようだ。その目に当たる部分が動いて俺たちを見据える。前に見た仕掛けと同じだ。


『◇◇◇◇、◇◇、◇◇◇◇。◇◇◇◇◇◇』

「扉から声……?」

「今のはドワーフ語だ。我々を侵入者と見做し排除すると言っている」


 ホセの言葉どおり周囲の機械群がけたたましく鳴り響くと、壁が開いて何かが現れた。金属の巨人……こいつは。


「ドワーフ・ガーディアン、機械仕掛けのゴーレムのようなものだ。魔法は効かないので注意したまえ」

「だからアンタは負けたってわけか」

「こいつはどう戦えば……」


 10フィートを優に超える金属製の巨人。ここを切り抜けなければ生きて帰ることはできない。さあどうする?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ