表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/15

7.我が家が誇る大天使な妹!


「じゃあ~かいさ~ん! みんなお疲れ様でした! 明日からもよろしく~」


 明るめの女子生徒がそう言って、にこやかに笑っている。

 女子生徒がそう言ったのを機にそれぞれは仲良くなった人達、以前から仲良くなった人達と一緒に帰り始めた。

 あれから1時間。懇親会を楽しんだ俺たちは、そろそろ出るかとなり、20時だし解散しようとなったのだ。



 …さて、帰るか。


 俺も帰ろうと、道を歩き始めた。…え? もちろん一人。

 最後の方まで待ってみたけど佐藤さんはなんか女友達と帰っちゃったし、話して仲良くなったと思っていた人達もなぜか他の人と行っちゃった。

 

 ……寂しくなんかないし。別に、たまたま、たまたま帰り道が別だっただけだろうし。




 

 夜の道をてくてくと一人で歩く。

 今日は色んなことがあった。小野さんと同じクラスになって一緒にクラスまで行って、佐々木に呼び出されてお願い事されて、初めて懇親会にも参加してみた。特に懇親会は初めて参加したけど、それなりに楽しかった。今後も参加したいと思えるくらいには。


 …さ~て、帰って妹でも愛でるかね~。







 


「あ、春さん」

「え、小野さん。どしたの」


 妹のことを考えながら歩いているとなぜか小野さんが道に立っていて、こちらに声をかけてきた。

 夜道に女の子一人なんて危ないのに…。


「い、いえ。一緒に帰ってもいいですか…?」

「え、あ、うん」


 何を考えているのだろうこの少女は。

 今のところ、真意が読めない。いや、いつも誰の真意も読めないんだけど。

 ここで、俺を待ってた意味が分からない。


 でも、一緒に帰っていいかと聞かれて、嫌ですなんて言えない。


「……」

「……」


 気まずっ! 何も言わないんかい!!


「あ、小野さん」

「え、はい」

「あ~、どうだった懇親会。行く前はあんまりって言ってたじゃん?」

「…やっぱり、向かないのかなって思いました…」

「ありゃ、なんかあった?」


 大体の予想はつく。多分アレだろう…。


「…その、複数の生徒に連絡先を聞かれたり、二人で出ないかなんて言われたり…。特に男子の方達がすごくて…」


 少し疲れたような顔をしている。

 いや名倉の他にも居るんかい。


「…それは、災難だったね~。ま、みんな仲良くなりたいんじゃないかな~」

「…そうかもしれませんね」


 小野さんはそう言って少し笑った。


「どう? 彼らと仲良く出来そう?」

「いきなり二人でって言うのはあまり想像できませんが、徐々になら」

「そ、ならよかったじゃん。俺なんて…、誰も、一緒に帰ろとか言ってくれなかったし…」


 小野さんの話をしていると、なんか悲しくなってきた。

 小野は遊びに行こうとか誘われているのに、俺はそんなことを言われた覚えがない…。


「あ、で、でも、ほら、私は待ってましたよ?」

「……ありがとう」


 ちょっと涙がこぼれそう。

 優しいなこの子。なんて優しいんだ…。

 ……あれ、でもなんで待ってたんだ…?


「…小野さんはなんで待っててくれたの?」

「……なんとなく、でしょうか」

「なんとなく…?」

「はい。春さんと話すのは楽しいなと思って」


 なんていい子なんだぁーーーーー!!!!

 俺と話しながら帰りたいってことですかぁ!!


「…あ、ありがとう! 小野さん!」

「い、いえ。今朝話してみて、楽しい人だなと思ったんです」

「やったぜ!」

「ふふっ」


 て、天使がおる。

 まるで天使の笑みだ!


「そんなに喜んでもらえたなら、嬉しいです」


 そんなこと言われたら俺は、俺はああああああああああ!!!!


「…泣いちゃうぜ」

「え」

「あ、冗談です」


 冗談で泣いちゃうとか言ったら、小野さんからガチの「え」が出た。

 ちょっと心配そうじゃないか。冗談です。すみません。


「と、突然泣き出すのかと思いました…」

「ごめんなさい」

「あ、いえ。そういう所も楽しい人だなと思いますよ?」

「あざっす!」


 うん。いい子。


「そう言えば、小野さんの家ってここからどのくらい?」

「…大体15分くらいでしょうか」

「結構近いね~」

「春さんはどのくらいですか?」

「ん~、20~30分くらい? あんまり分からん」

「結構歩かなきゃですね…」


 そう。俺の家はちょっと遠い。

 学校までは20分くらいで着くのだが、さっきのカラオケが言えとは逆方法にあったからめんどくさいのだ。くそがぁ!


「ま、小野さん送って、それからゆっくり帰るよ」

「え!? いいですよそんな。ちょっと住宅街に入るので春さんの帰りが遅くなっちゃいます」

「大丈夫大丈夫。どうせ課題とかないし」

「でも…」

「それに、夜に女の子一人で帰らせるのはなんとなく、ちょっとね」


 さすがの俺でもそんなこと出来ない。しかも小野さんはそんじょそこらの子よりも美人だし。なんか危ない気がする。


「…で、では、よろしくお願いします」

「ま、楽しくおしゃべりしながら帰ろ~」



 少し、小野さんは申し訳なさそうだったが、俺もそこは譲れない。

 まあ、喋ってたら忘れるっしょ!










 

 



「では、春さん。ありがとうございました」



 歩くこと15分。小野さんの家についた。端正な住宅街にたたずむ、綺麗な一軒家。

 その玄関の前で、小野さんはに律儀に深く礼をする。


「いえいえ。楽しかったし、ありがとね」

「私も楽しかったですっ!」


 にこやかな天使小野。俺はやはりいいことをしたな。


「じゃ、俺も帰るわ。また明日~」

「ええ、また明日」


 ひらひらと手を振りながらその場を後にする。



 さて、愛しの妹が待つマイハウスへ帰るとしましょうか!





 ***


「たっだいまぁ~!」


 元気にドアを開け、俺が帰ってきたぞと家に知らしめる。この俺の帰還だ!

 さあ! 来い!




 ドタドタドタッ!!




「おにぃ~!!」

「理恵~!」


 リビングから飛び出してきて、小さな手と足を必死に動かしながら全力で駆け寄ってくる天使。いや、小野さんが天使だから大天使だ!


 我が妹は、そのまま、ダッシュで屈んで待つ俺の胸に思いっきり飛び込んできた。


「おにぃ、お帰り!! りえいいこにしてたよ!!」

「おぉ~そうかそうか! いい子にしてたか! 偉いな~! 理恵は!」

「えらい!? りえ、えらい!?」

「おお! 偉いぞ~! 理恵は誰よりも偉いぞ~!」

「ほんと!? やった~! おにぃ大好き~!」


 理恵は俺の胸に顔をうずめながらキャッキャと楽しそうにはしゃいでいる。

 か、かわいい。この生物を永遠に愛でていたい!


「ちょっと、ゆう兄。まだお風呂入ってないんだからあんまりベタベタしないでよ~」


 リビングから出てくる今年で中三になる妹。

 前までは、理恵みたいに俺にひっついてきてたのに、今じゃ触れてもくれない。ちょっとママンに似てきて、俺に厳しい。泣きそう。


「凜花。俺は汚くない」

「思春期の男子が汚くない訳ないでしょ。ほら、風呂入って」

「な! 理恵! お兄、汚くないよな?」

「ううん! おにい、いいにおいしないよ!」

「なっ!!」


 愛しの妹からのまさかの臭い宣言。

 俺は固まってしまう。石になったように、自分の意思では体を動かせない…。


「ほら、理恵。お兄ちゃんから離れて、そろそろ「たみたみ」するよ?」

「たみたみ!? りえもするっ!!」


 理恵はいつも、洗濯物をたたむことをたみたみと呼んで、それはもう楽しそうに洗濯物をぐちゃぐちゃにしている。しかし、一応たたもうとはしているので、誰も何も言わず、見守っているのだ。

 まだ小学生にもなってないのに、家事をする妹。なんて偉いっ!

 でも、お兄ちゃんから離れないでっ!


「ゆう兄。風呂、入ってね」

「はい…」


 …理恵も凜花もリビング行っちゃったし、風呂入ろ……。










「ふい~、さっぱりした~」


 風呂を上がって髪を洗面所で乾かしたあと、リビングの椅子に座ってリラックスする。

 台所ではママンが果物を切っており、ソファに寝転がりながら凜花がテレビを見ている。


「ゆう、あんたも、いる?」


 ママンが台所から、そう言いながらこちらを見ている。


「いるいる~」

「ん」

「理恵はもう寝た?」

「理恵なら凜花が寝かしつけたわ」

「俺がその役目をやりたかったのに…」


 理恵は寝てしまったらしい。もう22時を過ぎているからな。洗濯物をたたんだ後、すぐにおねむになったのだろう。


「ゆう兄、クラスどうだった?」

「あ~、とりあえず美咲と俊也とは別になった」

「あらら、美咲ちゃん達以外に友達いないのに」

「…うるせえ! これから作るんだ!」

「……へえ。ま、珍しく、クラスの集まりにも行ったんでしょ。そっちはどうだった?」

「まあまあ楽しかったよ。これからは行ってもいいかなと思えるくらいには」

「…いいことじゃん」

「ふっ、俺も成長してるのさ」

「そ。なら私も安心だわ」

「ふふんっ」


 こんな風にからかうように言っているが、凜花は昔から俺に友達が少ないことを気にしていた。俺は特に困ったことはないのだが、彼女には彼女の考え方があるのだろう。

 なので、その心配を必要ないと突っぱねることはせず、ありがたく受け取っておく。

 

「ほら、あんたたち、出来たわよ」

「いやっほい」


 ママンが綺麗に切り分けたパイナポーとキウイを持ってくる。

 早速俺たちは、フォークを刺して、もちゃもちゃとフルーツを頬張りながら、その後も会話を続けた。

 凜花のクラスの話や、理恵の話、ママンの最近のドラマの話、パピーはいつ帰って来るのかなんて話を眠くなるまで続けていた。


 

 




 











 




 




 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ