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6.懇・親・会



 夕方6時。

 部活が終わってから懇親会へと向かった俺たちは、そのくらいに懇親会会場にたどり着いた。


「ここだね。カラオケ「オッケーン」」


 俺たちの地域では有名なカラオケチェーン。


「う、嘘だろ…? ファミレスは…? ボウリングは…?」

「…昼からやってんだから、そんなところにこの時間まで居るわけないじゃん」


 んな馬鹿な! 

 クラスみんなでの○○会と言えばファミレスとボウリングだろう!? 行ったことないけど、本にそう書いてあったぞ!!


「お、小野さんもそう思う…??」

「えっと、私はあまりこういったことに参加しないので…」

「あ、そうなんだ」

「ええ、少し皆さんの気迫が…」

「あ~確かに、小野さんを狙う男子多いもんね~」


 佐藤さんが会話に入ってくる。

 小野さんはこの学校の姫だ。男子が狙うのも無理はない。

 …そう言えば、俺、今朝一緒に廊下歩いてたのに何もないな…。…何でだ?


「え、じゃあ、なんで今回は出ることにしたん?」

「た、偶にはいいかなと思いまして」

「へえ~、ま、いいや。レッツカラオケ!」

「……立ち直るの早」


 カラオケと決まったならば全力で楽しむだけだ! お友達作りの為にな!!




 


 



 カラオケの中に入ると、クラスの生徒達が男女ともに楽しそうに歌っていた。


「あ! 小野さん!」


 茶髪ボーイが声を上げてこちらに寄ってきた。それを見て、色んな生徒から「小野さん」という名前が挙がる。やはり、この子は姫なのだなぁと実感した。

 ……しかし!!


「俺と佐藤さんもいます! よろしく!」


 とりあえず、一つも俺の名前が挙がらないのは気にくわないので、大声で言ってみた。


「あ、ああ、よ、よろしく…?」

「はい、じゃあ歌いましょう!」


 茶髪ボーイの横を通り抜け適当にそこらへんにあったタンバリンを拾い上げ、ジャンジャンと鳴らしてみる。

 

「あ、ああ、そうだね…」

「次、誰だっけ…?」

「あ、わたしわたし!」


 女子生徒が画面に映る歌を見て、慌ててマイクを拾い上げた。

 小野さんの入場により、止まっていたカラオケはこうして再開された。茶髪ボーイは未だに必死に小野さんに話かけているが、俺はそんなことは気にせず、カラオケに熱中した。








 

「ふい~」


 カラオケに来てから1時間。俺はトイレにいた。



 

 …いや、別に居づらくなったとかじゃなく、ただの尿意だ。妙な勘違いはやめて欲しい。

 

 俺自身、意外にも懇親会を楽しんでいた。中学生まではクラスの集まりなんて行かない俺カッコいいとか思ってちょっと馬鹿にしたりしてた。けど、高1で行かなかったら見事に友達出来なかったのだ。クラスの集まりがあった次の日には大まかにグループが出来ていた。それに入るのはさすがに無理だったのだ。だから今回は参加してみた。

 

 「…っしょと」


 用を終えた俺はトイレの扉を押して外に出て、部屋へと向かった。






「なあ、小野さん。俺と一緒に抜けない?」

「!?」



 廊下を歩いていると小野さんにそんなことを言う声が聞こえた。

 俺は慌てて角に隠れて、様子をうかがい見た。俺たちが取っている部屋の先。ドリンクバーの近くでそれは行われていた。


 …ふむ、どうやら小野さんい迫っているのはあの茶髪ボーイらしい。


「な? 小野さん、いや桜」


 まさかの名前呼び!? やるねぇ、あいつ。


「桜。俺と一緒になんか食べに行かない? 部活後だしお腹すいてるでしょ」


 ほほう。部活後なのを逆に利用するか。奴め、中々に玄人よのぅ…。

 さてさて、小野さんはどういう反応をするのかな…。あの茶髪ボーイは確かに茶髪だがそこそこイケメンだぞ~。


「嬉しい申し出だけれど、ごめんなさい。お腹は減ってなくて」

「あ、じゃあ、軽く映画とかどう? 映画のチケット間違って2枚取っちゃって。今CMとかでやってるやつだけど、どう?」


 めげない! 茶髪ボーイめげない! あの手この手で小野さんを連れ出そうとしてる!


「映画の方もあまり興味なくて…」

「あ、そうなんだ。じゃあ、そうだな~」


 おおっと! もう手がないのか、茶髪ボーイ! そんなもんじゃないだろう! 

 やってみろ! もっと俺を楽しませろぉ!


「そうだ! 軽くスイーツとかどう? このあたりに最近有名になってきてるカフェあるんだけど。……そうそう、こういうの!」


 スマホをいじって、それを小野さんに見せている! カフェの写真か! イメージが湧きやすい! そしてお腹はすいてないけど、軽くならいける!

 すごい! すごいぞ、茶髪ボーイ!


「あの、ごめんなさい。あんまり、甘い物は得意じゃなくて」

「あ~、そうなんだ。…ごめんごめん、知らなくて。…俺、小野さんとも仲良くしたいなって思ってさ」

「いえ、こちらこそ、ごめんなさい。また、機会があればどこかに行きましょう」


 小野さんは申し訳なさそうな顔から、天使の様な笑みに変わる。

 

「え、あ、おう! じゃあ、LIME交換しようぜ! 仲良くなるために!」

「はい。いいですよ」


 おお! やったな茶髪ボーイ! デートは断られたけどLIMEはゲットしたか! 小野さんも微笑んでるしいい感じじゃないか! この学校の姫を射止めるのはお前になるのか茶髪ボーイ! 頑張れよ!


「あ、春じゃん。何やってんの?」

「しっ!」

「むぐっ!」


 不意に後ろから佐藤に声をかけられる。

 咄嗟に俺は、佐藤をこちらに寄せて、口を塞いだ。


「この馬鹿ちんが…! 声が大きい…!」


 ヒソヒソ声でしっかりと佐藤さんを叱りつける。

 今、茶髪ボーイと小野さんの二人の物語が始まろうとしているのだ!


「むぐむぐ…」

「ちょっと大人しくしてろっ! 今いいところなんだ…!」




「じゃ、また後で連絡するわ!」

「ええ、また」


 しまった! 茶髪ボーイと小野さんの会話が終わってしまった!

 慌てて角から顔を覗かせると、茶髪ボーイはもう部屋に戻ったようで、小野さん一人しか居ない。


「佐藤さん! 見逃しちゃったじゃないか!」

「……」

「佐藤さん! 聞いてんの?」

「……」


 佐藤さんは少し下を向きながら黙ったままだ。

 反省してんのかなぁ。


「…うるさい」

「え?」

「…うるさい! いきなり抱き寄せてんじゃないよ!」

「…!?」


 結構な大声で、怒鳴られた。

 顔は少し上気している。目は少し赤らんでいる。


 …しまった。そう言えば口を抑えようとして抱き寄せてしまったんだった。


「す、すみませんでした…」

「……明日、昼飯おごりね…」

「え、むしろそれだけで許してくれるんですか…」

「じゃあ、明後日も。いや、今週一週間ね」

「…はい」


 思ったより罪が軽かったので、余計なことを言ってしまった。言わなきゃ良かったぜ。


「で、何を見てたの?」

「…茶髪ボーイが小野さんを口説いているところ」

「…茶髪ボーイ?」


 佐藤さん、なんてひどい。俺たちを誘ってくれたあの生徒をもう忘れてしまってるじゃないか…。


「佐藤さん、忘れたらかわいそうだ。俺たちを懇親会に誘ってくれたのは茶髪ボーイじゃないか」

「……もしかして、名倉健太郎のこと…?」

「…そう、多分そう」


 茶髪ボーイの名前は健太郎らしい。だからLIMEの名前、ケンだったのか。てっきり愛犬の名前かと思ってた。


「え、てか。名倉が小野さんを口説いてたの?」

「あ、うん。そこそこイケメンだし、面白かったよ」

「……あんた、名倉の噂知らないの?」

「噂? あいにく友達がすく…いや何でもない。知らない」


 危ない危ない。危うくいらないことを言ってしまうところだった。

 それにしても噂か。知らんな。俺の交友関係、あんまり広くしてないし。広くしてないし!


 

「……」

「何…」

「いや、何でも。…名倉は女垂らしって噂らしいよ。何でもかわいい子には声かけるらしい。他校の生徒でも。んで、ある程度楽しんだら捨てるらしいよ」

「…え」

「小野さんが惚れるとは思わないけど、あんまりいい話じゃないね、今の」

「……大変じゃないか…。ど、どうしよう…」

「なんであんたが慌ててんの…」

「い、いや、だって……」


 ……あれ、何でだ? 俺慌てる必要ないじゃん。


「だって?」

「だって何でもない。とりあえず戻ろう」

「…切り替えが速いんだってば…」



 しゃがんでいた俺たちは廊下を曲がり、カラオケルームへと戻った。

 廊下の先にはもう小野さんはおらず、戻っていた。

 口説く場面を見ていたから何となく慌てちゃったけど、俺、何の責任もなかったわ。佐々木から言われているのも、見ててってことだけだし。ま、いいや。


 

 

 








 

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