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10.屋上って意外と暑いってしてました?



 昨日は理恵とごろごろしてぽわぽわしていたら一日が終わってしまった。だが、その可愛さを余すところなく堪能出来たので非常に有意義であった。うむ。


 さて、そんな幸せな土日も終わり、今日は月曜日だ。

 今日から本格的に学校が始まる。教室の中はそこそこ賑わっており、先生は誰になるのかなどを話し合っている。教科ごとの先生は最初の授業にて判明する。特に通知が為されることもなく、その先生が入ってきて授業を開始するのだ。


 しかし、俺の頭の中はそんなことには使っていなかった。俺の頭を占める大部分は、先ほど教室に入ってから告げられた二つの呼び出しだ。

 一つは小野さんからの呼び出しで、机の中に入ってた紙切れに放課後少しお時間を下さいとあった。今日は部活は体育館の割り当て上、少し遅めに始めるので特に問題はない。

 二つ目の呼び出し。それはさっき茶髪ボーイならぬ名倉からだった。昼休み、屋上にちょっと来いってことだった。…屋上に行くことは出来るが、出来れば行きたくない。だってあそこってめっちゃ暑いから。ずっと日向になっているせいか、春でも関係無くむちゃくちゃ暑い。え? なんで知ってるかって? 去年、屋上に憧れて入ってみたからです。しかも入学初日に。後悔したね。しかし俺も日本男児。負けるわけにはいかない。


「う~い、席着け~。ショートHR始めるぞ~」


 佐々木がだるそうな顔をしながら入ってきた。

 まったく、教師でありながらそのような顔をするとは…。


「……」


 呆れた……え、なんか見られてら…。


「…よし、じゃあ今日は…」


 目が合ったので咄嗟に逸らしてうつむいてしまった。

 なんか負けた気がする…。





 


 ***




 「……やっと来たな」


 昼休み。俊也とのご飯を食べ終えた俺は屋上にやってきた。

 どうやら待たせてしまったみたいだ。

 名倉だけではなく、他クラスの男子も何人かいるみたいだ。なんかちょっと、苛ついているっぽい。恐…。やっぱ暑…。


「待たせてしまったか…」

「……何時だと思ってんだ…」

「12:30だ」

「…昼休み始まってから何分たってる」

「30分だ」

「…何してやがった」


 大分苛ついているらしい。小野さんに接している時やクラスにいるときとはまるで口調が違う。おらおら! って感じだ。


「もちろん、お昼ご飯食べてた」

「お昼ご飯だと! 俺たちがずっと待ってたのにか!」

「…え!? お昼ご飯まだ食べてないのか!?」

「なんでお前が驚いてんだよ!! こっちがびっくりだよ!」

「……なんて、なんて」

「あ?」

「なんて健気な…。そんなに俺とお話したかったのか…」


 なんて律儀で真面目な奴らなんだ…。お昼ご飯も食べずに昼休み始まってからずっと待っていたのか…。俺がママンが作ったお弁当を食べて、佐藤さんに菓子パン買って食べさせている間、こいつらはずっとここで待っていたなんて…。


「も、申し訳ない…。てっきりご飯食べた後に集まればいいのかと…」

「ちっ、ほんとイライラするぜ、お前はよぉ。もういい。俺たちも腹が減ってるからな手短に済ませるか」

「あ、おっけ!」


 手短に済ませるのは大賛成だ。ここ、暑いしな。俺も戻りたい。


「単刀直入に聞くけどよ、お前。小野桜に近づくなよ」


 名倉は俺をにらみつけながらそう言ってきた。なので、俺も精一杯の眼力を込め、顎を引いてにらみつける。


「…おらぁ!」

「…あん?」

「小野さんに近づくなだって~?」

「そうだよ。小野桜は俺の女にする。けど、お前、小野桜と一緒に登校したり、懇親会の日は一緒に来たりしてなぁ。なぁ、分かるだろ?」

「…ふん」

「なんだ…お前みたいなチビが俺に刃向かうってか?」


 名倉は体が大きい。顔もそこそこイケメンで筋肉もある。むかつくぜぇ…。

 でも今はそこじゃない。

 

「言ってる意味が、分からない。確かに最近何かと関わってはいる。でもなぁ、名倉…」

「……」

「何をして欲しいのかはちゃんと言ってくれないと俺は分からん! 結局何をして欲しいんだお前は!」

「…さっき言っただろ! 小野桜に近づくなって言ってんだよ!」

「……う~ん」


 なるほどつまり、小野さんのことが好きで付き合いたいけど、あんまり相手にされないし、でも俺がちょっと話してるから気に入らないって感じか。

 なんてことだ名倉…。お前はもっと根性のある奴だと思ってたのに…。これは渇を入れねば…。


「こら! 名倉!」

「…な、なんだよ」

「恋は自分の力でどうにかしなさい! どうにも出来ないからって脅すなんて恥ずかしくないのか!」

「…うるせぇな」

「いーやっ! 言わせて貰うけどな! お前以外にも小野さんを狙っている人はたくさんいるぞ!! お前はこの先、大勢と戦わなきゃいけないんだ! 他者を脅すなんてそんな甘っちょろい考えじゃやっていけないぞ!」

「…てめぇ、言わせておけば…!」

「名倉! お前の魅力はまだ原石のままだ!! 磨くんだ! 他の人が届かないくらいに輝くようにな! お前のガッツがあれば出来るはずだ!」

「……ちっ!! うるせえ! いいからお前は小野桜に近づくなって言ってんだ!」

「断る!!」

「んだと!」

「小野さんは俺の友達作り計画に組み込まれている! だから断る!」

「……」

「お前と違ってなぁ! 俺は! 友達が多くない!」

「な、何の話だ!」

「俺の友達の話だ! 友達が多くないから、喋ってくれる人は大事にしたい! だから! 名倉の頼みは聞けない!」



 そう。小野さんは俺の中ではもうほぼ友達だ。友達なんて滅多に出来ないから大切にしたいのだ。


「ちっ! いいんだな、お前がそう言うならこっちにも考えがある…」

「受けて立つ!」


 暴力か? 暴力に訴えかけるのか! 来い! 俺にもそれなりに心得がある! 小学校の6年間だけやってた空手を見せてやらぁ!!


「ちっ、お前ら。いくぞ」

「……」


 ガチャ。バタン。



 ………。

 

 

 あ、あれ? 

 名倉達が別のドアから校内に戻っていく…。あ、あれ、お互いの主張をぶつけ合うあつい戦いは!? 殴り合った後の笑い合う二人は!? 

 あれ!?






 ***



 教室に戻ると、名倉は席に着いて駄弁っていた。


 ?


 なんだ? なんか違和感…。

 なんかチラチラ見られているような…。


「佐藤さん、佐藤さん。なんか俺、見られてない…?」


 とりあえず、自分の席まで戻った俺は佐藤さんに聞いてみることにした。佐藤さんはまだ菓子パンをもそもそと食べている。食べるの遅いな…。

 

「あ、春。あんた何やったの…?」

「え、何も…?」

「…これ」


 佐藤さんはポケットからスマホを取り出してLIMEの画面を見せてきた。

 う~んと? 『佐々木先生クラス 小野さん抜き』


 ……。


「こ、こんなクラスLIME、俺、知らない……」

「驚く場所そこじゃないでしょ。ほらここ」


 クラスLIMEの中を見てみると、ケンからメッセージが送られていた。

 内容は

「春祐一を無視しろ。従わないなら、俺もそういう対応をする」

 とのことだった。 

 …え? 陰湿…。しかもこんなの誰が聞くのだ?


「佐藤さん、これ妄言?」

「いや、本気っぽいね~。名倉、教室だといい顔してるけど、裏じゃ暴力もふるうって話だからね~。これ、聞く人がほとんどじゃない?」

「な、なんと…。じゃ、じゃあ佐藤さんも俺を…?」

「ん? いやうちは従わないよ。だって私、あいつ嫌いだし」

「でも、暴力とかなったら…」

「大丈夫大丈夫。そうなったらうちにも考えあるし」

「そ、そうなんだ」


 なんか、ギラついてる。

 名倉の方を見ながら悪い笑みを浮かべてる…。


「あ、春。そろそろ授業始まるよ」

「あ、ホントだ。佐藤さんも菓子パン食べ終えないと」

「いままんまってたへへる!」


 残っていたパンを全て口に詰め込んでリスみたいになってる。

 …ちょっと面白い。


「うい~、お前達~、この時間はわたしの授業だ。静かにしてろよ~」


 佐々木が教室に入ってくる。

 午後一番が佐々木の授業とは…。寝れないじゃないか…。








 

 

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