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5.俺は手首がやわらか~



「よし、じゃあHRはこれで終わりだ。各自、この後はくれぐれもはしゃぎすぎないように。明日は入学式だから、しっかりと登校するように。以上! おつかれ!」


 始業式が終わった後のHRも終わり、佐々木は教室を出て行く。

 俺の周りにいる生徒達は解放された喜びを表すかのように、急に騒がしくなった。


「よーし! じゃあ、みんな! 同じクラスになったし、懇親会的なのどう!?」


 騒がしいクラスに響く様な大きな声で、男子生徒が叫んだ。

 学生なのに、なぜか髪を茶髪に染めて、ピアスも開いている。さすが一応進学校の我が校だ。学力さえ問題なければ大体の自由は許しているのだ。

 正直、俺も染めたい。赤とか黄色とかにしたい。

 だがしかし! そんなことをすれば「学生であるにも関わらず、髪を染めるとは何事か」とママンに怒られてしまう。ママンは恐いのだ。


「いいね! 賛成!」


 同じく、すこし茶髪に染まっているギャルがその男に賛成の意を示す。

 そしてそれに釣られるように、次々と懇親会に賛成の人達が群がっていく。


「……まったく、懇親会など」

「あれ、春は行かないのか」


 俺がぼそっと呟くと、前の席の佐藤さんがこちらに振り向き、意外そうな目をして言った。


「なんで、そんな目をしてるんだ」

「いや、性格的に? 行きそうじゃん、こういうの」

「はぁ…」


 まったく。この子は何も分かっていない。

 俺が懇親会に行きそう? そういうのが好きそうに見えるだと?

 そんなの、そんなの…



「行きたいに決まってるじゃないか」

「…」

「でもね、佐藤さん。部活があるんだよ。俺には部活が」

「あぁ…」

「行きたくてもいけなんだ。……そんな俺に当てつけかこの野郎!」


 改めて考えるとイライラしてきた! 俺は部活で行けないのに、行かないの? だと!

 

「はっ! 部活をやってない人はいいですねぇ! 懇親会に行けて!」

「……」

「何とか言ったらどうですか! ええ!?」


 俺が部活で行けないと知って、うんともすんとも言わなくなってしまった。

 まったく、少しは人のことを考えろってんだ! 


「……ご、ごめんて」

「分かればいい!」

「ち、ちなみに、何部?」

「バレー部!」

「……」

「なんだよ」


 佐藤は俺を意外な者を見る目で見てくる。一体全体何なんだこいつは。俺のことを馬鹿にしてるのか…!


「へぇ…バレー部なんだ…」

「……」

「私…バスケ部」



 ………



「部活やってないなんて言ってすみませんでした」


 またやってしまった。部活やってる人にやってないとか言っちゃった。しかも、バスケ部って同じ体育感の時もあるのに…。いや、待てよ? でも向こうも俺の部活知らなかったよな? じゃあ、50対50で悪いのはお互い様ってわけだな。うん、そうだ。


「い、いいよ。うちも知らなかったし…」

「…あざっす!」


 佐藤さんは意外といい人なのかもしれない。

 減点女子なんて言ったこと、反省。





「あ、小野さんもどう?」



 あ、茶髪男子に小野さんが誘われてる。

 ふっ、馬鹿め。小野さんは部活だよ! お前は帰宅部だから知らないかも知れないけどな!


「あ、ごめんなさい。部活で…」


 ほらみろ! 


「じゃあ、部活終わりとかどう!」


 何! 確かに…! 確かに部活終わりなら行けるじゃないか! それだ!


「いや、私は…」

「俺! 行きます! 部活終わりに行きます!」

「……あ、え。ああ! りょ、りょうかい!」


 よし! よし! 一瞬何言ってんのこいつみたいに見られたけど、俺も行けるぜ!


「あ、ついでに佐藤さんも行きます!」

「え!? 私!?」

「え、行かない?」

「あ、じゃあ……はい。行きます」


 佐藤さん…これで部活でも行けるね。

 と思ったのだが、佐藤さんはなぜかため息をはいている。懇親会なんて楽しいことしかないのにないが不満なのだろうか。


「あ、それで、小野さんはどうする…?」

「えっと私は」



 小野桜はふと、今朝の男子、春祐一を見るが、春はこちらは見ておらず、別の女子生徒としゃべっている。


「…私も参加させもらいますね?」

「よっしゃ、じゃあ、じゃあ、時間とか後から送るから、LIMEお、教えてくんね?」

「いいですよ、はい。これ俺のLIME」

「……」


 なんか、LIMEの交換とか聞こえたので、俺のも出してみた。俺も時間と場所分からないとだし。

 


 …え、なにその顔! 何でちょっと睨んでくんの!?


「え、LIME…」

「そう、だね。春君だっけ? LIME交換しとくね」


 茶髪ボーイは俺が差し出したQRコードを読み取って、友達追加をしてくれた。友達かもしれない欄に出てきた、茶髪ボーイを追加する。

 …アイコンが、他撮りの自分…。かっけぇ。

 対して俺は、家の庭に咲いてたよく分からん草。……。



「お、小野さん、LIMEいいかな?」

「あ、小野さんになら、うちが連絡するよ~」


 佐藤がこちらにスマホをひらひらしながら歩いてくる。


「…そ、そう、じゃあ、佐藤さんのLIMEを」

「おけおけ、…はいっと、完了!」


 二人は無事にLIMEを交換したようだ。


「じゃ、また後で送るから、よろしく!」

「おけおけ~」


 茶髪ボーイはそう言いながら去って行く。



 ふふ。順調だ…。密かに立てた目標。友達作りは順調だ…。







 


 ***




「チャンスーっ」

「……」



 ミドルブロッカーの合図を聞いて、俺はエンドライン(コートの後ろの線)まで下がり、前衛の動きと、セッターの手にボールが入った瞬間を見ながらタイミングを見て、一気にアタックラインまで助走をし、跳んだ。


「バック!!」


 相手チームの声が耳に入る。

 相手のブロックは2枚。だが。

 

 ボールが手に当たる瞬間、肩ごとひねり、相手コートの際。エンドラインとサイドラインの交差部分を狙ってスパイクを打つ。

 ボールは、エンドライン付近に居た選手が取ろうとするが、ボールにかかった回転から、ボールは選手の腕に当たった瞬間、コート外まで跳んでいき、壁に当たった。


「ピッ」


 主審役をしている選手が笛を鳴らす。

 それと同時にマネージャーは得点をめくり、25-21となった。


「うい~お疲れ~」

「おつ~」


 俺たちは試合が終了したため、互いに声を掛け合う。

 今日は、部活内での紅白戦である。後2ヶ月ほどでインターハイの地区予選が始まるため、試合形式の練習を増やすとキャプテンが言っていた。


「いや~、春。相変わらず回転エグいわお前の」

「回転だけが俺の取り柄なんですよ」


 先ほど俺のスパイクを弾いた先輩が笑いながら話かけに来てくれた。

 俺はチビだが手首が非常に柔らかく、ボールにいい回転がかかる。だからこそ、身長が重要なバレーにおいて俺はレフトとして練習に参加出来ているのだ。ちなみに、コートに突き刺さるようなスパイクは俺は打てない。前衛の時、俺の戦い方は全部ブロック合うと狙いか、コンビ攻撃によるブロックの引き離しからの攻撃だ。


「よ~し、片付け~」



 キャプテンの合図で、選手達は片付けに入る。

 まだ1年生が入っておらず、実質的に一番下の春達2年生は先輩の運んでいるものを持ったりしながら、せっせと片付けを行った。





 



「それじゃあ、明日は1年生が数人入るって話を聞いてるから、よろしく。以上、解散!」

「「「ありがとうございました~!」」」


 着替え終わった後の軽いミーティングも終わり、それぞれが帰路につく。


「よっ、春。帰ろ~ぜ!」

「っと」


 肩組みをしながら、俊也がにこやかに顔を近づけてきた。

 練習後だと言うのに、なんでこいつはこんなに柔軟剤の香りが強いのだろうか?

 ひょっとしてレ○アフレグランスか? レ○アなのか!? 俺も気になっているあの! 汗に反応して香りを増すというあれか!?


「…? どした?」

「…レ○アなのか?」

「レ○ア? …ああ、柔軟剤? う~ん、確かそうだったような…」

「俊也の分際で…レ○ア…」

「…なに落ち込んでんだ」


 俺だってまだ使ったことないのに! ママンにお願いしたら、「うちは、ハ○ング。変なこと言っているとご飯抜きよ」とか言われたのに! くそ!



「あ、お~い、春~」

「んえ?」



 俊也に密かに呪いを送ってると後ろから、声をかけられる。


「あ、佐藤さん」

「佐藤さん?」

「俺の席の前の人。あの見た目で超ギャル」

「え、そうなの…」


 振り返ると小野さんと一緒にこちらに来ている佐藤さん。

 小声で聞いてきた俊也に教えてやる。見た目と言動が合わないあの少女のことを。


「で、なんで小野桜さんまでいるんだ…」

「分からん。バスケ部らしいぞ」

「んなことは知ってる…」

「え……」


 衝撃だ。俺が知らないことを知ってるなんて…。あの俊也が…。

 

「春、ごめんごめん、待たせちゃって」


 こっちになぜか走ってきた佐藤さんと小野さん。

 何用だろうか…。

 

「…佐藤さん、小野さん、どったの?」

「え、忘れたの、もう?」

「え、何の話か……」

「懇・親・会!」

「ああ!」


 部活ですっかり忘れていた。そう言えば、今日、懇親会だった。あっぶね。

 今日は同じ時間帯で部活だからどうせなら小野さんと3人で行こうとなってたんだった。


「春、懇親会なのか?」

「そうそう、クラスのみんなで」

「…え、お前が…? あれだけクラス会とかばか、んぐっ」


 いらないことを言おうとした俊也の口を塞いでついでに太腿をつねっておく。


「…どうしたの?」


 訝しげにこちらを見る佐藤さん。

 ほら見ろ、ちょっと変な空気になったじゃないか。


「い、いや、何でもない何でもない。な、俊也」

「もごもご! もごもごもご」

「もごもごうるさいぞ俊也! はっきり喋りなさい!」

「もごもごもごもご!! もご!」

「何だって!? 何を言ってるか分からん!」

「ぷはっ! お前が口塞いでるからだろうが!」

「うるさい! 大声上げない!」

「なっ……」


 あり得ない者を見る目でこちらを見る俊也。

 こういうのは勢いなのだ。気合いで負けてはだめなのだ。はんっ!!


「ま、まあまあ。それで、春、行ける?」


 気を遣ってくれたのか、佐藤さんが少し気まずげに尋ねてくる。


「あ、行けるよ。行こうか」

「え、でも、そっちの俊也さん? は…」

「あ、俺は一人で帰るんで大丈夫っすよ~」


 さっきのことがなかったかの様に俺と俊也は振る舞う。

 俺たちにとってさっきのような出来事などいつものことなのだ。


「あ、そうなの。じゃあ、うちらは行こうか。小野さんも」

「ええ、行きましょう」

「レッツ、懇親会!」

「なんでそんな元気なの…」


 俊也は俺たちに向かってひらひらと手を振ってる。

 俊也に手を振りながら、俺を先頭に、佐藤さんと、小野さんは懇親会へと向かった。

 

 








 

「で、場所ってどこだっけ…」

「…あっち」

 


 

 

 

 

 

  


 

 










 

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