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第28話 俺たちのパーティー

目的

◆帝都地下迷宮の謎を解き明かす。

◆皇帝オズワルド1世の手掛かりを探す。

◆賢者ホセの手掛かりを探す。

「アイリーンさんが加わり、私たちのギルドも顔ぶれがそろったと言って良いでしょう」


 会議の席、マリアンの言葉に皆それぞれ頷く。


「これで俺たちも迷宮に挑めるね」

「そうだな」

「よっしゃー」


 いよいよこの時を迎えた。帝都地下迷宮の謎を解く冒険が本格的に始まる。


「けどその前に大事なことを決めなければいけません」


 マリアンが重々しく言う。なんだろう、ギルドマスターなら発起人のマリアンだろう。それとも現場のリーダーを決めておくか、契約に関することかも。


「私たちのギルドに名前を付けなければなりません」

「あ、そっち?」

「まあ、ないと困るわな」


 そうだね。必要だね。


「あの<ユリシーズ>とか<ライブラ>みたいなのね」

「そこでこのマリアン、僭越ながら候補を考えておきました」

「へー、どんなの?」


 コホンと咳払いしたマリアンは紙に認めたギルド名を発表する。


「<白薔薇聖騎士団>でいかがでしょう?」

「」


 マズい。これはマズいぞ。


「マズい」

「ウィル君」


 さすがにその名前は恥ずかしいけど、マリアンの自信満々な顔を見ると言葉が詰まる。


「あ、そのぅ、お嬢さん。オレたちは騎士というより無頼みたいなもんだぜ」


 ガロが雇用主に失礼のないよう遠回しに意見する。頑張れ。


「帝国法で貴族は騎士を叙任できます。私が家を継いだら皆さんを騎士にいたしましょう」


 侯爵パワーだ。全てをパワーと財力で解決する。


「お嬢様、さすがにそれは如何なものかと」

「何故ですかキャサリン?」

「ここに集った皆様はともかく、今後新たな冒険者が加わることもありましょう。その方たちまで騎士の位を要求すれば全員を叙任するおつもりですか。中には地位目当てで入ろうとする輩も出てくるでしょう」


 ムムムと眉間にしわを寄せるマリアン、渋々手持ちの案を撤回する。帝都に来てからの行動力はすごかったけど、さすがにまだ子供っぽいところもあるんだな。


「皆で名前の案を出してみたらどう?」


 セレナさんの提案でそれぞれに考えることとし、一旦解散。その後俺たちはギルドメンバーでテラスに集合した。


「なんかこう、マリアンが好みそうで無難な名前はないかな」

「白薔薇で聖騎士だぞ。簡単に納得するかどうか」

「ていうかさ」


 アイリーンが手を上げて意見する。


「あたし他のギルドの名前とか知らないの」

「そっか、参考にするものがあった方が良いか」


 そこで資料用にまとめてあった帝都のギルドリストを持ってくる。


「有名どこだと<ユリシーズ>は古代の英雄の名前だ。鼻に着くが名前負けはしていない。<ライブラ>は天秤座のことで、物事を量る、引いては善悪を量るって意味らしい。プライド高い<魔術協会>の先兵らしい名前だな」


 ガロの私見が混じった説明にふんふんとアイリーンが頷く。

 他に<クラブアーマー>は魔物の甲殻などを活用する集団。<出会いの旅団>は冒険者の出会いの場と(うた)って発足したが、今じゃ出会いばかり求める場になってるギルドだ。<追放者の集い>なんてのもあるがどんなメンバーがいることやら。


「この<迷宮ビルダーズ>っていうのは?」

「建設を生業にする奴らだ。迷宮の通路や階段の修復とか、あとトイレの設置なんかもしてる」

「ああ、それで丁度いい所にトイレがあったんだ」


 あれにはいつもお世話になってる。回収や解体もそうだが迷宮攻略は支え合って成立してるんだよな。


「次は<ケジメ団>」

「チッ」


 そこはガロが前にいたギルドだな。失敗したメンバーに“ケジメ”と称した制裁を加えることで有名になり、人が寄り付かず、メンバー層の劣化が進んでいるという。


「ギルドの中身や目的と関係ある名前が多いね」

「確かに。俺たちに合う名前か……」


 目的は色々ある。皇太子からは賢者ホセや皇帝オズワルドの捜索を頼まれているけど、肝心なのは迷宮の謎を解き明かすことだ。


「探索、解明、探求……」

「シーカー(探求者)といったところか?」


 その言葉は背後から、いつの間にかベッシが側に立っていた。探求者か……確かに俺たちはいつも何かを探してきた。


「それ良いと思います」

「リストに被ってる名前ないかな?」

「えっとー。あるね、<シーカー>って人たち」

「気にすんな、一年くらい前に全滅してるから」

「それって縁起悪くない?」


 結局、名前被りを避けつつマリアンが好きそうな線を考え<ナイトシーカー>という案を提出。これが受け入れられた。




「ギルドの名は<ナイトシーカー>に決まりました」

「パチパチ」

「ぱちぱち……」


 アイリーンが手を叩いてるので釣られて叩く。これで俺たちのギルドが始動するんだな。


「そこで、ギルドを立ち上げ最初にすることですが」

「パーティーしよう!」

「アイリーンさん、パーティー編成でしたら……」

「そうじゃなくて、お祝いしようよ!」


 結成記念パーティーか、良いかもしれない。


「俺も賛成」

「私も私も」

「……ではお祝いしましょうか。集まってくださった皆さんに感謝して」

「それにマリアンも」


 俺の言葉にマリアンがつぶらな瞳をぱちくりさせる。


「このギルドを一から作り上げたマリアンを労いたいから」

「そ、そんな。それでしたら家中の皆も手伝ってくれましたし」

「じゃあ皆のためにしよう!」


 アイリーンがノリノリだな、それでいいのか聖職者。でもこの明るさは、家族を失って間もないマリアンをも元気付けてくれるかもしれない。


 急遽パーティーの準備が始まった。食堂をできる範囲で飾り付け、シェフが総動員で料理を始める。俺は華やかなパーティーなんて見たことないから何をしたものか分からないのだけど。

 なので手伝いに奔走することにした。


「ウィル君、倉庫のワインをこれだけ持ってきてくれ」

「食堂にこいつを運んでおいてもらえる?」


 頼まれた物を倉庫まで探しに行ったり、テーブルを拭いたり椅子を運んだり。こういう時マリアンは貴族のレディらしく差配が上手いようだった。

 そうして夜までに支度が整いパーティーが始まる。


「私たちのギルド設立に尽力していただき感謝します。今夜は皆で楽しんでください」

「カンパーイ!」


 マリアンの挨拶を受け仲間たちが、家来や使用人たちも喜びの声を上げる。

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