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4.俺がシスコンだと!?


「…であるからして、君たちも勉学と運動、両方を疎かにすることなく、励んで欲しい」


 体育館の壇上の上。そこに偉そうに立ち、光り輝く頭で高説を垂れているのは偉大なる我らの校長である。

 今年も綺麗に輝いている。照明を綺麗に反射し、他を寄せ付けることのない光を放っている。うむ。去年の入学式と同じ光景、ほぼ同じセリフである。使い回しているなこのじじい。


 


 綺麗に頭の禿げ上がったじじいは、恐らく去年と同じであろう文章が書かれている紙を折りたたみ、壇上を降りていく。


「では、校歌斉唱」


 校長とは違い、バーコード上にまだ残っている教頭がそのように言い、生徒全員で校歌を歌った。


 代わり映えのない始業式である。




 ***



 始業式が終わり、生徒達が先生の誘導に従って順に体育館を出て行く。


 さて、突然だがこれから俺が何をするのか分かるだろうか? ヒントは佐々木の言葉だ。そう、その通り、「職員室に来い」という呼び出しのことだ。

 

 と、言うわけで。


「ごめん、ちょっとお腹痛くて、トイレに行ってから戻るから」


 列の後ろにいる強面の生徒に申し訳なさそうな顔をしてペコペコする。こう言う時は本当に痛そうな顔や、調子の悪そうな顔をしつつ、申し訳なさを醸し出すのが重要なのだ。そうすればみんな快く受け入れてくれる。


「…あ、おけ」

「センキュ! アディオス!」


 ほらみろ。あの人に危害しか加えなさそうな顔をした男が快く送り出してくれたぞ。

 さあ! ダッシュだ! どうせ佐々木のことだ。俺の行動を先読みして2学年の廊下か、体育館に続く廊下に陣取ってるのだろう。

 …だが甘いな、佐々木! 俺が行くのは体育館内のトイレだ! 先ほど体育館内に佐々木の姿がないのは確認済み! いざ!

 

 俺はトイレに向かって駆け出した。誰よりも速く、風よりも速く。コーナーで差を付けながら。


 


 

…ふははは! 俺の勝ちだ! 佐々木ぃ!!


 

「お、春。トイレか」

「な……」


 俺が男子トイレの取っ手に手をかけようとしたその瞬間。横から聞き慣れた声が聞こえた。

 ……佐々木が手をふきながら、女子トイレから出てきている。


 な、なんてこった。こいつ、さっきまで居なかったのは、トイレに行っていたからか!

 佐々木のくせに小癪な策を弄しおってからに!!


「な、なんで佐々木が…」

「佐々木先生だ」

「さっきまで居なかったじゃないか。てっきり廊下に居るとばかり…」

「何を言ってるんだお前は。始業式にいない訳がないだろう」


 ……た、確かに…。よく考えれば、始業式だからみんな居るはずだ。

 少し考えれば分かることだった。俺としたことが、焦ってしまっていたらしい…。

 ……し、しかしだ、教員が始業式中にトイレに行くのはどうなのかなぁ…! 

 なあ! 佐々木ぃ!


「……」

「なんでちょっと睨んできてるんだお前」

「…別に何でもありませんけど。ありませんけど!?」

「……いいから、トイレだろう? さっさといけ。どうせ職員室に行くんだ。待っててやる」

「…いえ、長くなると思うので、遠慮なくお戻りください」

「そうしたら、お前、職員室来ないだろう?」

「なぜ分かるのですか!?」


 美咲といい、佐々木といい、きのつく奴は読心術か何か持て居るのか!?

 なんで分かるんだ! なんで悉く俺の作戦がだめになるんだ!


「お前の担任を1年もしていたら大体分かる。いいから早く行け」

「…はい」


 段々イライラしてきたのか、ちょっと睨まれた。睨むのは恐いのでやめて欲しい。優しく諭して欲しい。そうすれば、10%くらいの確立で言うことは聞くかもしれない。


 これ以上、佐々木に睨まれるのは嫌なので、大人しく男子トイレに入り、用を済ました。








「お、出てきたか。じゃ、行くぞ」

「はい」


 宣言通り、俺と佐々木は二人で職員室に向かった。





 ***




 職員室にて、自分のデスクに座る佐々木と隣で立たされている俺。

 これが権力の差。権力のない生徒には教師に逆らう術などないのだ。学校は権力社会。恐いところだ。


「さて、春。なんで職員室に呼ばれたか分かるな?」

「あ、はい」

「言ってみろ」

「先生が未婚なのを気にしているのを知っておきながら、未婚と言ったからです」


 自分が思いつく100%の答え。これで違っていたら、びっくりしてそこの窓から飛び降りるかもしれない。


「…あ?」

「……」


 ち、違ったらしい。

 親の敵でも見つけたかのように座ったまま、メンチを切ってくる。

 やっぱりこの人は元々不良か暴走族だろう。じゃないとこんな凄み出せないもの。

 見ろ、俺の膝がかつてない程に震えてやがる。ちょっと漏らしてない? え、なんかそんな気がしてきた。もう一回トイレいって確認したい…。でも、恐い…。


「春。何でか分かるか?」

「……わ、分かりません…」

「そうか。正解はな、」

「せ、正解は…?」

「未婚と言ったからだ」

「合ってんじゃねぇか!」

「は?」

「すみませんでした」


 また睨まれた。今日はいろんな人に睨まれる気がする。俺の心はシャンパングラスなのだから勘弁して欲しい。とっても割れやすいのだ。


「ま、とにかくだ。それとは別でお前には頼みがある」

「頼み…ですか」

「小野桜、いるだろう?」

「はい。同じクラスに」

「あの子を少し見ていてほしい。そして、何かあれば言って欲しいんだ」

「…え、なんで?」

「勘だ。私の」

「……」


 かっこいい感じを出したとでも思っているのか、こいつは。なんでちょっとどやってんだよ。ぶちのめすぞ。


「…見てろって何をすれば良いんですか…」

「簡単だ。ちょっと気にしてて欲しいってだけだ」

「なんで俺が…」

「他の奴だと、小野のこと好きになっちゃうかもだろ? その点お前は安心だ」


 どういう意味だ佐々木! 俺が枯れているとでも言いたいのか!? まだまだ現役だぞこっちは! 


「…そんな恐い顔をするな。お前なら惚れることはないだろうなってことだ」

「つまりどういうことですか」

「いや、その、お前、シスコンじゃん? だから大丈夫かなと」


………

 

「…シスコン? シスコンと言いましたか? …いくら先生でも言っていいことと悪いことがあるでしょう!」

「あ、いや、悪かった。妹思いだよなって」

「妹は可愛いですからね! 俺はシスコンです! シスコンは言って良いことです!」


 妹は可愛いは全世界共通なのだ! ただし、俺とその他大勢を一緒にしないでほしい。俺はシスコンと呼ばれることに誇りを感じる域まで来てるのだ! そんじょそこらの奴らとは違う!


「まぎらわしい切れ方をするな! ……まったく」


 少し呆れ気味に眉間を抑える佐々木。小じわが増えるぞ。


「とにかく、お前にとっては妹の方がかわいいんだろ?」

「ええ! それはもう! 比べるまでもない!」

「じゃあ、引き受けてくれるか?」

「いいでしょう! 俺の妹への愛を証明しましょう!」


 学校の姫を気にしながらも、惚れることがなければ、妹への愛の方が上だと証明できる!俺はシスコン日本代表、いや世界代表と自負している。




 負けられない戦いが火蓋を切って落とされた!

 


 

 


 

 


 













 

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